第120話 軍部のトップ


「なぁ、セドリックさん、俺この国の軍部の人と話がしたいんですけど、可能ですか?」


「……? まぁ、かまいませんよ。ではリュークハルト様をお先に案内致しますので、皆様はここでお待ちください」


 ゴーレムのことに関して聞きたかった俺は軍部の人と話す機会が欲しかったので、セドリックさんにお願いした。すると、少し疑問に思いながらも了承してくれた。


 これで軍部の下っ端出されて、「この人も軍部の人間です」とか言って取り合ってくれないのは嫌だが、この人ならその辺理解してるっぽいし多分1番上の人と合わせてくれるだろう。


「なら、私も行くわ」


「シャルも来るのか?大して面白い話をする訳でもないぞ?」


「いいのよ。保管庫も同じようなものだし。それならリュートくんがいる方に行きたいじゃない」


「わかった。じゃあ、他のみんなは保管庫の方でいいか?」


「当然、我もそちらへゆくぞ」


 アルだ。


「お前はそうだろうと思ったよ。まぁ、メンツ的にこんなもんでいいか?ディアナは大丈夫か?」


「じ、実はそっちの方も興味あるっス。殿下が何するか知らないッスけど、殿下のことですし多分そっちの方が楽しいっス」

「じゃ、じゃあおれもか……」


「ダメに決まってるだろ」


 ディアナは追加メンバーだからいいとしても、レントはライトたちの護衛があるのに抜ける訳には行かないだろ。


「ちぇー」


「シルフィード、こいつのこと見といてくれ」


「はい。もとよりそのつもりです」


 うん。さすがシルフィード。頼りになるな。


「あと、ライトとレントは強制的に保管庫の方に行くとして……エレオノーラもそっちでいいか?」


「えぇ、構わないですわ。ライト様といるためにわざわざ追いかけて来たのですから。それに……ね」


 まぁ、エレオノーラが言いたいことはよくわかる。俺たちが保管庫に一度行って、ご飯を食べるためにここへ来る時に何人かの子息令嬢とあったのだが、令嬢たちの目が獲物を見る目だった。おそらく親の用事かなにかについてきたのだろうが、偶然帝国の皇子達がやってきているのを知れば、玉の輿を狙うのも必然だ。

 その牽制として今日はライトといるらしい。


「まぁ、妥当だろうな。それじゃ、セドリックさん、お願いします」


「はい、かしこまりました」


 こうして、俺、シャル、アルにディアナ。そしてアルの頭から俺の頭に乗り移り、陣取っているヴォル。この4名と1匹で向かうことにした。


 ◇

 ――コンコン


「セドリックでございます。ミリティア様はいらっしゃいますか?」


「セドリック殿か!どうぞ、入ってくれ!」


 中から聞こえたのはおそらく女性の声。この国の軍部のトップは女性らしい。


 ――ガチャ


「失礼します。……久しぶりですね、ミリティア様」


「セドリック殿も久しぶりだな! セドリック殿が戦線を離れてしばらく経つが、あなたの抜けた穴は未だ大きい」


「それは軍人としては嬉しくもあり、役人としては悲しくもなりますな」


 話の文脈から察するにセドリックさんは元軍人なのだろう。それらしい仕草はなかったが、隠すのが上手いな。


「して、そちらの方々は?」


 ゼドリックさんで見えなかったが、ひょいと顔を出した、軍部のトップであろう者はまさかの女性だった。その深紅の長髪を綺麗に一括りにし、キリッとした表情の中に優しが見える。そして、どこかで見たことのあるような顔にも見える。身長はおそらく170cmはあるだろうか。女性にしては高いな。


「紹介が遅れましたな、彼はリュークハルト・フォン・オーランド様。あのリュークハルト様ですよ。今は姓を変えて臣籍降下したらしいです」


「今、セドリックさんから紹介があったリュークハルト・フォン・オーランドです。本日はアポもないのに対応して頂きありがとうございます」


 アポなしで来たためさすがに礼儀は弁える。


「貴殿がリュークハルト殿か!弱冠7歳にして辺境伯家当主、その他にも色々なことを聞いている。よろしく頼むぞ」


 そう言って、彼女―ミリティアだったか?―が手を出し、俺はその手を取る。


「えぇ。ではこちらも紹介させてください。まずはこちらがシャーロット・フォン・ヴァイス。俺の婚約者です」


「よろしくお願いします」


「ディアナ・べスティア。虎獣人です」


「よ、よろしく頼むっス」


 そういうディアナの胸元を見つめるミリティア。……あぁ。ディアナは少し胸元が開いている服を着用しているので、奴隷として買った時につけた模様が少し見えているようだ。最近はそれが当たり前になって気に止めていなかったが、ミリティアの気に触れたりしていないだろうか……。


「んで、アル・ドラゴ。こんな成りでも一応エンシェントドラゴンなんて呼ばれて人には恐れられている」


「我まで紹介することなかろう……」


「最後にヴォル。俺の従魔だ」


「キュウン!」


「リュークハルト殿にシャーロット殿、ディアナ殿にアル殿、そしてヴォル殿だな!私はミリティア・フォン・ローデンヴァルトだ。父方の祖父の母が帝国から嫁いできてな、私の血にはヴェルメリオ家の血が流れている。確かエレオノーラ殿の遠い親戚にあたるな」


 あぁ。どこかで見たことあると思ったらエレオノーラだ。たしかにエレオノーラの髪の色も赤だったな。


「そうか。では自己紹介も終わったことだし、単刀直入に言う。ゴーレムの作り方を教えて欲しい」



※あとがき

髪色の都合上、エレオノーラの苗字をヴァイオレット→ヴェルメリオ、ユリアーネの苗字をロート→ヴァイオレットに変更します。それに伴い、エレオノーラを侯爵令嬢から辺境伯令嬢、ユリアーネを侯爵令嬢から辺境伯令嬢にします。一応全話探して直すつもりですが、間違いがあればご指摘貰えると嬉しいです。

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