第100話 鬼に金棒。虎に翼。リュークハルトに自作道具。
side:Ryukhardt von Stark
ナットさんの元を訪れ、図書館に戻り、少し読書をした後、いつもどうりの一日を過ごし、迎えた朝。
「殿下~!出来ました~」
朝っぱらからナットさんがやってきたのだ。
――ガチャ
「おはよう、ナットさん。朝なのに早いですね」
「えぇ!出来たらすぐ持っていこうと決めていたので!」
扉を開け、そのまま会話をする。
「それで、どこにあるんだ?」
「あっ、これです!」
そう言いながらナットさんは服の内ポケットから包装されたものを取り出す。おそらくこれが手袋だろう。
「おぉ、ありがとう」
「はい!それでは、これで!」
それだけ言って、ナットさんは走って戻って行った。
「なんというか、最初とは随分雰囲気が違いますね」
「そうだな。ちょっと馴染みやすくなったって感じ」
「はい」
少し前に俺を起こしに来たクリアーダとナットさんの変化について話し合う。
「それじゃあ、付与魔法始めるか」
「退出した方がよろしいですか?」
「構わん。邪魔さえしなければ」
「それでは、近くで拝見するとします」
観客が増えちまったぜ。
俺は引き出しにしまってある付与魔法セットを取り出す。
さて、まず、今の俺には大きすぎるこの手袋がピッタリとハマるように、《自動調整》を施す。これはローブにも施した付与魔法だ。かなり便利なので愛用している。
そして、この手袋を依頼した本題。殴っても俺の拳が痛まないような付与魔法。
うーんと、衝撃吸収?殴った時にこちらへやってくる力を打ち消すという意味を込めて書けば……。なんか違うな。
それじゃあ、反力?反発力……。殴った時こちらへやってくる力を打ち返せばこちらのダメージを0にして相手への衝撃を増加させられるな。
《衝撃反転》だな。効力はこちらへ帰ってくる衝撃を相手に返すという力だ。殴った時って、殴った側も痛い。それはこちら側に向く力が発生するから。その力を反転させて、相手への衝撃を増加させる。
キタコレ。痛みを伴わず、どんな相手も倒せるぞこれ。それに、相手と殴り合いで、拳と拳が勢いよくぶつかるとき、俺からの力にプラスして、相手からの衝撃を反転して相手に向けられる。
相手の力が強ければ強いほど、相手は自分を苦しめる。最強だこれ。
あとは《魔溜》だ。そして、そう簡単に壊れないよう、《頑丈》も付け加えよう。
「ニヤニヤしているようですが、上手くいったのですか?」
「あぁ、すまん。上手くいきすぎて笑みがこぼれてしまった」
気付かぬ間に頬が緩んでいたようだ。
「どのような効力なのですか?」
「まずはこれ」
俺はそう言いながら自分の手のサイズより幾分かデカい手袋に魔力を流しながらはめる。
すると、ゴム手袋のようにピタッと、縮まった。
「この、勝手に大きさが合う付与魔法は凄いですね。いつ見ても不思議です。でも、それだけじゃないんでしょう?」
「あぁ。俺の手のひらに全力でパンチしてくれ」
俺はそう言いながら、手袋に魔力を流す。
「不敬罪なんかにしないでくださいね」
「するもんか。俺から頼んでるのに」
「それじゃあ……」
――パァン!
「―ッッ!~ッッ」
本当に全力で殴ったので、相当痛いだろうな。音も良かったし。
「どうだ?」
「痛ったいです!全力で殴れだなんて言うから身体強化まで使ったのに、なんですかこれ!」
「相手の物理攻撃をそのままそっくり返す付与魔法」
「反則じゃないですかそれ!」
うん。俺もそう思うよ。
「大丈夫?涙出てるけど」
「大丈夫だったら涙なんて出ません!」
そう言いながら涙を拭うクリアーダ。本当に痛そうなので、回復魔法をかけてあげる。
「そんでどうかな?これ」
「正直いって、反則級ですよ。こんなん使ってレオンハルト様と模擬戦なんてした日には彼の怒りを買うこと間違いなしです」
「そんなにか。じゃあ、レントとやるのはやめよう。アルとかとやろうかな?」
「ドラゴンの怒りを買うのも良くないかと……」
たしかに。でも、今の俺ならアル程度のやつなら簡単に倒せそうだけどね。確か、アルって原初のドラゴンとか言われるくらい強いレッドドラゴンなんだよな。そんなやつを簡単に倒せるとかほんとに化け物じみてるな俺。
「平気だ。そこまで本気で怒らないだろう。あいつなら」
「そうですか。まぁ、程々にしてください」
「はーい」
それだけ言うとクリアーダは部屋を出ていった。最近は料理人達に料理の作り方を教えてもらっているらしい。最近早めに起こされるのもそれが理由なのだとか。
てか、回復魔法かけた時に気づいたけど、クリアーダ、骨折してたよな……。封印対象か?この手袋。かなり危険な匂いがする。量産はやめておこう。
付与魔法を朝イチから頑張ったせいで、お腹がペコペコなので、朝食を取りに行くことにした。……したのだが。
「お、アニキ。でけぇ音してたけど、大丈夫か?」
「あぁ、問題ない。また一段と強くなっただけだ」
扉を開けると、レントも同じタイミングで部屋から出てきたのか、はち合わせたのだ。
「この短時間でどんなことしたってんだ……。後でオレと一戦してくれ」
「遠征から帰ってきたらな。かなり危ないものを作っちまったから。魔王で実験してからだ」
「そんなやべぇの作ったのかよ」
ドン引きしたような目で見てくる。
「あぁ!やべぇの作った!」
「嬉しそうに言うところじゃねぇよ。まぁわかった。とりあえず約束な」
「おう」
とりあえず、2人で朝食を食べに行くことにした。
◇
※あとがき
こんにちは。88話のあとがきにて、少し語弊があるので説明します。完結させると言ったのですが、すぐにではなく、ちゃんと完結はするから安心してくださいってことです。勘違いさせてしまった方々申し訳ありません。
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