第136話 財宝
「よし、それじゃあ、行くか」
盗賊たちを馬車に括りつけたし、忘れ物もない。
「レオンハルト様、この人たちは盗賊ですよ? アジトを調べた方がいいかと思いますわ」
……たしかに。
「そうだな。それじゃあ、案内させるか」
「そうですわね」
それじゃあ、誰に案内させようかな……
「おいお前」
「は、はい!」
オレは1番近くにいた盗賊に話しかける。
「お前らのアジトまで案内しろ」
そして、盗賊の1人を解放し、オレたちに道案内させる。
「またかよ…」
「盗賊はこういうところが好きなのでしょうか?」
「またこういうところッスね」
オレたちが盗賊に連れられてやってきたのは街道横にある林の中心部であろう場所。
確か、
ちなみにここに来たのはオレとシルフィード、ディアナにグティ。騎士たちにはその場に残っている者たちの護衛を任せている。
「しかし、三頭賊とはアジトの形が全く違ぇな」
「そうッスね。多分、こういうのが普通で、三頭賊みたいなアジトが特殊だっただけっスよ」
「間違いないな」
三頭賊はこういうところに小さな町を作って生活していた。しかし、今回の賊は洞窟のようなところの奥にアジトを作っている。
「めぼしい財宝などがあるといいんですが……」
「大した実力もねぇのに財宝なんて持ってるのか?」
「……。レオンハルト様達が異常なだけで、盗賊の人たちも相当腕が立つ人たちのはずです。後ろで騎士の方たちの話しを聞いていたんですが、陣形などに隙もなく、攻めるのが難しいとさえ言っていました。それなのに10秒も経たず壊滅させてしまうとは」
グティはそう言うが、こいつらが強いとは思えん。まぁたしかに、いつもアニキやディアナみてぇな強いヤツとやり合ってるから今回の盗賊を弱いと感じただけかもしれねぇしな。
「……。レオンハルト様」
「どうした、シルフィード」
「この中から気配を感じます」
まぁ、普通に残党だよな。盗賊全員で外に出るわけないし。
「残党ッスね。チャチャッとやるっス」
その後、オレたちは洞窟を進み、出会う盗賊達をボコボコにして歩みを進める。
「な、な……」
仲間が一方的にやられているのを見て、案内人の賊は言葉が出ないようだ。
「気配はまだあるか?」
「はい、あるにはあります。ですが、多分賊の気配ではないです」
「囚われた人間か。少し急ぐぞ」
そりゃいるだろうな、囚われの人間。ちなみに、シルフィードの気配察知はかなり特殊だ。
アニキは魔力を薄く伸ばして気配察知するとか言っていたが、こいつのは違う。本当に微弱な風を発生させて物や人に当て、地形や気配を把握する。アニキが「超音波かよ」とか言ってたな。チョウオンパが何かアニキに聞いたが、理解できなかった。
そして、そのまま歩くと開けた場所へ出てきた。今までは大人の頭がギリギリ当たらないくらいの天井の低さだったが、今はかなり広い。アルのやつが、ドラゴンになっても飛べるスペースはある。
「これは死ダンジョンってやつでしょうか?」
「死ダンジョン? なんだそれ」
グティの口から初めて聞く言葉が出てくる。
「元々ダンジョンだったモノが、ダンジョンとしての機能を失い、そのままの地形を保ったままの場所のことですね。……死火山とかはさすがに知ってますよね? それのダンジョンバージョンです」
「なるほどな」
確か、もう噴火しない山のことだったか? アニキから聞いたのに忘れちまった。
「てか、あっちにまだ道が続いてるぞ」
オレたちが入ってきた逆側の方に道が続いてる。そこは、再び引くい天井が待ち構えていた。
「さっきのところはおそらくボス部屋だったのでしょうね。ここからはまた普通の道って感じです」
妙にダンジョンに詳しいグティに「へぇ」などと相槌をうちなが、進むと、今度は普通の部屋があった。
天井は普通の部屋程度だが、広さは城のパーティ会場のように広い。
そして最奥には牢屋のようなものもあり……
「人、だな」
「人、ですね」
「人、ですかね」
「人、ッスね」
おそらくあれが、囚われていた人間だろう。
「あのもの達はディアナとグティで助け出してくれ。シルフィード、他に人の気配や隠し部屋の気配はあるか?」
「はい!」
「了解っス」
「残党の気配はないですね。隠し部屋は……」
そう言いながらシルフィードは右側に歩き出す。
ちなみに、案内人もこっちに連れてきている。
そして右の突き当たりにやってきたが、シルフィードはその周りをキョロキョロしだした。
「なんか探してるのか?」
「はい、この辺にスイッチがあるはずなんですが……」
「そうか。おいお前、ここを開けろ」
「ひぃ、分かりやしたぁ」
こういう時は怖がらせるのが1番だよな。
案内人に隠し部屋のスイッチを押させて開けさせると……。
「おぉぉ」
「おぉぉぉ」
つい、オレとシルフィードの声が重なり、顔を合わせる。
「……ハッ」
「ふふっ」
「こんなところでイチャイチャすんなよ……」
目の前にはたくさんの金目のものが転がっていたのだ。
「よし、シルフィード、全部もって帰るぞ!」
「はい!」
多分、過去一シルフィードが嬉しそうな声を出した。
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