第130話 お披露目


 side:Ryukhardtリュークハルト vonフォン Arlandoオーランド


「いやぁ、上手く行ったね」


 俺はレントとジークの動向を見ながら言った。


「そうだね。2人とも公爵令嬢と婚約だなんて、帝国と聖王国の結び付きは大きくなったね」


 これで、7大国のうち東側の2カ国と協力的な関係を築くことが出来た。まぁ、ツワイトに関してはまだまだこれからその関係を強める必要はあるが、かなり長い付き合いなので、急に裏切ることなんでないと信じてまだ策を打っていない。


「みんな、少しいいかな」


 そんなことを考えていると、アウスナットが拡声魔法で呼びかけ、注目が一気にアウスナットに向く。


「今回はスターク帝国から皇子殿下が4名来てくださった。うち2名は退室しているが、今回の使節団のトップであるラインハルト殿下と護衛であるリュークハルト殿下からお話がある。是非聴いて欲しい」


 いや、これ最初からやるべきだったんじゃね?レントとジークいねぇじゃん。まぁ、今回ジークはライトの補佐みたいな立場で来ているっぽいし、別にいいんだろうけど、なんか違うよね。


「えー、こんばんは、ラインハルト・フォン・スタークです。今回は神器が保管庫から盗まれたと聞き、調査をしにやってきました。そして、聖王国の方とこちらの専門家たちの総合的な意見としては王国……タイシェン王国が介入した可能性が高いと結論が出ました」


「やはりな」

「あの国は昔からやり方が汚いのじゃ」

「ならば今すぐ取り返しに行くべきでは?」


「静かに」


 少しざわついた室内をアウスナットが鎮める。


「一応、魔力反応から保管庫に忍び込んだものたちが逃げた方向がタイシェン王国であっただけであって、こんなものは状況証拠にしかなりません。それらしいものを積んだ商人が関所を通ったという情報を得たのですが、それすらも確定では無いので、なんとも言えません」


 まぁ、そうだろうな。監視カメラがある訳でもないし、王国の紋章が入った何かが落ちていたわけでもない。つまり相手は綺麗に証拠を消し、更には堂々と関所を通ることで、怪しまれずに帰った可能性もある。


「と、言うわけで、我々聖王国と帝国の見解は一致しましたので、一応これからは王国の動向を重点的に監視していく方針になりました。それで次はリュークハルト殿下」


 ついに来たか。俺のゴーレムのお披露目が。


「あぁ」


 俺は短く返事をしてゴーレムを異空間収納から取り出し、起動する。


「お、おいなんだあれ」

「ミスリル……か?」

「そんなことあるか? どんだけ金使ってんだ」


「こいつは俺が作ったゴーレム改1号だ。実力はそうだな……今の状態なら聖王国のゴーレム10体程度なら軽くあしらうことが出来るだろう」


 今の状態なら、というのはこのゴーレムの動きがまだぎこちないから。群れとしてできたばかりなので、まだ動きが良くない。少しすればスムーズに動くとができると思うが、今はまだ聖王国製ゴーレム15体くらいとやり合えるが、余裕を見て10体にした。


「そんなことが有り得るのか? ゴーレム一体だけで兵士何人分になると思っているんだ。そのゴーレム10体を軽くあしらう?」

「ミスリル製なら可能なのだろうか……」

「やはり金か……」


「面白い冗談を言うなぁ、リュークハルト殿」


 ヒソヒソと話す貴族連中と違い、大きく張りのある声で俺に話しかけるのはミリティアだ。この国の軍部のトップの人だ。


「冗談などではないですよ、ミリティアさん」


「ふっ、なら、今ここでやってみるか?」


 あぁ、上手く乗ってくれたなぁ。そして、今のうちにゴーレム改1号くんに、準備運動の指示を出しておく。


「いいですけど……、そちらの面子が……」


「ふっ、くだらん。今すぐにゴーレムを10体用意しろ! して、どこでやるか?」


「ここでいいですよ。移動するのはめんどくさいので。あぁ、安心してください、結界を張るので周りに被害が出ないようにしますよ」


 一応相手から戦いを申し込ませて面子が潰れる心配もした、場所の提供もした。これだけやれば十分だろう。


「ふっ、まぁいい。皆! 部屋の端に移動してくれ! 貴族共もだ!」


 こうやって上流階級の貴族にも強く出れるのはそれだけミリティアさんの権力が強いからだろう。


 そうして数分もすれば、ミリティアさんから指示を受けたものが10体のゴーレムを連れてきた。


「ではルールはどうしますか?」


「そちらのゴーレムが動かなくなるまで、もしくはこちらのゴーレムの全てが動かなくなるまで、だな」


「武器の使用は」


「もちろん可能だ」


 まぁ、そだろうな。ゴーレムには直剣と盾が装備されている。対して俺のゴーレムには何も装備されていない。が、平気だ。全て折り込みなのでな。


「じゃあ、時間かけるものでもないし、さっさと始めましょうか」


 俺の目の前にゴーレム改1号、ミリティアの前にはおそらく鉄製のゴーレム10体が立ち、ポ〇モンバトルみたいになっている。そこにゴーレムたちだけを囲むように結界を張れば……


「突撃ッッ!!」

「軽くあしらえ」


 2人の声が重なりゴーレム同士の戦いが始まる。


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