第131話 個の差
ミリティアの指示によって10体のゴーレムがゴーレム改1号くんを囲うように素早く陣形をとる。
うん、ここまでは予想通り。ゴーレム達は予めプログラムされた行動をとる。もちろん魔物化しているので、ある程度のアドリブは利かすが、基本はプログラムに従う。
当然、こうなることを予想していたので、ミリティアからもらった魔法陣から情報を抜き取り、ゴーレムのプログラムを覚えさせているので、勝手に対応してくれるだろう。
ちなみにゴーレムのプログラムだが、人数差で自陣が圧倒的に勝っていれば包囲網を形成し、同数または負けていれば、塊になって突撃もしくはミリティア、それに相当する者の指示に従うようにプログラムされていた。
10体1なので、当然囲んで来るだろうと言うのは想定していた。
そして、10体のゴーレムは息ぴったりに中央へ、そう、ゴーレム改1号に向かって突撃し始めた。10包囲からかなりの強さで攻撃すればゴーレム改1号くんでも無傷ではいられないだろうな。
「ふっ、決まりだな」
聞こえたわけ出ないが、ミリティアの口がそう動いた。
「ハッ、アホか」
今の俺の全てを詰め込んだゴーレム改1号くんはギリギリまで引き付けた後、前方へジャンプし、包囲網を脱出した。
「なっ」
当然、ゴーレム達は互いの身体がぶつかり合い、そこで3体がその場で崩れ落ちる。同時に倒れたゴーレム達が使っていた剣が衝撃に耐えられなくなり壊れた。
付与魔法で作ったゴーレムなら全員同じ強さで、10体全員に同じようにダメージが入るかと思ったがそうでもないだった。おそらくゴーレムの骨格の質だろう。鉄で作られたゴーレムであるが、純度100%の鉄ではない。不純物が紛れ込み、10体全てが同じ強さでは無いので、純度の低い3体がその場で壊れてしまったようだった。
「とりあえず楽に3体を潰せたな」
「これは予想通りなの?」
「予想通りってか、ゴーレムを作った魔法陣の根本は同じだ。……あー、要は相手の動きは魔法陣にある程度プログラムされてるから、カンニングしたようなもんだな」
「へぇ、リュートくんカンニングしたんだ」
「悪いことじゃないだろ? 戦いに於いて相手の手を熟知している方が有利になるからな」
「それはそうだけど……」
シャルとそんなことを言っていると追加で2体のゴーレムを崩し終えていた。
囲んでも勝てないと悟ったミリティアが一気に突撃することを命令し、残った7体が一気に攻撃を仕掛けて来たのだ。
しかし、それはなんともおそまつな攻撃であったのだ。残った7体は本当に塊で突撃してきて、作戦もクソもあったものでは無いのだ。
せめて前衛と後衛に分けるとかあるじゃん。実用的な魔法を使えないなら剣を投げるとかさ、そんでできた隙をもう一体が詰めるとかさ。
多分、ミリティアはそういうのを期待してる命令したんだろうけど、所詮は脳死のゴーレムだ。言われた通りただ突撃するだけだった。もしこれが戦争ならば、突撃するだけでも十分な戦力になるだろうが、個を相手にするならばそれでは弱いのだ。
現に、一体ずつ軽くあしらわれてまた一体崩れ落ちて残りが4体になってしまった。
「我らのゴーレムがここまで圧倒的されてしまうとは……」
「素材がミスリルだとあんなに動きが良くなるものなのか?」
「あのミスリルのゴーレム動きが良くなっていないか?」
何人か気づいた者がいるようだが、ゴーレム改1号の動きは少しづつ良くなって来ている。それに気付くのはなかなかいい目をしている。
ゴーレム改1号の動きは目を見張るほどなめらかになっている。
するとゴーレム改1号は不意に氷の矢を放ち、ゴーレムの心臓部分を狙う。ピンポインドで魔石に当たったのか、ゴーレムはまた崩れてしまった。
実用的な魔法を使えないゴーレムと実用的な魔法を使えるゴーレム改1号。個の能力の差が明らかになり始めた。
「もう十分だ。早く終わらせろ」
『御意』
軽く返事をしたゴーレム改1号は、今までのは準備運動だと言わんばかりのスピードでゴーレムに詰め寄りその右腕を振り抜く。
――ガンッ!!
しかし、ゴーレムが不意に盾を構え、防御に成功する。が、
「あぁ、そんなプログラムもあったな」
盾では防ぎきれず、そのまま振り抜かれ、また一体撃沈。
確か、予知できない攻撃が来れば、とりあえず盾を構えると言うプログラムがあったのを思い出した。
さぁ、あと2体。
残ったゴーレムは隙を伺っているのか、お互い少し離れた位置で、ゴーレム改1号を観察している。でも、そんなに離れたら……
右側のゴーレムに狙いを定めたゴーレム改1号は一瞬にしてゴーレムを崩した後、炎魔法を残ったラスト一体に当てる。
すると鉄で出来たゴーレムはみるみるうちに溶ける。
「勝負あり、だな」
俺は腕を組み余裕の表情を浮かべて言う。
「な、そんな」
対するミリティアは膝から崩れ落ちてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます