第121話 交渉成立
「そうか。では自己紹介も終わったことだし、単刀直入に言う。ゴーレムの作り方を教えて欲しい」
俺がそう言うと、ニコニコしていた、ミリティアの表情から色が無くなる。……もしかして地雷踏んだ? しかしその深紅の瞳には悩みが見える。
「それでは私は彼らを保管庫へ案内します故退出致します」
そして、何故かセドリックさんは逃げるようにしてこの部屋を退出する。え? まじで地雷踏んだ?
「なんじゃ、お主がここを訪ねたのはゴーレムのためか? 確かに入口にゴーレム擬きがおったが、ゴーレムの作り方なら我が教えてやるぞ?」
「いや、いい。俺はミリティアさんから聞きたいんだ」
そう言うと、アルは「そうか」と言いながら1歩下がる。
アルの言った、ゴーレム擬き。ゴーレムとは土魔法使いが、土魔法を使い、作ったモノを自らの意思で動かす魔法。しかし、聖都に入る時に見たゴーレムは操っているようには見えなかった。つまり、魔法で動かす以外の何らかの使用方法があるということ。
「ゴーレム擬き、か。たしかに君たちが聖都の入口で見たものはゴーレム擬きと呼ぶにふさわしいものだ。しかし、あれの作り方を教える義理はないぞ? フェメニーナ様のご兄弟だからといって、おいそれと教えられるようなものでは無い」
「その口ぶりからすると、そちらにメリットがあるなら教えても良い、という事だな?」
俺は正確に核心をつくよう発言する。
「まぁ、そうなるな。しかしそう都合よくこちらにメリットになるものがあるのか?」
そう言って笑って見せる。これはこちらを試す目だ。しかしまぁ、哀れなものだ。勝算があるからこんな発言してるのに、この人は俺の評価を"7歳児"から改める必要があるな。
「そうだなぁ。今日か明日。まぁ明後日でも良い。パーティーを開こう。もちろんこの国の貴族も呼んで。あぁ。子息令嬢も忘れずに、な?俺の兄や弟である第2、第4皇子はまだ、フリーだ。玉の輿が狙えるかもしれんなァ?」
ここまで言えばわかるのだろうか。この国の貴族と我が国の皇族で、婚姻関係になれば、そのつながりはより強化される。
こちら側からお願いしてお見合いなんてしてもらうと、外聞的に良くないので、こちら側が、大規模のお見合いパーティーを承諾したという形を取れば、体制を保てるだろう。
「……この件は1度聖王様に通しても良いか?」
まぁ、この人の権力的にここで決められる問題ではない。この返答が妥当だろう。
「あぁ。構わない。どれほど時間がかかるだろうか?」
「……2、いや1時間もかけずに結果を出すよう陛下を促す。私としてはこの話を受けても良いと思っているのでな」
「わかった。それじゃあ、俺たちは外で待機している。案内の者をよこしてもらってもいいか?」
「ああ、構わない」
◇
――宮殿敷地内の訓練場
「まぁ、見た感じ、練度はうちの国の方が上って感じだな」
「そうッスね」
「我からしたらどちらも同じじゃがな」
「んー、私から見るとどっちも同じに見えるなぁ」
「キュゥン!」
ミリティアさんによって案内人が付けられたが、案内された場所は屋外の訓練場。そこでは聖王国の兵士達が鍛錬をしているところだったのだが、俺たちの意見が2:2で別れてしまった。
たしかにアルからすれば、どちらも虫けらのように見えるかもしれない。シャル目線だと、どちらも同じくらいすごいと言う意味なんだろうが、結果が同じでも過程が違うとここまで聞こえ方が変わってくるんだな。
「それで?才能のあるやつはおったのか?」
アルには俺の神眼のことを教えているので、当然、才能を覗き見することが出来ることも知っている。
「んー……、いないっぽいな。いてもC+だ。Bランクの人間はいないな」
今この場にいるの全員が剣を振っているのだが、剣士の中でも槍の方が才能があったり、魔法やった方が才能が開花するのに、なんて人は帝国に数人いたので、転向させたが、この国にはどうやらいないようだった。数人の剣士が剣の才能がC+程度で、引き抜く程でもない。
神眼のことでさらにぶっちゃけると、ディアナやシャルにも教えているため、アルとコソコソ言う必要がなく、普通の声の大きさで会話している。
そんなこんなで1時間ほど、兵士たちの取り組みを見学していると、こちらの存在に気づくものがチラホラといるのだが、誰一人としてこちらに注意しに来ない。まぁ、圧が違うもんなぁ。俺とディアナとアル。意識していなくても武人には伝わるらしく、こちらによって来るものはいなかった。
「おぉーい! 待たせたな!」
「ミリティアさん。全然待っていないので大丈夫です。それで、こちらとしては良い返事を期待しているのですが」
「あぁ!陛下から許可が降りた!ゴーレムの作り方を教えるぞ! それと、パーティーなのだが、2日後の夜で良いだろうか?できるだけ多くの貴族を招待したいのでな」
「あぁ、それで構わない。こちらとしても人が多い方がいいしな。それじゃあ、教えてくれ」
「承知した!」
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