第66話 新戦力
再び上位精霊へとなった精霊と精霊憑依をし、精霊王と相対する。
「ふっ、上位精霊如きが、人間に憑依したところで我にかなうわけがあるまい」
「ほざけ雑魚。今の俺たちの存在感を正常に認識出来ない時点でお前は負けている。それともあれか?負けを認めたくないから自分に言い聞かせてるだけか?ん?言ってみ?」
あえて、挑発するように発言する。こうするとで精霊王の気を紛らわす作戦だ。
「ッ!人間の分際でェェ!――カハッ」
「ほーら。言わんこっちゃない」
叫び、威嚇する精霊王に軽くボディーブローを入れる。そのまま殴っても物理系は効かないらしいので、拳に魔力を纏わせ、戦っている。対精霊戦に有効な魔法物理だ。
「グッ、人間が、精霊に、ましてや精霊王たる我に勝てるはずがない」
「いいから、認めろよ。今、降参するなら痛みを味わうことなく死ねるぞ?」
「我が、我が人に負けるはずなどなァーーイッ!死ねェ!
瞬間、精霊王から細く、密度の高い、
うおっ、油断した!いきなり
「キュゥ!」
俺が反撃の姿勢をとろうとした瞬間、ヴォルが精霊王が放った、
――ジュウッ
そんな音と共に目を開けると、そこには平然と飛んでいる小さいドラゴンの姿。ヴォルだ。あの魔法を受けて、ノーダメージと来た。アルが、俺にヴォルを持たせた理由がよくわかった。こいつ、どんな魔法も無効化するらしい。
「ヴォル!大丈夫か?傷はないか?これで寿命減るとかないよな?」
「キュゥン!」
駆け寄り、ヴォルを抱きしめ、まくし立てる。すると、大丈夫だよ!と言わんばかりに元気な声を上げる。
「なら良かった。これは俺とあいつの戦いだから少し離れたところで見守っててくれ」
「キュゥン!」
わかった!と言わんばかりの返事をした後、50m程離れた所へ飛んで行った。
ヴォルと、ヴォルを連れていくよう言ってくれたアルには申し訳ないが、これは俺とあいつの戦いだ。上位精霊の力は借りてもヴォルの力まで借りる訳にはいかない。
「いいことを思いついた。精霊王、
精霊王が放ったものを見るに、俺と同じくらいの密度であった。
「いいだろう。貴様の水、土、闇魔法は大したものであった。しかし、光魔法まで巧みに操れるとは思えん。我の勝利は確実なものになった」
「自惚れんのも大概にしろよ?さっきからキモイんだよ。いつまで上から目線なんだ?虚勢ばかり張っていても勝てないぞ?」
「あるさァい!」
俺の煽りに精霊王はすぐに右手で
本当ならここで俺も打ち返したいところなんだが……。
思考加速を限界まで強め、冷静に見極める。体感時間で5秒ほど。実際には0.1秒にも満たない時間の中、精霊王の
「ハッ!」
せっかくできた時間を技名などで無駄にすることなく、
精霊王は手の平から
――決まった。
そう思った瞬間、精霊王の左の手の平がこちらを向いた。右手は正面を向けたまま、左手は脇を通して。
まじか!これに反応する!?ってか、読まれてた?右手のはダミー?
そして、俺の
「転移する時に真後ろに行くのはナンセンスであるッ!」
クッソ!そういうことか!普通に読み負けただけかよ!
両者の
いや、でもこれなら、このまま出力あげて、一気に押し切れる!
そもそもあいつの内包魔力減ってなくね?俺、後4割程度しかねぇんだけど!このままだと魔力欠乏症になる!なんで減ってないんだよ~!!
『おそらく、精霊特有の同化かと』
『同化だと思うわぁ』
『同化、ね。どういう能力なんだ?』
『は?』
『ん??』
『おい、2人とも早く教えてく……精霊憑依してるとアイと上位精霊会話できるん?』
『そのようですね。まぁ、
『な、何よぉ!私だって主様のためになってるんだからぁ!』
『いやうん。わかった、わかったけど、同化の能力教えてくれ。アイ』
『ふふっ、わかりました。簡単に言えば同化とは、空気中に含まれている魔素をそのまま体内魔力として取り込む技法です。魔人になった
魔力とは、空気中にある魔素を呼吸によって取り込み、体内で魔力に変換する。おそらく同化は、この一連の流れで呼吸の部分をとっぱらい、ダイレクトで魔力に変える技だろう。
『なるほどな。じゃあ、上位精霊、できるか?』
『そ、それくらい簡単ですわぁ!』
『じゃあ、よろしく頼む。俺は
『もちろんですわぁ!』
すると、一気に魔力が戻ってくる感覚がする。魔力量を気にしない今ならもっと出力をあげられる。
精霊憑依中は同化を使う係と魔法を行使する係で分けられるのがいいな。
アイは今の俺なら同化することができると言っていたが同化と魔法を同時に使うことはできなさそうだ。精霊憑依、今後も愛用しよう。
「ナ゛ッ!」
俺の魔力が戻り、先程までセーブしていた力を一気に解き放つ。
「これで終わりだァ!」
遂に同化での回復量を上回る出力で一気に畳み掛ける。精霊王の方は同化の方に力を割きすぎて
「グッ、人間の分際でェ!」
俺の
「おっけい。憑依を解除しよう」
俺の指示に従い、上位精霊が精霊憑依を解除する。
俺から憑依を解いた上位精霊の存在感が先程よりデカイのは気のせいだろうか?
「……なんだか力が湧いてくる気がするわぁ」
◇
名前:無し
年齢:1202
種族:精霊王
状態:余韻嫋嫋
◇
こいつ、精霊王に勝ったことと精霊王になったことの余韻に浸ってやがる。確かにどこか恍惚とした目で自分の体を見ている。
「そういえば、名前だったな」
「!!覚えてくれていたんですか!?」
「もちろんだ。働きに見合った報酬は必要だ。まぁ、名付けがそれに見合う報酬かわからんが」
「う、嬉しいですわぁ!これ以上ない喜び!さあ!早く!名前をください!」
名前考えるの正直疲れるんよな。ヴォルの名前はかなり難しかったし……、
「リタ、なんてどうだろうか?」
「リタ!いいですわぁ!ありがとうございます!主様!」
◇
名前:リタ
年齢:1202
種族:精霊王
状態:余韻嫋嫋
◇
よし、これで一件落着だな。
◇
side: Leonhard Von Stark
アニキが出発してから1日弱が経った。一応、期限は十日だと父上が言っていたが、アニキの魔道具なら既にヤツの元へ着いているだろうし、戦うのに何日もかからないはず。なんなら、もう決着が着いいててもいいくらいだ。
「あんなバケモンに勝てるわけねぇだろ?俺は降りるね。あとは他の連中で頑張ってくれ」
そう言って宮廷魔法師団第10席の名前は知らんオレンジローブがそう言って会議室を後にする。
親父に言われてこの会議に参加しているが、魔法使いじゃないオレがなぜこの会議に参加しなきゃならねぇんだ?
「潮時だな。彼奴の行為は目に余る。解雇を考えても良いな」
「そうしますと、ひとつ席か空きますね。
青いローブを来たやつが言う。大人ってみんな、アホくさいんだな。派閥争いなんてくだらねぇ。
―ダダダダダダ
ん?足音がでかくなるな。
―ダダダダ
誰だ?
―ガチャ
「北方より、強大な魔力を感知!皇帝陛下より指示の御言葉を頂きたく!」
北方、アニキが向かったところ。精霊王。……アニキか負けた?
「リュークハルトでも勝てない、か。各国へ通達する準備をしろ!ここに居る者達でヤツを叩き潰す!」
「「「ハッ!」」」
くそっ、アニキ!何やってんだよ!
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