第114話 改造馬車


「なんでアニキがこんなところにいるんだよ」


「んー、まぁ、色々あるんだよ、こっちにもッ」


馬車から出てきたレントの質問に答えていると、オークがこちらへ迫ってくる。


こちらへ迫ってきた三体のオークの首を一瞬で落とす。


「色々っておまえ――」

「急に飛ばすでない!びっくりするであろう?」


「ほんとです。本当に危ないんですから。あ、レオンハルト様お久しぶりです」


レントが喋るのに被せて、あとから追いついてきたアルとシルフィードがやってきた。ヴォルはアルの頭の上に乗っている。



「な、な……」


レントは驚いて声も出ないらしい。


「それと、身を案じて後方に置いてくるのも良いが、後方から魔物が現れたらどうする。ほれ」


「キャッ!」


そう言って、アルはシャルを俺に投げ飛ばす。


「うぉっと、大丈夫か?」


「大丈夫だけど、置いてかないで欲しかったなー?」


「ごめんな」


「いーよ!」


そう言って、俺に抱きついてくる。うーん、これじゃあオークと戦えないね!うん、他の人に任せよっか!


「ら、ライト様は、いらっしゃいますか!?」


「エレオノーラ嬢、それは後で良くないか?」


なんかもう既にライトと会おうとしているエレオノーラについつい、ツッコんでしまう。


「あ、はい……」


その後あーだこーだみんなで言っていたが、オークに関してはレントとディアナとシルフィード、アルがやってくれた。いやー、うん。瞬殺だったね。なんで街道に出てきたのか知らないけど、どんまいって感じ。


「倒し終わりました!?ライト様!ライト様に会わせて下さい!」


「あぁ?ライトに会いたいだぁ?自分で馬車のとびら開けてあってこいや」


「どの馬車ですか!?」


「あれだ、あれ」


面倒くさがったレントは自分で会いに行けと、前から2番目に位置する馬車を指さす。


そして、エレオノーラはそのまま馬車の方へ行ってしまった。


「んで?なんでアニキが、こんな大勢連れて来たんだよ?」


「俺はまぁ、来る理由があったから来た。アルとディアナ、シルフィードは普通に連れてきただけだ。他にも護衛がいるとはいえ、お前一人じゃ、さすがに手薄かなと思ってな」


そう、実際、近衛騎士団や近衛騎士ではない普通の騎士団から20名ほど連れてきていて、戦力としては申し分ない。むしろ多すぎると言っていいだろう。


「いや……むしろ多いと思うが」


レントも同じ意見だったらしい。


「まぁ建前だ。少しお前らの行軍が遅いのでな。手助けに来た」


「なっ!まじかよ!?助かるぜアニキ!いやぁ~、もう3日も経つのにまだ帝国領なの信じらんないぜ」


そう言って嬉しそうにするレント。こういうところを見ているとやはり子供らしい。


「俺は作業するけど、シャルは?」


「……邪魔にならないなら一緒に行きたいな」


「よし、一緒に行こう」


少し遠慮がちに言うシャルを伴い1番近い馬車の元へ行き、荷に手を置く。


重力操作・軽グラビティ


そう、今回使うのはものを軽くする魔法だ。実際、地面にくい込んでいタイヤが少し浮いている。これで馬への負担が減りより早く動くことができる。それに、休憩もとる時間と回数が減る。


「こんな魔法もあるんだ。すごいね」


「ありがとうな」


そのまま次に近い馬車へ向かう。そこではエレオノーラとライトが話していた。数日程度時間が開いたからか2人の様子は少しぎこちない。


いや~わかるよ。ちょっと話さないとぎこちなくなる時あるよね。


「あ、兄さん、今回はありがとう」


「構わん、ついでだ」


2人のイチャイチャに水を指すのは気が引けるのでさっさと終わらせて次へいく。


「ふぅ、これで終わりだ」


10数個の馬車に魔法をかけたので、かなり時間がかかってしまった。


「お疲れ様。はいこれ」


そう言ってシャルは土魔法で作ったであろうコップを渡してきた。中には水が入っている。そしてそれを口へ運ぶ


「これは……シャルが全部やったのか?」


「うん!」


水を入れても形を崩さず、泥となって中に染み込む訳でもない。口をつけても形を維持し、唇に土が付く訳でもない。普通にすごいぞこれ。これくらいは少し鍛錬すればできることだが、7歳にしてこれは凄すぎる。


「うん、美味いな」


そう言ってシャルの頭を撫でる。


「えへへ~、ありがとう!」


それなら、と思い、俺も土魔法でコップを作り、水を入れる。


「じゃあ、頑張ったシャルにこれをやろう」


「ふふっ、ありがたくちょうだいするわっ」


俺の口調から少し察したのか、俺のくだらないノリに着いてきてくれるシャル。


「んっ、これ!氷が入ってるわ!」


そう、氷魔法で氷を入れておいたのだ


「冷たくて美味しいだろ?」


「うん!美味しい!」


そう言ってニコッと笑う。

うん、俺はこの笑顔が見れただけで嬉しいよ。


「もう終わったか?終わったのならもう行きたいのじゃ」


「そうだな、行こうか。シャル」


「うん!」


少し休憩をしていると、アルから急かす声が聞こえたので、アル達の元へ急ぐ。


ここからは箒に乗るメンバーが変わる。俺シャル、ディアナ・シルフィードは変わらない。エレオノーラがライト、ジーク、レントとおなじ馬車に乗るらしい。まぁ、1番デカい馬車使ってんのに、1番人数少なかったし、平気だろ。


アルは箒に乗るのをやめ、ヴォルを抱えて自分で空を飛ぶらしい。


その姿を見たシャルが「わたしも」と言いたげな顔をしてきたので、俺はシャルをお姫様抱っこの形で空を飛ぶことにした。


「それじゃあ、スピードアップして進んで貰っていいですか?」


「は、はい!かしこまりました!」


俺が先頭馬車の御者にスピードアップのお願いをすると了承してくれた。


「よし、それじゃあ行こうか」


「はい」

「はいっス」

「わかったのじゃ」

「キュゥン」

「れっつごー!」


ヴォルとシャルがかわいい返事をしてくれたので俺たちはそのまま上昇する。そして馬車組は先程のスピードの3倍程の速さで進み始めた。


※あとがき

遅れてごめんなさい。

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