第146話 人員補充完了~帝都編~


「なるほど」


 一見、色々なものが片付いて、ここはもぬけの殻だが、気配を感じる。つまりヘルシャ達はまだここらにいるということだ。


 まぁ、大体見当は着いているが。


「いるんだろ? わかってるよ。出てこい」


 闇魔法使いで、闇之帝の称号を持つペルシャのことだ。闇魔法の1種である幻影魔法で、この部屋をもぬけの殻にしている。


 しかし、気配があるのだから、言い逃れはできない。すると、部屋全体が歪んだかと思えば、昨日来た部屋になっていた。


「しっぱい。なんでわたしの場所がわかったの?」


「気配だ。闇魔法で俺の視覚を誤魔化したところで、気配は消せない」


「そう。わたしのまけ。きゅーてーまほーしだんってやつにはいる。一番えらいのはあなた?」


「いい心掛けだ。君が入団する団の団長をしている。もちろん一番偉いぞ」


「わかった」


 こうして、結構あっさり、ヘルシャを仲間に加えることができた。これで帝都での仕事は終わりだ。


 こうして第2魔法師団ツヴァイの人員補充、帝都編はいい感じに終わった。傭兵ギルドから引き抜いた奴と、ヘルシャの2人しか補充できたなかったが、質を求めているので、問題ない。魔道帝国アセレアに行った時に残りを補充すれば問題ない。


 ◇


 そうこうしているうちに1ヶ月と少しが経過した。


 その間、シャルは宣言通り学年末テストで、全ての教科で満点を取り、1年間授業免除の特待生に昇格した。


 ヘルシャの方だが、給料の半分以上をスラム時代の手下たちに分けているらしい。おかげで彼らもスラムから抜け出し、宿を借りて生活しているとの事だ。ヘルシャの教育にも力を入れていて、前は舌っ足らずだったのに、今ではきちんと喋れるようになっている。


 傭兵ギルドから引き抜いた男、ディートリヒというのだが、なかなか筋がいい。魔法の全体的な才能は並だが、火魔法の才能がBであったため、現在は火魔法を中心に教えている。上達スピードがかなり早いので、そろそろ炎之聖の称号を手に得れられそうだ。

 帝都を拠点としている冒険者に炎之聖の称号を持つ冒険者がいるとの事なのでその者と戦ってもらい、とっとと称号持ちになって欲しいものだ。


 そして、宣言通り満点を取ったシャルはと言えば……。


「んふふー、リュートくーん。アセレアにはいつ行くのぉ? 私はぁ、もう少し二人の時間が欲しいからアセレアに行くのはもう少しあとでも良いと思うんだぁ」


 うん、勉強をしまくっていた反動でベッタリになってしまった。暫くは甘やかすつもりだが、アセレアに行くのも一応仕事なので、早めにアセレアに行きたいと思っている。それに……


「却下だ。早くて来週、遅くてもその次の週にでも行くぞ」


「えぇ、ケチー」


「いいだろ。……それに、今回は護衛は付けない。2人だけの旅行だ」


「……え!? ほんとう!?」


 あぁ。この驚く顔が見たかった。


「あぁ本当だ」


「じゃあ今すぐ行こう! 明日でも可!」


 うん、すんごい手のひら返し。流石の俺もここまでは予想してなかった。


「いや~、シャルの方も準備があるだろう? だから来週に……」


「大丈夫! 実はもう旅の準備は出来てるの。だから早く行こう?」


 なんだよ。さっきまで先延ばしにしようとしてたのに2人旅だと知った瞬間これだ。少し呆れたが、可愛いから許す。ただ俺が今日明日に行くことに対して渋っている理由はちゃんとある。


 4日後ディートリヒが炎之聖称号持ちの冒険者と戦うのだ。事前偵察には行ったが、普通に勝算はあるし、なんなら普通に勝てる。だが、あいつの勇姿を見てやりたいのだ。


「それとも何? 私と2人きりで旅するのが嫌なの?」


「いや、違くて」


 別に隠す必要も無いので、ディートリヒのことをシャルに話した。


「なーんだ。言ってくれれば良かったのに。じゃあ出発は4日後にしよ?」


「4日後? 5日後じゃなくて?」


「うん。ディートリヒさんが戦い終わったらすぐ行こう」


「別にいいけど……」


「じゃあ決まりね! あー、楽しみだなぁ」


 こうして、漸くアセレアに行く目処がたったのだった。

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