第68話 報告
――ドンドンドンッ!
撃たれた魔法にリタが的確に撃ち返し、相殺し、爆発が起きる。
「主様に向かって殺意のある魔法……。許せなぁい゛!」
リタがガチギレした。精霊王になったリタはもちろん、全ての魔法を使えるようになり、上位精霊の時とは別格の力を手にしている。
「え?え?キャラ変わった?え?」
「キュゥ?」
「死ねぇ!――イタッ、え?主様?」
狂ったリタにチョップを食らわす。
「バカか。俺たちの魔力がデカすぎて勘違いして撃っできたんだろうよ」
実は俺もなんで撃たれたか分からなかったが、アイが教えてくれた。確かに、桁違いの魔力を手に入れたので、魔力感知器で感知するとえっぐいバケモンが来たと思うし、仕方ないだろう。
「ハッ、なるほど!主様の存在感が大きすぎて人間たちからは怪物が来たとでも思われてしまったんだわぁ!」
「怪物なんて言うな。俺は人間だ」
「精霊王をぶっ殺した人を怪物以外のなんと呼ぶのかしらぁ?あ、主様はもう人族ではないでしょう?」
「お前、殺されたいのか?」
「じょ、冗談ですわよぉ!ま、まあ、魔人族になったとしても一応人なので、せ、セーフ的なぁ?あは、あははは」
こいつ煽ってるだろ?最後の乾き笑いなんて完全にバカにしてるよ。こいつ。
「ハイハイ、わかったよ。って、また撃ってきやがったな。速攻で距離詰めて説明させてもらうか」
俺とリタ、ヴォルは魔法を撃ってきたであろう場所まですごいスピードで迫る。
その間に撃たれた魔法を華麗に躱して。
「撃ッ――」
「ストップだ!あれ、アニキじゃねぇか?」
魔法の発射地点の方に近付くと、父上の発射の合図をレントが遮るところだった。
父上と、レント、ラウトを除く宮廷魔法師団長が帝都を囲む壁の上に立っていた。
取り敢えずそこに着地して片膝をつき頭を下げる。
「ただいま戻りました。精霊王を討伐、アマンダの首を回収し、帰還しました」
俺の頭の上にヴォルが乗っているのは気にしないか、誰にも見られていないとはいえ、リタは凄い形相で父上たちを睨んでいる。
「……よく帰った。して、本当にあの精霊王を討伐したのか?」
「はい、精霊王討伐し、新たな精霊王と契約。また、私自身、人族より進化し、魔人族になりました。魔力量か10倍程に上がったため、魔力感知器からは人外か来たと勘違いを与えてしまったかも知れません」
「うむ、一応、まだ各国に通達は出していないから平気だ。しかし、精霊王を討伐したということは各国に知らせねばならん」
実はアマンダの死刑執行の現場に各国の大使館に務めている大使が居合わせたことからおそらく各国には精霊王の恐ろしさというのは伝わっている。なのでその不安を和らげるためにも知らせる必要があるらしい。
「おいアニキ、精霊王と契約ってなんだよ?」
父上がスルーしたところをレントが詰めてきた。
「精霊視を使ってみろ。視えるだろ?そいつが新たな精霊王に就任したリタだ」
俺がリタを紹介すると、
「新しい精霊王様誕生を嬉しく思います。――シルフ」
と、思ったらリタの前でひざまつき、彼女が契約している風の上位精霊のシルフを呼び出す。
「エルフの子よ、そこまでせずとも良い」
リタの口調がいつもと違う……なんか上に立つ人みたいな感じがする。
「ルミニス、いや、今はリタと言う名前だったわね。精霊王就任おめでとう。心から嬉しく思うわ」
ルミニスというのはリタの前の名前だろう。ここに来る前に聞いたが、リタは元々光の上位精霊だったが、元・精霊王に瀕死に追いやられ、下位精霊にまでなってしまったらしい。
「し、シルフ!精霊王に様に無礼だぞ!」
「良い、シルフとは上位精霊の時からの同僚だ。今更態度を変えられたら気持ち悪い」
「そ、そうですか」
ワンダーさんの言葉をバッサリ切ったよこの人。
「ここにいてもなんですし、城に戻りません?」
「……そうだな。一度会議室に戻り、その後謁見するとしよう。おい」
俺の提案を父上が承諾し、近くにいた護衛に声をかける。
するとそこ護衛は、ハッ、とだけ言い、城に走っていった。おそらく、謁見の準備でもするのだろう。
◇
――会議室
「――という訳です」
あの後馬車で城に戻りそのまま会議室へ直行。その間にシャル達と会ったが先に報告だけ済ませたいとだけ伝え、待っててもらっている。
「なるほどな。大変な任務ご苦労であった」
「ハッ、身に余る光栄」
父上からお褒めの言葉を受け、椅子から立ち上がり跪く。
「なぜ主様が人の王に跪くのですか?主様の方が絶対的な力を持っているのに」
精霊視を使わなくても見えるようにしてくれているリタが疑問を口にする。
「やめろ。人間はそういうもんだ。上の者に下の者が跪く。それだけで恩恵が得られる。簡単な仕組みだ」
「……人間とは愚かですね」
「安心しろ、俺が跪くのは父上だけだ」
やはり精霊と人は価値観が違うらしい。
「そうですか。まぁ、それなら許容範囲です」
「あっそう。それより口調戻さないの?」
いや、ずっと気になってたんだよね。
「なんのことでしょうか?私はいつもこうですよ」
「あっ、なるほど了解」
あの喋り方は俺とふたりの時だけらしい。
――ガチャ!
「終わりましたか!?」
「こ、こら!シャル!ダメじゃないか!」
報告か一通り終わると勢いよくドアが開かれそこからシャルとシャルを叱るスーナーさんが出てきた。
「リュートくん!やっとお話できるね!」
「お、おう。そうダナ」
俺に抱きつき好き好きオーラを放つシャルに圧倒され、カタコトになってしまう。
「ごほん、あと30分ほどで謁見の準備が整います」
「うむ、心得た。リュート、準備するように」
「ハッ」
スーナーさんから報告を受けた父上から準備するように言われた。
――この後時間ギリギリまでシャルとイチャイチャした。
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