第127話 婚約者~レントの場合~


「な、なぁ。あれって」

「最近よく見る子供だよな」

「やめろ! あれは帝国の皇子達だぞ!」

「ど、どれが皇子だ? 早く娘を向かわせたい」

「全部じゃ。全部。あそこにいるアウスナット様以外の男全員皇子じゃよ」


 一瞬にして静かになった会場だったが、再びザワザワとしだす。


 中には俺たちのことを知っているものがいれば、知らない人もいるらしい。

 知らないもは知っているものから誰が皇子か聞き、娘を向かわせようとする。娘がいないものは息子を送り込み仲良くさせようとているらしい。知っているものは既に動き出しているようだが、こうやって向かわせるのは悪手ごみてだ。ここで向かわせるとその他大勢に映ることになる。ソースは俺。

 俺たちの誕生日パーティーの時はどの令嬢もその他大勢に見えた。しかし俺たちの方に寄らずにいた、余裕のある高位貴族の子息令嬢はとても気になった。

 そういう経験からこの場はあえて自分の子供を向かわせず興味無い振りさせるのが1番なのだが……。


「ぼ、僕――と言います!」

「私は――家の―――」

「え、えっと、僕は――」


 あぁ。数ヶ月前と同じ光景だ。


「俺は今回護衛として来ているので話があるならあの二人へ。それに俺には既に婚約者がいるのでな」

「オレは今回護衛として来ているので話があるならあの二人の所に行ってくれ」

「あー、僕婚約者いるんで、女性の方は遠慮させてもらいます」


 俺は普通に興味無いので、シャルと腕を絡めその他大勢を無視して歩き出す。無論、食事をするためだ。この場は立食形式なので、欲しいものを自分のさらに入れて食べて行くスタイルだ。いわばバイキングのようなものだ。


 レント、お前は嫁探しに来たのに何してんねん。逃げるなや。ライトはまぁ妥当な逃げ方だな。俺たちのようにエレオノーラと腕を絡めその場を凌ぐらしい。


「え、ちょ。ボクだけ置いてけぼり?」


 まぁそうなると当然ジークだけ取り残されることになる。そして俺たちのおかげで群れる人数が散っていたのに俺たちがいなくなったことで、その全てがジークへ向かう。……どんまい。


 レントは……うん、大丈夫そう。レントを見ると俺たちに群れず、1人で椅子に座りお茶を飲む令嬢の方へ足を運んでいた。立食形式とは言ったが、椅子や机がない訳では無い。いくつかあるう内のひとつを使っている令嬢の元へ向かったのだ。


 ちなみに、ディアナとシルフィードだが、ディアナをライト、シルフィードをジークに付け、護衛させている。俺とレントはそもそも護衛として来たので護衛に護衛はいらないのだ。


 ◇

 side: Leonhardレオンハルト Vonフォン Starkスターク


 群れてきた奴らを全部ジークの兄貴に押し付けたオレは1人で茶を飲んでやがる女の元へ向かった。


 オレたちが皇族とわかった瞬間寄ってくるようなだせぇ奴らとは絡みたくもねぇからな。あーやって興味無いみたいな雰囲気を出してるやつの方が気になる。


 本当は興味津々で頑張って取り繕ってるやつだったとしてもそっちの方がマシだ。他の奴と違いを作ろうと頑張る精神が好きだ。仮に本当に興味無いんだったら興味持たせたくなるしな。


「隣、いいか?」


 オレがそういうと彼女は驚いた顔をしながら首を縦に振り、了承してくれた。


 その透き通るように白い肌に薄く金色がかかった白い毛、極めつけはその赤い目だ。よく見ると青みがかっているが、遠くから見ると赤い目に見える。これがアニキが言っていたアルビノというやつか。


 確か公爵令嬢の……


「イーファル……」


「あら? 私の事をご存知で?」


 透き通るような綺麗な声だ。


「ま、まぁな。アニキが他国の貴族に詳しくて、その影響で少し」


 苦し紛れの言い訳ではあるが、イーファル家の令嬢であることをアニキから聞いていたし、かなり才能のある者であることも聞いている。


「そう。それじゃあ知っているかもしれませんが、自己紹介程度はしておきましょうか。グティ・フォン・イーファルと申します。一応公爵令嬢というものをやっておりますわ」


「レオンハルト・フォン・スタークだ。スターク帝国の第4皇子をやっている。ちなみに今回は護衛としてやって来た」


 グティと名乗った女が、公爵令嬢と、含めたのは、彼女の体質の問題。アニキの言うアルビノはこの国では呪い扱いをされていて不遇な扱いなのだそうだ。

 グティ嬢の才を見抜いたアニキから前情報を貰っていたが、いまいち掴みどころのない人物だ。


「そう。でも私に話しかけない方がいいわ。私嫌われているもの」


「その体質のせいで、だろ?オレに考えがあるのだが……」


「何かしら?」


「オレと一緒に帝国に来ないか? 帝国は他種族国家だ。そんな肌の色や髪の色、目の色程度の差別など受けない。それにお前は優秀な部類だろう。オレのために働け」


「……」


 少し強引すぎただろうか。ぽかんと口を開けたまま喋らない。


「お、おい、返事」


「ふふっ。いいですわ。そうと決まればお父様に報告をしに行かねばなりませんね。付いてきてくださる?」


「あぁ、もちろんだ」


 オレはグティに手を引かれ、グティの父親の元へ行くのだった。

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