第129話 婚約成立
side:
「あなたがスターク帝国の第4皇子様かね?」
オレの目の前にはグティの親父、イーファル公爵がいた。普通にパーティー会場にいたし。普通に別室とかで飲み会でもしてるのかと思えば、自分派閥のもの達と酒を飲んでいる。いかつい見た目をしたおっさん達が飲んでいるところに来るのはあまり好きじゃねぇ。
「はい。その認識であってます。レオンハルト・フォン・スタークです。ややこしい口上とか得意じゃないんで、直球に言いますけど、あんたの娘を貰っていく。それだけ言いに来た」
あぁ、頑張って敬語で話してたのに最後は素になっちまった。
「そうか。好きにしたまえ。それがグティの幸せになるのなら儂は口を出さん。ただまぁ、娘を泣かすのは許さん」
オレに対し、最初こそ堅苦しそうな口調であったが、オレが口調を崩すと公爵まで口調を崩してきた。
「そうか。まぁ、伝えたいことは伝えた。行こぜグティ」
「えぇ」
なんて言うか、愛されてねぇな。差別を受けているってのに父親まであの態度かよ。だが、そうでも無いのかもしれない。表面上ではそのような態度を取っているが、本当はもっと愛情を注いでやりたかったりしたのだろうな。だが、それは周りが許さない、か。なんとも馬鹿げた国だ。
そんなことを思いつつ、オレとグティはパーティー会場を退出し、オレ用に割り当てられた客室にグティを連れ込んだ。その際に「あら、積極的ですね」なんてからかわれたりしたが、あの場にいるとこいつに視線が集まりすぎて居心地が悪いかと思ったから場所を移したのにそんなこと言われると気ぃ利かせてる方がバカみたいだ。
「まぁ、あれだ。別に手を出すわけじゃねぇ。あの場は居心地が良くなかったからな。2人で茶会でもしようぜ」
「ふふっ、ありがとうございます。では、私がお茶をお入れ致しますね」
「あぁ、頼む」
その後オレたちは1時間ほど2人で茶会を楽しんだ。時間が来れば、使用人がやってきて、グティをイーファル公爵邸へ帰した。
そして、翌朝オレの元へイーファル公爵から手紙が届いた。内容としてはグティを貰ってくれてありがとうという旨とグティを幸せにしてやって欲しいという旨が書かれていた。自分があまり愛情を注げていないこと自覚していたのか、その分をオレに押し付けてきやがった。まぁ、オレの女にしたからには幸せにするが。
◇
side:
「あの、ハーゾッグ嬢……いや、エリザベスさん」
「な、なによ」
急に名前を呼ばれて恥ずかしくなったのか、耳まで赤くして返事をする。うーん、この反応、やっぱり男性慣れしていないのかな?ボクも女性に慣れているわけではないですが、ポーカーフェイスは得意なので、顔には出ていないはずです。
「せっかく婚約するんです、手でも繋いで見せつけてあげましょう」
「そ、そうね。手ね。手を繋ぐのよね」
恥ずかしいのか、なかなか手を出してくれないエリザベスさんだったが、彼女の方から手を握ってくれた。あぁ、可愛いなぁ。こんなんで赤くなっちゃうのか。そう思いながらボクはその指を絡めるように握る。リュートが言っていた「恋人繋ぎ」というやつだ。
「ひゃっ」
急に指を絡めたことにびっくりしたのか、変な声を上げてさらに赤くなってしまった。この娘、自分の会社持ってるんだよね。こんなに顔に出やすかったら商業なんてできないと思うんだけど……。スイッチが入ると顔に出ないようになるとかなのかな。
「どうしたの? 顔、赤いよ?」
そう言って、彼女のおでこに手を当てる。
「ひゃっ」
また声を上げ、目を瞑ってしまう。あぁ、気持ちいいなぁ。さっきまであんなに強気だったのに。押しには弱いのかぁ。まぁ、父上と母上譲りのいい顔も相まってエリザベスさんが照れちゃってるのもあるだろうけど。
「お初にお目にかかります」
そうこうしているうちにハーゾッグ公爵の前までやってきた。個室で飲んでるのかと思っていけど、普通に会場で自分の派閥の人たちと飲んでいる。そして、ボクに背中を向けている、ハーゾッグ公爵であろう人に声をかけた。
「む? おぉ。貴殿は確か」
「ジークハルト・フォン・スタークと申します。お会いできて光栄です、ハーゾッグ公爵」
「これはこれは丁寧な。アンムート・フォン・ハーゾッグです。して、なんの用ですかな?」
ボクの前にいるのは好青年だった。公爵家当主と言うからにはいかつい人を想像していましたが、好青年だった。
「えっと、エリザベスさんをボクにください」
ボクがそう言うと、ハーゾッグ派閥の一緒に飲んでいた人達から声が上がる。
先を越されたとか、何とか。多分娘をボクの婚約者にしたかったとか、息子をエリザベスさんの婚約者にしたかったとかだろう。
「……リズ。君はどうなんだい?」
「お父様……。私はこのお申し出をけたいと思っております」
「そうか。君が言うなら私が止める必要は無いね。いいですよ、ジークハルト殿下。娘をよろしくお願い致します」
あらら。普通に許可が降りました。最初は反対されてー、とかあるかと思ったら娘の意志を尊重する良い父親ですね。
「ありがとうございます。それじゃあ行こうか、リズ」
最後の一言はリズにしか聞こえないように言った。
「ひゃっ、ひゃい」
「ふふっ、なぜ照れているんだい? 早く行こう」
そう言いながらボクはリズと手を繋ぎながらボク用に割り当てられた客室にリズを案内する。
1時間ほどリズとお話をした後、シルフィードにお願いして、リズをハーゾッグ公爵邸まで送って貰った。
翌朝、ボクの元へハーゾッグ公爵からの手紙が届いた。
その内容はリズを泣かせたら許さないというものを遠回しに書かれたものだった。
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