第78話 爆弾混じりの挨拶
◇
―2週間後
シャルの誕生日がついにやってきた。
そしてつい昨日シャルへの誕生日プレゼントが完成したのだ。作ったのはペンダント。
ペンダントは以前、婚約をした際に1度贈った。しかし、その性能はあまり高くないためこの際新調しようと考えたのだ。ちなみに前回贈ったペンダントはブレスレットに改造しようと考えている。
それじゃあ今回はブレスレット贈った方がいいじゃないかって思うかもしれないが、手間がかかっている方が愛着が湧くってもんだ。
「よしっ。完璧だ」
俺は鏡の前に立ち、今日着ていく服を着て、確認をする。
「そこまで確認する必要は無いと思うのですが……」
「クリアーダが言いたいことはわかる。プロが選んだ服だから間違いないって言いたいんだろ?」
「はい」
「プロの感性と一般人の感性は全然違うんだよ。最後は自分で確認しときたいもんなんだよ」
前世の有名ファッションショーなんかで、こんなんがオシャレなのかよ!?、みたいな服が沢山あったからな。中には、服にと呼ぶには何かが足りないような服まであったし。最後は自分の感覚になってしまうが、特殊な服装じゃなければ誰も文句は言わないだろ。
「そうですか。今回も赤色なんですね」
「まあな」
今回俺が選んだのは赤を基調としたバニヤン。普段着る服は黒か青が多かった。正装は赤系統が多い気がする。でもちゃんと採寸して作った正装は7歳の記念パーティーで着た時以来だろうか。
叙爵や謁見の時は細かな採寸はせず、予備として持っていた正装や控え室にあったものを使っていたりした。
「まぁ、そのお顔ならどんな服でも似合いそうですけどね」
「ありがたいことを言ってくれるな。しかし婚約者の誕生日パーティーで下手な服装は出来ない」
「ふふっ、わかっていますよ」
分かってるなら最初から言うな。
「それじゃあ行くか」
「はい」
今回、シャルの誕生日には父上、母上、俺が招待されている。俺の付き添いとしてクリアーダも同行するが。
今回はシャルの誕生日だから皇族からは3人しか招待しなかったが、公爵家現当主のスーナーさんの誕生日となれば皇族全員を招待することもある。
尤も、関わりのない皇族を呼ぶ訳には行かないが。
パーティーが開催されるのは夕方頃から。なので、日課のトレーニングは済ませている。
◇
「リュートちゃーん?準備は出来てる?」
「はい、出来てます」
出発の時間になったのか、母上が部屋の外から俺を呼ぶ。
クリアーダや他の護衛のものは既にヴァイス邸に向かっている。
城の外に出ると、馬車が用意されていた。
「これに乗って行く」
「分かりました」
俺が返事をすると父上が母上をエスコートしながら馬車に乗る。
「あら?嬉しいわっ。ありがとう!」
そう言われた父上は満更でもなさそうな表情を浮かべている。
「イチャイチャするのは息子が居ないところでやってください」
そう言いながら俺も馬車に乗り込む。
馬車の中はとても快適だった。なんと言っても止まるタイミングと走り出すタイミングが分からないのだ。全く揺れていない。
馬も質が良く、御者も良いのを雇っているらしい。相当な腕だ。
「これはすごい御者ですね。どうやって育てたんですか?」
「育てた訳では無い。元々技術を持っているものを雇っただけだ」
「リュートちゃんも最近凄い娘を見つけたんでしょ?」
「そうですね。今回はいい収穫をしました」
「その辺はちゃんと受け継いでいるのねぇ」
そう言って母上は俺の頭を撫でる。
「恥ずかしいのでやめてください」
「あら?釣れないわねぇ。誰もいないからいいじゃない?」
あぁ、ダメだこりゃ。諦めるしかないらしい。
そんなことを思っていると馬車の扉が開いた。
「陛下、殿下方、着きました」
いや、本当にすごい。馬車が止まったことにすら気づかなかった。
「ご苦労だった」
「お疲れ様ぁ。ふふっ」
「ありがとうございます」
俺たちは御者に労いの言葉をかけ、馬車を出る。そこには執事に扮した騎士2人とクリアーダがいた。
騎士は父上と母上の護衛。クリアーダは俺の付き添い。俺に護衛は必要ないとのことだ。
「お待ちしておりました。他の貴族たちは既に集まっています」
騎士のひとりが言う。
「わかった」
父上はそう言うと、公爵邸に足を踏み入れ、どんどん進んでいく。ドアも開き、玄関の前の階段を上がると大きめの扉がある。恐らくこの向こう側がパーティー会場だ。
――ガチャ
例のごとく勝手に扉が開く。中は大きめのホール。扉との対辺の所に壇上があり、そこにドレス姿のシャルと正装のスーナーさん、これまたドレスを着たシャルの母が座っていた。
「陛下だ」
「妃殿下様ですわ!」
「第3皇子殿下もいらっしゃる!」
「魔帝様だ!」
「シャーロットさんの婚約者と噂の!?」
「
登場した俺たちに向け、色々な声が聞こえる。
こういうパーティーは位の低い者から登場し、皇族なんかは最後だ。シャル達は公爵家の人間だが、招く側の人間なので恐らく一番最初に入場しているはずだ。
しかし、こうも注目を集めるのは悪いかがしないな。
「リュートくん!待ってたわ!」
「「リュッ――ッ、!?」」
あーあ。
その場にいた貴族達はシャルに流され「リュートくん!?」と反射的に言いそうになったが、そんな愛称を呼べる訳もなく、堪えた結果、リュッ、で止まったらしい。
俺は2歩ほど前に出て先頭を歩く父上の前に立つ。
「この度はご招待頂きありがとうございます。今日は楽しいパーティーになるといいね、シャル」
「「シャッ――っ!?」」
パーティーは俺とシャルの爆弾発言から幕を上げる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます