第140話 知る者と知らぬ者のすれ違い

 side:Ryukhardtリュークハルト vonフォン Arlandoオーランド


「ちょ、ちょっと待ってくれ。かしらがいないなら、この件は一件落着とは行かないよな」


「そのようですね……」


 このことが深刻なことであると理解してくれているヘンデュラーは同調してくれるが、シャルとディアナはわかっていないらしい。


「ディアナ、一応聞くが、盗賊どもは全員連れてきたってことでいいんだよな?」


「は、はいっス」


 どうやら緊張感だけは伝わっているようで、ディアナも緊張感を持ちつつも返答する。


 そもそも急成長している盗賊団が総勢60名な事あるか? 盗賊団の団員の平均がわからんからなんとも言えんが、三頭賊ケルベロスは数百人単位の賊で、小さな街を作ってたしなぁ。


「ヘンデュラー、盗賊団の平均的な人員はどれくらいなんだ?」


「そうですねぇ……。普通は10.20名程度で構成されています。本当に少ないところは数名程度しかいないと聞きます。ならず者の集まりなので、人数が多いと、何かと厄介なことが多いらしいので」


 なるほど。それならカプディーブは割とデカいとこだったんだよな。

 三頭賊は3つのデカい盗賊団が合体してできたから数百人程度はいても不思議ではないか。


 それなら、ディアナ達が攻めた時は頭が不在だったのか? いや、トップが居ないなら無闇に戦いを仕掛けないだろうし。手下たちが負けたのを遠目に見ていて逃げ出したとか? それならシルフィードが逃がさないよな。


「うーん、さっぱりわからん。まぁ、奴らの拠点は皇国と聖王国の間だ。俺達には直接的な関係はない。義姉さんの方が心配だが、なんとかなるだろ」


「そんなんで良いんスかねぇ」


「まぁ、リュートくんだし、何かあればなんとかしてくれるよ」


「まぁ、それもそうッスね」


 ――コンコンコン


 シャルとディアナ呑気に話しているのを聞いているとノックの音が響き、ヘンデュラーが入室を許可するとヘンデュラー専属の鑑定士が入ってきた。


「彼らの査定が終わりましたので報告へ参りました」


 どうやら盗賊達に価値が付いたようだ。


 ◇

 side: Leonhardレオンハルト Vonフォン Starkスターク


「よくやった。報告は以上か?」


 親父の執務室に来たオレらはとりあえず、オレがグティと婚約し、兄貴もまた、公爵令嬢と婚約したことを親父に報告した。


 報告したのはそこまでだ。


「僕から報告することは以上です。次はレントから報告があります」


 今回の実質的な使節団長と言っても過言でもないライトの報告が終わり、オレに振る。


 それを聞いた親父は「話せ」と言わんばかりの顔をこちらに向ける。


「本国に帰還途中、盗賊団にばったり遭遇。こちらの死傷者は無し。盗賊は全員捕獲し、アニキが現在奴隷商へ行き、犯罪奴隷にしてもらいに行ってる」


「そうか。その賊たちが貯めていた金品はどうした」


「帰国の際、東門にて渡しました」


「まぁいい。ちょろまかすのは良いが、加減は覚えろ」


「……」


 バレテーラ。まぁ父親なら自分の息子の行動くらい読めるか。ましてやオレのようにこんな単純な子供など、そうそういない。


「……、ちょろまかした分は不問にする。次からは気をつけろ。報告は以上でいいか?」


「あい。それと、盗賊に捕まっていた女たちを保護したので、そちらの処理を親父に任せてぇんだが」


オレくらいの男の子も保護したが、そっちはオレの方でやりたいことがあるから、省略する。


「……」


「ま、任せたいのですが!」


 公式の場じゃないから良いじゃねぇかよ。なんて思いつつちゃんと言葉遣いを直す。


「ハハハッ! 身に付いた口調はそう簡単には直らん。少しずつで構わないが、公式の場ではボロが出ないようにしろ。それと保護した者たちの扱いはこちらに任せると言うが、そのものたちの状態を見なければなんとも言えん。後でいいから連れてくるといい」


「わかっ……わかりました」


「はぁ」と大きなため息をつきながら親父は再び書類に向き直る。今度こそ報告はないだろうと思っているのだろう。まぁ、もうひとつ報告があるのだが。


「それと」


「ん゛ん゛ッ」


「今回捕まえた賊ってのが、最近勢力を伸ばし始めていたカプディーブとか言う所らしい。オレは初めて聞いたんだが、グティが教えてくれた」


 聞く気のない親父に敬語を使っても仕方ないと思い、普通に喋ると、ギロっとこちらを睨んできた。


「……言葉遣いのことは許そう。ただ、カプディーブだと? あそこの長は王国騎士の成り下がり聞いていたが、倒したのか?」


「いや、倒してないです。色々あって下っ端たちからリンチにあい、殺されたようです。まぁ、王国騎士の成り下がりだろうが、なんだろうが、ぶっ殺してたけどよ」


「そうかそうか。これで皇国に借りを作らせるな。いい仕事をした。褒美ならくれてやるから今はここまでだ。お前たちの帰還パーティーと、レオンハルトとジークハルトの婚約パーティーも兼ねて今日はデカいパーティーを開く予定だ。その後で褒美の話をしよう」


「わかっt……わかりました」


 そうして報告を終えたオレたちは親父の執務室から退出した。まぁ、シルフィードとジーク、グティにハーゾッグ嬢はなんも言葉を発しなかったが。


 それにしても褒美か~! 思いもよらぬところで報酬ゲットとは最高以外に言葉がないな!

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