第107話 お出迎え
side:Charlotte von Weiss
「魔王との会談を終えてリュートくんが帰ってくるそうですよ、お義父さま」
リュートくんから連絡を受けた私はリュートくんの父、皇帝陛下にそのことを伝えた。
「そうか。それにしてもあいつは便利な魔道具をどんどん開発するな。その魔道具は軍で普及させればよりこの国の軍事力は増すだろうな」
「そうですね。しかし、このようなものがリュートくんが元いた世界では当たり前のように普及していたと考えると、この国の文明の発展はまだまだ見込めそうですね」
「そうであるな。ここから魔王城まで約3日と言ったところか。帰りではもう少しゆっくりのスピードで帰ってくるとして、4日ほどであるな」
そう、単純に考えれば4日ほどで帰ってくるだろう。しかし、あのリュートくんだ。転移魔法で帰ってくるに違いない。でも、リュートくんだもんなぁ。転移魔法のことすら忘れてそのまま帰ってきそうではあるんだよなぁ。
「そうですね。しかし、リュートくんですし、帝都まで一気に転移してくるかもしれないです。とりあえず、私はリュートくんが来るであろう場所に待機していますね」
私はお義父さまの執務室を出ようとする。
「少し待て、北門へ行くのであろう?1人では危ない。護衛をつけよう」
お義父さまはそう言って、少し待機するように私に言う。そして、近くにいた使用人に手紙を渡した。
――トントン、ガチャ
数分たったところで、執務室の扉が開いた。
「失礼致します!シュレイヒト・フォン・クリヒカイト参上致しました!」
シュレイヒトさん!リュートくんから話は聞いてたし、見たことはあるけど、話すのは初めてかも!
「はじめまして!シャーロット・フォン・ヴァイスです!」
「……ヴァイスってヴァイス公爵家のご令嬢様ですか!?」
「うむ。実は今日はその者の護衛をしてほしくてな。護衛を何人も付けるのは簡単なのだが、それだと目立ってしまう故、なんでも器用にこなすソナタにお願いしたいのだ。頼めるか?」
「はい!お任せ下さい!」
シュレイヒトさんは元気よく返事をした。
「それじゃあ、行きましょう、シュレイヒトさん。失礼します、お義父さま」
「はい!」
「うむ」
◇
「シュレイヒトさんって、宮廷魔法師団では第4席なんですよね?」
「はい、陛下から第4席の位を受け賜っていますよ」
私はシュレイヒトさんを伴い、馬車に揺られながら北門へ向かっている。
「ほんとに興味本位なんですけど、第3席の方と、第5席の方と、どれくらい実力差があるのですか?」
そう、1度リュートくんに同じ質問をしたことがあるが、第3席以降の人達に興味が無いらしく、分からないと言われてしまったのだ。そこで今回はシュレイヒトさんに聞いているということだ。
「そうですね、第3席の方はワンダー・スタームさんと言って、エルフの方なんですけれど、ものすごく風魔法が得意なんです。宮廷魔法士なんて、何か特別に尖った才能がある人が多いんですけど彼女は別格ですね」
「へぇ~、シュレイヒトさんでも勝てないんですか?」
「えぇ、私の魔法は全て彼女に相殺されてしまいます」
「凄いですね…でもそんな方でも第3席なんですよね。確か、
私は頑張って記憶を掘り起こす。
「まぁ、そうですね。その上のふたりがさらに別格なので……」
シュレイヒトさんは遠くを見ながらそう語る。第2席に座るリュートくん、恐るべし!
「じゃあ、じゃあ、第5席の方はどうなんですか!?」
「えぇ、彼は水王の称号を持っていまして、ウェイサー・フォン・カレンベルクさんなんですけど、彼の水魔法は強力ですね私よりも凄いです」
「え?シュレイヒトさんより強いのに第5席なんですか?」
「水魔法だけで見れば、です。全体的な強さで言えば私の方が強いですよ。宮廷魔法士団の団長たち局所的に才能を開花させているんです。ワンダーさんなら風魔法、ウェイサーさんなら水魔法。私は全体的にバラけてしまして、全ての能力が中途半端なんです」
「なるほど、総合的な観点から見て決めるんですね」
それなら納得だが、リュートくんが第2席にいるのが納得いかない。彼なら第1席にいてもおかしくないのに。
「そうですね。他の団長たちは自分の長所では常に1番手であり続けますが、私は全ての観点において2番手です。まぁ、いわゆる器用貧乏というやつですね。ですが、私と同じスタイルの殿下は全ての点において全ての師団長より格が上なんです。あのお方は化け物かなにかでしょうか?」
「私は、あまり魔法のことに関して詳しくないですけど、シュレイヒトさんがすごい人って言うのは分かりますよ。いつもリュートくんがシュレイヒトさんのこと褒めてますもん」
「えっ!?殿下が?」
そう、リュートくんは簡単に言えば、シュレイヒトさんの上位互換だ。そんなリュートくんの下位互換であるシュレイヒトさんが第4席に座れているのは彼女の実力が認められているからだろう。
「えぇ、リュートくんはシュレイヒトさんと同じく、満遍なく色々なものを武器としています。そんなリュートくんはあなたの事をすごく褒めていました。とある一点で見れば、他の師団長よりも劣っているけれど、全てを見れば、その実力は師団長の中でも上位だと」
「それは、とても嬉しいものですね。これからも頑張りたいと思います」
「えぇ、っっと、到着したようですね」
目的地である北門へ来ると、私とシュレイヒトさんは馬車から降りる。
「どれくらいでリュートくんが帰ってくるか当てる勝負しません?」
「……いいですよ?確か転移の魔法を使って帰ってくると予想しているのですよね?」
「はい。ちなみに、帰る連絡が来たのは30分ほど前のことです」
公正な勝負をするため、正確な情報を渡す。
「それでは……、5分くらいでしょうか?」
「では、私は30分で」
「そんなかかります?」
「リュートくんの事だし、多分転移魔法のことを忘れてるんだと思います。それで思い出すために30分くらいかかるかなと」
◇
――30分後
「「「「おぉぉ」」」」
「なーんで、気づかなかっ――シャル?」
「私の勝ちですね、シュレイヒトさん」
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