第135話 賊との遭遇
side:
アニキ達が先に飛び立ってから7日後、オレたちは少し厄介なことに巻き込まれていた。
「おい、こいつらの処理はどうすればいい」
「わ、わからないです! 私はただの護衛の騎士ゆえ」
護衛の騎士なら処理くらい上手くやってくれよ……。
そんなことを思いながらオレはこの件の処理の仕方を考えていた。
◇
――30分前
「前方に約60程度の集団を発見! 服装から盗賊かと思われます!」
オレとグティ、それとシルフィードが乗る馬車に報告が入った。
「そうか。今行く」
「ま、待ってください」
盗賊退治に行こうとしたらグティに止められてしまった。
「なんだ?」
「その、皇子なのに盗賊と戦うのですか?」
「何を言っている? オレは今回護衛として来たんだ。敵と戦うのは当然だろ」
グティは「信じられないですわ」などと言って、シルフィードは「仕方ないです。慣れてください」なんて言いやがる。
それに連れてきている騎士は約20名。護衛対象を守りながら1人あたり3人討伐する必要がある。いくら帝国騎士でもそれはさすがに無理がある。
「よし、シルフィード行くぞ。それとグティ、お前もこい。近くにいた方が守りやすい」
「了解しました」
「わ、分かりましたわ」
シルフィードはいつものことだと割り切っているが、グティは少し怯えが見える。
「そういえばグティ、魔法は使えるか?」
グティに馬車から降りる時のエスコートをしながら聞く。
「使えるには使えるのですが、実践向きではなく、戦うにはとても役に立てないです」
「使えるのか。なんの属性を扱うんだ?」
「あの、聞いてました?」
「聞いた上で聞いてるんだ。早く答えろ。戦いが始まる」
使える属性を答えるだけなのに、なぜ躊躇うんだ?
「は、はい。水魔法と土魔法を少しずつ程度、です。水は少ししか出ないですし土属性も砂を出す程度です」
「そうか。じゃあ土魔法を使う準備をしておけ。シルフィードは……、わかるな?」
「心得ていますよ」
うん、流石だな。
オレは戸惑うグティを連れて最前線までやってくる。
そこには連れてきた騎士たちが25名盗賊たちと睨み合いをしている。残りの5人は打ち漏らした盗賊たちを狩る役なのだろう。しかしまだ、盗賊たちとの距離は20メートルほどある。
「れ、レオンハルト殿下!」
「待たせた。お前らは下がっていろ。全員オレ1人で仕留める」
「で、ですが……」
「この場での最高責任者はオレだ」
「は、はい……」
オレの圧に負けて、食い下がっていた騎士は全員を連れて下がる。
「レオンハルト様」
「なんだ、シルフィード」
「全員生かして連れ帰りましょう」
あ? 何言ってんだこいつ。
「理由は?」
「帝国のためです。犯罪奴隷にしましょう」
「……いい考えだ。……よく聞けッ! 今降参するなら逃がすことを約束する! そちらに戦いの意思があるのなら、貴様らから自由の2文字は無くなるッ」
まぁ、口上はこんなもんでいいだろう。横でびっくりしているグティに急に大声出してごめんねと謝り、土魔法の準備を開始させる。
オレの口上を聞いた賊たちはバカにしたような感じでこちらを見ているからおそらく戦いの意思ありでいいだろう。
「我求む、彼の者の視界を奪え――
そしてグティはその場で土を生成し始めた。
「シルフィード」
「はい」
オレが名前を呼んだだけで全てを察したシルフィードはグティが作った土を賊に向けて飛ばす。
すると賊たちは次第に目の当たりを覆い始めた。距離があるので何を言っているのか聞こえないが、おそらく目が見えないとかほざいているのだろう。
「もういい、あとは任せろ」
視界を失った人間はゴミ同然。しかし、回復されると厄介なので、速攻で倒す必要がある。
「手伝うっス」
いつの間にかオレの横へやってきていたディアナが手伝ってくれるらしいので了承する。
「――身体強化」
「――獣化、うらァァァァ」
身体強化を施したオレは相手を殺さぬように剣は使わずに体術で仕留める。狙うは金的。
対してディアナは鳩尾を殴り無効化している。
そして1分と立たないうちに、鳩尾と金的を抑えて倒れている賊が60人出来上がった。
「じゃあみんなで縄で縛ってくれ! 縛ったら馬車に括りつけろ!」
とりあえず60人を馬車の数で割ってどの馬も同じくらいの負担になるようにする。アニキが馬車の重さを軽減してくれたおかげで、馬の進みは大して遅くはならなかった。
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