第125話 インジナーの革命
「お前の名前はゴーレム改1号だ。その核であるゴーレム核1号、お前がこの群れのボスだ。仲間を魅了し、お前に心酔させろ」
『御意』
そう言って動き出したゴーレムだが、どこか動きがぎこちない。
「なんか動きがぎこちなくねぇか?」
「寄せ集めの群れを指揮するのは大変なことなんだよ。時間をかければ、文字通り配下たちを手足のように使えるようになるだろう」
なまじ力のある
「それよりやっぱりごついよな、このゴーレム。次はもっとスリムな感じなの作って欲しい」
「そりゃあ、若が2日で作れなんて無茶言うから少し詰めが甘くなっちまっただけだろ?2日と言わず1週間ほどくれりゃあもっとスリムなゴーレムを作れたんだがな」
「そうか」
今から新しいのを作ってもらおうかなとか思ったけど、また1からゴーレムを作るのもめんどくさいし、ウルフ系の魔石を集めるのもめんどくさい。ゴーレム改2号の制作は将来的に考えるとして、今は必要ない。
「あー、親方。とりあえずこれ」
そう言って俺は白金貨が10枚入った麻袋を親方に渡す。
「なんだ? これ」
「このミスリルってこの鍜治工房の予算から購入したやつだろ? それならその分の金は渡しておかなきゃいけないと思ってな」
少し、いやかなり多めに渡してしまったが、手間賃みたいなもんだ。親方には世話になってるし、これからもよろしくと言う意味を込めて少し多めに渡した。
「にしても少し多すぎやしないか?」
「いいんだよ。金なんて貰える時に貰っておけ」
「ま、まぁ。若が言うなら……」
そう言って親方は渋々金を受け取る。すると
「おや? 殿下じゃないかい。今は確か聖王国に行ってるはずじゃなかったのかい?」
「インジナー」
「なにさ。アタシに内緒で面白いことやってんじゃないわよね?」
「あぁ。面白いもんなんてなんにもやってないよ。ただゴーレムを作ってただけ」
「……。面白いことじゃねぇかー! アタシもまぜろぉぉー!」
うん、誤魔化せると思ったけど、無理っぽかった。てか、キャラ変わりすぎだろ。何、娯楽に飢えてるのか?
「ごめんごめん。そもそもお前を混ぜたところでなにか出来るのか?」
「ふふん。舐めてもらっちゃ困るよ。これをご覧」
そう言ってインジナーはひとつの指輪を俺に見せる。魔石がハマっていることから、おそらく魔道具の類だと予想できる。
ちなみに、インジナーの持っている指輪に使われている魔石はおそらくスライム系統。基本的にどの魔物の魔石の大きさはどれも変わらないのだが、例外がある。スライム系統はとても小さく、ドラゴン系統の魔石は1mを超える。
「なんの魔道具だ?」
「こいつの能力は《魔法障壁》《物理障壁》、それに《魔溜》、さね」
そう言ってインジナーはニヤリと笑う。
わお、魔溜か。文字型の付与魔法なら魔溜を付与することで常に発動させることが出来る。
魔法陣型の付与魔法に魔溜をつけるとどうなるか? 俺は知らない。だってやったことないもん。魔溜を魔法陣の中に組み込んだってことだよな。俺には出来ない芸当だ。インジナーは魔溜の解釈を完璧にし、魔法陣に組み込んだ。これは多分革命だ。
「どんな能力か気になるんかね?」
「ああ」
そもそも魔溜は魔力を通す間しか発動できない文字型付与魔法の弱点を克服するために作った付与魔法。
魔法陣型付与魔法は魔石の魔力が切れるまで常に発動し続ける。いわばデフォルトで魔溜が付いているようなものだ。その分魔法陣の構成自体難しいので文字型と魔法陣型どちらが有用かは一概に言えないが、漢字が使える俺からすれば文字制限のある文字型付与魔法の方が有用と言いたい。
「仕方ない、教えてあげるさね。ま、簡単に言えば魔法陣型付与魔法の弱点を克服しただけなんだがね」
インジナーから詳しく聞いた俺は思わず声を漏らした。
魔法陣型付与魔法の弱点としては先程も挙げたように魔法陣の構成を考えるのも描き写すのも難しいため、弱点としてされるが、もうひとつある。それは魔石の魔力が尽きた時。戦闘中に急に魔石の魔力が切れると、交換する暇もなく、今まで当たり前のように使っていたものが使えなくなり、デバフがかかったようになる。それを克服したとの事。
まず魔法陣自体に魔力を溜め込む。これを《魔溜》とし、魔石の魔力が切れた際は一時的にその魔力を魔石に流し、魔道具として機能させるとの事。
もちろん日頃のメンテナンスを怠らなければ、魔石の魔力が切れるなんてことないのだが、連戦続きになるどうしてもそのような事態に陥ることがある。それを一時的にでもカバーできるのはすごいことだ。
「はぁ~、こういう構造にすれば《魔溜》として機能するのか。なぁ、これパクってもいいか?」
「もちろんさね。そのために持ってきたんだから」
「よし、ゴーレム一旦スリープモード」
『了解』
俺の指示を受けたゴーレムはその場に座り込む。使わない時はスリープモードにすることで俺は魔力の節約を実現させたのだが、まさかここで戦力アップするとは思わなかった。
「よしっ。これでいいだろう。ゴーレム起動」
30分程度で全てのゴーレムに《魔溜》を描き加え、大量に魔力を流してる置いたので、おそらくかなり長持ちするだろう。
「ありがとう親方、インジナー。俺はこれから用事があるから聖王国に戻る」
「おう! いつでも頼れよ! 若」
「行ってらっしゃい」
ゴーレムを異空間収納に入れた俺は聖王国まで転移した。
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