第124話 ゴーレムとのファーストコンタクト


「親方ぁ~! 取りに来た!」


「若ぁ! ようやく来たか! もう出来てるぜ~」


 わお。多分親方のことだから俺が早朝も早朝、日が昇る前にでも取りに来ると思ったのだろうな。既に用意されているのは俺としてもありがたい。


「それじゃあ実物を見せてくれ!」


 ワクワクが抑えられず、急かすと工房の奥へ案内される。


「こいつだぜ」


 そう言って親方は反射して虹色にも銀色にも見えるゴーレムの腰あたりをバシバシと叩く。

 ドワーフの親方は身長が低いから170cmもあるゴーレムよりも全然小さい。それはななさいの俺にも言えることで……


「でっけぇな」


 その体格も相まってゴーレムの骨格となるミスリルの人形はとてもデカく見えた。


「こいつぁ自信作だ。それにしても全てのパーツに魔石を入れる部分作ってくれってどういうことだ? 普通のゴーレムなら魔石を入れる部分なんて1箇所で十分じゃねぇか」


「普通のゴーレムなら、な。俺が作るゴーレムは普通じゃないってことだ。後申し訳ないけど、全部解体してもらってもいいか? 魔法陣が描けない」


「おっと、そうだったな。すまねぇ。今解体する」


 そういうと親方は30分程度でゴーレムを解体する。手際がいいし、丁寧だ。さすが宮廷に使える職人だ。


「あー、この場所を数時間ほど借りてもいいか?ここでゴーレムを制作したい」


「構わないぞ。ただ、ゴーレムを作る様子をここで見ていてもいいか?」


「あぁ。全然大丈夫だ」


 そう言って俺はエンペラーウルフの魔石を取り出す。


「な゛」


 魔石を見た親方は一気に俺に近寄り魔石に顔を寄せる。


「こうつぁエンペラーウルフの魔石か?」


「あぁ。よくわかったな」


「それくらい駆け出しの鍛冶師でも分かる」


 そう、魔物の魔石は魔物の系統によって色と形が異なるのだ。ウルフ系は縦長の八面体、ゴブリン系はひし形、とか。そこに色が加わる。普通のウルフやゴブリンなら青、上位種なら赤とか。そしてその頂点であるエンペラーウルフや、ゴブリンキング、オークキングなど所謂キング系に属する魔物の魔石は虹色に光る。しかし魔石の大きさはどの魔物もだいたい同じくらい。大きくて直径10cm程度だ。


「へぇ。そりゃ見分けつきやすいし、わかるか」


 そしてそのままその魔石に俺の魔力を一気に流し込む。


「おいおいおい、何やってんだ!? 魔石に魔力流してるのか!? そんな芸当が可能なのかよ……」


 魔石は通常魔石の持ち主の個体……今回ならエンペラーウルフの魔力が染み渡り出来た、いわば魔力の結晶。そこに他人の魔力を流し込むと異物が入り込み、その魔石は魔石として機能しない。この魔石は魔物が魔法を使う時の動力源になったりする。

 そのため超高位の魔法使いとかは魔物に直接触れ、魔石に直接触れていなくとも魔石に自分の魔力を流し込みその魔物の命を絶たせるなんてことをするやつもいるらしい。


 しかし俺も今回はこの魔石に俺の魔力を流し込んだ。ではなぜ魔石の効力が失われないのか? 同化の応用だ。アイによって魔石の成分を解析し、俺の魔力を変質させエンペラーウルフの魔力に合わせる。そしてそこに魔力を流し込む。こうすることによって普通のエンペラーウルフの魔石の数十倍の威力は出るだろう。


 そしてこの魔石をゴーレムの胸部につける。こいつがこのゴーレムの核となる。


 そして付与魔法。ミリティアから貰った魔法陣をいつも付与魔法を使う時に使用している筆とインクを使い、書き写していく。もちろんアレンジも添えて。


 このアレンジがとても重要なのだ。今回エンペラーウルフの魔石を選んだのもこのアレンジを最大限活かすため。


「……随分と手際がいいなぁ」


「これでも一体作るのに15分はかかるけど、ねッ。よし。出来た」


 は一体。核となるゴーレムの完成だ。


「これで終わりか? 数時間この場を借りたいとか言っていたが……」


「うん、親方が作ってくれた32個のパーツ、全部ゴーレムにする」


「……はぁ?」


 まぁ、そんなリアクションするよね。


「まぁまぁ。言わなかったっけ? ゴーレムは物体の魔物化って」


「……そんなこと言ってたなぁ」


「そんで、核となる魔石がエンペラーウルフと言うスペックの高い魔石でもミスリルの巨体を動かすのに魔石のリソース割いてたら戦えないだろ?」


「……まさか?」


「そう、そのまさか。この核を上位種の魔物と見立てて他31個のパーツとこの核でひとつの魔物の群れ。群れの長となる核が指示を出し遂行する配下たち。どうだ?」


 物体の魔物化というのを上手く利用した考えだ。


「…………」


「お、おい。なんとか言ってくれ」


 何故か親方が黙っちまった。


「革命だな。こりゃ」


「だろー? 俺ってすごいんだよ」


「あぁ。すげえよ若。ウルフ系の魔石を選んだのもウルフの習性を活かすためか!?」


 うん。当たり。ウルフ系の魔物は力を重んじる魔物。強いものに従い、弱いものを従える。核となるエンペラーが絶対的な力を持てばその力は群れに還元され、群れ全体が強くなる。そのために魔石の魔力量をめちゃめちゃ増やしたのだ。


 そしてこのゴーレムのアレンジとは、魔物の群れ化。諸説あるがゴブリンやオークなどの種族も強き者に従うが、其れは渋々従っているだけ。しかしウルフは群れの主を信仰する。魔物研究者達が魔物たちの行動などを見て分析した結果この結論が出たのだが、アイに聞いたらその理論は正解らしい。なので、今回はウルフ系の魔物の魔石を使うわけだ。他31体のゴーレム《体の部位》にはジェネラルウルフの魔石を使用する。将軍ジェネラル系はキング系の一つ下のランク。つまりこのゴーレムにはウルフ系の上澄みしか積まれていないことになる。


 これがいい方に行くか悪い方に行くかだが、おそらくいい方に行くと信じている。魔法陣のアレンジに上位の魔石ほど動きが良くなるという効果を付け足したので、上手くいくだろう。


 そうして8時間弱ほどかけゴーレム(の群れ)は完成した。


「さぁ、ゴーレム改1号くん。始動!」


 ――ガタ


 そういうとゴーレムが動し始める。


『………状況確認。主人マスター確認』


 ――ガタ


 よし。思念伝達を付与したのでおそらく俺との会話は問題ないだろう。実際ゴーレム改1号くんが言っていたことが聞こえたし。

 俺の姿を確認し、主人マスターだと理解したゴーレムはそこに跪く。


「お前の名前はゴーレム改1号だ。その核であるゴーレム核1号、お前がこの群れのボスだ。仲間を魅了し、お前に心酔させろ」


『御意』


 斯くしてこの世界に最強のゴーレムが産まれたのだ。


※あとがき

語彙力無さすぎて説明ムズい

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