第156話 商業ギルド


「んん、美味いな」


 昨日、部屋に入った俺たちは短いようで本当に短い旅の疲れを癒すように眠りについた。まぁシャルに関しては慣れない空旅だったし、俺はずっと自分の力で飛びっぱなしだったし、普通に疲れたのはある。


 そして今日、朝食を食べているのだ普通に美味しい。朝からハイオークのステーキはキツいが美味い。脂も魔力もよく乗っている。


 一緒に出されたサラダの野菜には、魔力が豊富に含まれているようだった。思えば、アセレアの空気はスターク帝国よりも魔素をよく含んでいるし、その影響かもしれない。


 野菜で思い出したが、アセレアには野菜を生で食べる習慣があるらしい。ということは人糞などを肥料として使っていないのだろうか?


 スターク帝国では野菜を栽培する際に人糞を使用しているため、野菜を食べる際は火を通すのが一般的になっている。


 それに、なんと言ってもマヨネーズがあるのだ。俺と同じ転生者か? それなら世界神とやらあのじじいから一報あってもいいはずだし……。


『Hey AIアイ


『……どこかの人工知能みたいに呼ばなくとも会話できます』


『似たようなもんだしいいじゃん』


『本気で言ってますか? どう考えても私の方が高性能ですよ、主人マスター


 ……まぁ、それはそう。


『ごめんて。そんで聞きたいんだけど、俺以外に転生者っている?』


『いますよ、1人だけ。主人マスターが寂しくならないようにと世界神様がご用意なさっていました』


「そうか……」


「どうしたの? リュートくん」


 おっと、口に出してしまっていたらしい。


「あぁ、ちょっとな。これを見てくれ」


 そう言ってマヨネーズ……に非常に近いソースを指さす。まぁ、味も見た目もマヨネーズなんだけれども、なにぶん最後に食べたのは数年も前だから正確な味を覚えていないのだ。


「これ? そのソース、サラダにかけると美味しいわよね。これがどうしたの?」


「同郷の人間だ」


「同郷って……。という事はリュートくんと同じ発想ができる人、という事ね」


「あぁ。とりあえずそいつはスカウト決定だ。街中で鑑定しながら魔法の才能がある者を探しつつそいつの情報を集める」


「分かったわ。私は着いてきている身だし、リュートくんに従うわ」


 シャルもそう言ってくれてる事だし、今日から魔法士団員集めも並行して開始しよう。


「よし、それじゃあこれ食べたら商業ギルドに行こうか。そこで同郷の人間の情報を集める」


「分かったわ」


 ◇


 と、言うことでやってきました。商業ギルド。てか、男率高くね?


「リュートくん、大丈夫? 無理してない?」


「あぁ、大丈夫だ。ありがとう。今は問題ない」


 ここまでシャルに心配されているのは、宿を出たところまで遡るのだが、宿を出てすぐ人間の鑑定を行ったところ、あまりの情報量の多さに頭がパンクして立ちくらみを起こしたのだが、そのことを重大視してしまったシャルがかなり心配しているだけなのだ。


 そのことを踏まえて、俺は一気に鑑定をするのではなく、一人一人を高速で鑑定する形にシフトしたのだが、終始キョロキョロしているから、田舎からきた人間だと勘違いされていそうではある。まぁ、一般人達にどう思われようと関係ないのだが。


「こんには。本日はどのようなご用件でしょうか」


 っと。俺たちの番が来たようだ。どこの受付も行列ができており、商業ギルドの需要が伺えるが、横も見た感じ、受付嬢は美人ぞろいだった。男率が高いのは受付嬢を見て目の癒しにしているのではないか? まぁそんなことはないだろうが。


「最近、色々な道具や調味料などを開発している人間はいるか?」


「はい、いますよ。ただし個人情報ですので、彼女の名前や住所などは言えないです」


「ふーん。彼女、ねぇ」


 俺がそう言うと、受付嬢の女はわざとらしく焦った表情を表に出す。その表情を見るに、転生者は女ではなく男だろう。失言したと思わせて、それすらも術中だとは。普通の商人ならこの情報を得たら、女を中心に探し始める。中々に性格の悪いことをする。


「君と話していても埒が明かないな。ギルマスと話がしたい」


「それは不可能です。ギルマスは仕事に追われていますので」


「じゃあこれ」


 スっと、白金貨を出す。


「……承知しました。ギルマスの部屋へ案内致します」


 ……なんとガバガバなセキュリティ。これは帝都に帰り次第冒険者ギルド、商業ギルド共に検閲しよう。




 ◇


 ――コンコンコン


「ギルドマスター、よろしいでしょうか」


「誰も居れるなと言ったはずだぞ」


「急用です」


「……通れ」


 ガチャ、という音とともにギルマスのいる部屋へと入る。


「「………」」


「……まぁ、そうだわな」


 中には息を荒くした男と女がソファに座っている。扉越しに聞こえた声的に男がギルマスなのだろう。シャルと受付の女は言葉を無くしている。


「ギルドマスターであろう者が昼間から女を連れ込んで性欲発散してんのかよ、この国は」


「……貴様は誰だ?」


第二魔法師団ツヴァイを率いている者、と言えばわかるな?」


「ツヴァイ……。帝国の皇子か」


「今は師団長として来ている」


 それに臣籍降下しているから、皇子ではない。でも、こういう場では皇子という立場は大いに役立つ。師団長としてきていると言っても、相手は俺を帝国の皇子として接する。それだけで会話が有利に進むのだ。


「そうですか。ではお掛けになってください」



※あとがき

更新頻度戻したいとか言っといてこのザマです。ごめんなさい。

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