第69話 意外な人材
「おい、なんでレントが正装に着替えてるんだよ?」
謁見の準備が出来たとのことで、父上は謁見の間へ、シャルはスーナーさんと出席すると言うことで、シャルとスーナーさんも謁見の間にいる。
そして、ジークやライト、シンシア、母上や義母上も皇族として参加する義務があるので父上の隣の席の皇族席にいるはずだ。
そして1番の疑問であるレントの正装。
「あぁ?知らねぇよ。親父が着ろって言うから。オレもジークの兄貴達とゆっくり座ってたかったぜ」
レントは正装だが、俺は宮廷魔法師団の隊服で出席することにした。
今は綺麗な隊服に着替えたので謁見の間にレントと向かっている途中だ。
「俺がいない間なんかすごいことでもしたん?」
「いや、してねェな」
「まぁ、いい事であるのは間違いなさそうだな」
「あぁ」
叙爵か?でも、何もしてないって言ってたし……。そういえばラウトも今回謁見するって聞いたな……。それと関係があるのか?
「まぁ、あと数分もすればわかるし、いっか」
「そうだな」
そして、謁見の間の扉の前まで来た。
そこにはオレンジのマントを羽織ったラウトがいた。
「チッ」
「おうおう、舌打ちなんて治安わりぃなぁ?」
「やめろ」
こちらを見らや否や舌打ちするラウト。それを見て喧嘩を売るレント。それを小声で宥める俺。頼むから平和に行こうぜ。
「お揃いですか?それでは入場してもらいます」
「ああ、わかった」
扉の前にいた使用人の人に声をかけられ承諾する。
そうするとその使用人は扉を3回した。すると、両開きの扉が自動で開く。
「
長い長い紹介で入場する。
俺が叙爵した時のように真ん中は空いていて、サイドに貴族たちが並んでいる。その貴族たちは拍手をして、俺たちを迎える。先頭にラウト。その後ろに俺とレントが横に並んでいる。
「な、なぁ――」
「喋んな」
入場しながら小声で何か言おうとしたレントに注意をする。この場で喋るのはご法度だ。
父上の前まで来た俺たちは揃って膝を着く。
「楽にして良い」
父上の言葉で俺たち3人は立ち上がりその場でピンと立つ。
「まず、此度の精霊王討伐誠に見事であった」
「ハッ、ありがたき幸せ」
「そして、新たなる精霊王との精霊契約並びにリュークハルト自身の種族進化をここに宣言する」
「種族進化?」
「あの、種族進化か?」
「人では無くなったと言うことか?魔物の類か?」
周りの貴族たちからザワザワとした声が立つ。
「静かにせんか。これは誠にすごいことぞ。リュークハルトは魔人族へと進化し、更に魔法の腕を上げた。そして、精霊王との契約。これでこの国は安泰だ。何が悪い?」
「た、確かにこれで王国を……」
「これで我が国は最強だ」
「しかし、魔族と何が違うのか?」
「ふむ、今挙がった魔族との違いについて説明しよう」
そこから父上は魔族と魔人族の違いを説明した。
魔族は魔王の治める土地に住む種族のこと。魔人族は人族が進化し、成る種族であること。そして全ての魔法の称号を帝位にする必要があること。
これは俺が事前に父上と打ち合わせしていたことだ。
「なんと、帝位を所持するだけですごいと言うのに全てを帝位にするとは」
「それはもはや魔王より強いのでは?」
「魔帝様の誕生だ」
「「「魔帝!魔帝!魔帝!」」」
「静粛に!」
すると、うるさかった魔帝コールが止んだ。
「今回の件を受け、リュークハルトを伯爵位に陞爵、勅任武官に任命する」
「妥当だな」
「勅任武官はやりすぎでは無いか?」
「それに見合った力は持っているはずだ」
「まぁ、妥当だな」
陞爵の件は誰も反対はしない。勅任武官の件は5:1くらいで賛成派が優勢だ。
「慎んでお受け致します」
「うむ。では次だな。ラウト・フォン・フラウアーを宮廷魔法師団から除名する。理由としては……分からない者はいないだろう。もし分からない者がいれば、後日城まで手紙を届けよ。丁寧に対応するし、罰っしもせん」
「なんと」
「なっ」
「これは…」
「英断だ」
まじか。確かにラウトの言動は目に余るがそこまでか?
「ぐっ、。しょ、承知しました」
そう言ってラウトは1歩下がる。
「そして空いた
「第4殿下が?」
「彼は武闘派だろう?」
「魔法は使えるのか?」
「由緒ある宮廷魔法師団に魔法を使えない者が入るとは……」
「貴様らちと煩いぞ?7歳児でも静かにしていると言うのになんという醜態だ。改めよ。レオンハルトは炎王の称号を持っている。宮廷魔法師団に入るには十分過ぎるだろう」
確かにレントは炎系の魔法は使える。しかし王位を得るほど熟練していたのか?
「……」
レントの方を見ると放心している彼の姿が目に入る。
「おい、返事を早くしろ」
レントを小突きながら小声で言う。
「つ、慎んでお受け致します」
「では今回の謁見は終了だ。何か異議申し立てがあるものは後日手紙で城へ。それでは」
そう言って父上は早々に退場する。退場し終わると、他の貴族たちも退場し始める。
数分後にはそこには放心したレント、ラウトの姿とそれを眺める俺の姿だけが残った。
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