第62話 ラストピース
――キィィンッ!
なにか硬いもの同士がすごい勢いででぶつかり合った音がし、ギロチンの刃が砕け散った。
数秒でアマンダの身体の発光は収まる。
ちなみに、俺たちはアマンダの前からこの刑を見守り、他の国民達は両サイドや後ろ側から見守っている。
幸い、刃は折れたとかではなく、その場で砕け散ったので誰かに飛んでいくなんてことは起こっていない。
「貴様か?我の討伐を企てている輩は」
アマンダが顔だけ俺の方を向いて喋り始める。アマンダの一人称は
ミシッ!バキバキバキ!
突如アマンダを拘束していた木製の拘束具が音を立ててアマンダを中心に崩れ落ちる。そしてアマンダが立ち上がる。
「お前は誰だ?」
「まだ分からんか。人間も堕ちたものだな」
俺の問いに答えず、一方的にバカにするアマンダの皮を被ったナニか。
神眼:鑑定!
◇
名前:無し
年齢:1202
種族:精霊王
状態:憑依中
◇
精霊王……?精霊憑依か!精霊憑依とは、精霊と契約した者と精霊が合体する技だ。精霊は精神生命体で実体が無いので人間に憑依することで一時的に受肉する。通常、精霊憑依中ほ意識は人間と精霊の半々だが、アマンダと精霊王の意識の割合は0:10だろう。
「なぜお前がここにいる?わざわざやられに来てくれたのか?」
「くっくっくっ、やはり鑑定持ちか。ドラゴンを手懐けている点と言い、魔法の才能と言い、貴様、使徒か?」
「使徒?なんだそれ。それよりなぜお前がここにいるのか答えろ」
使徒とは神の使徒の事だろうか?称号の所にそんなこと書いてないし、一応、この世界の文明を発展させるという使命的なのは課せられてるし、使者なのかもしれないが、「君は使徒だよ」なんて一言も言われてないし、使徒じゃないだろう。
「答える必要は無い、が、教えてやろう。我は偉大なる精霊王だッ!我の前に立ちはだかると言うならば、例え使徒であろうと、容赦はしない!まぁ、我直々に殺されるか、崩れゆく現世と共に死ぬか、選ばせてやろうでは無いか」
なんと傲慢なことか。精霊王は俺に勝つことしか考えていないらしい。かくいう俺もそうだが。
「お前、俺に勝てる前提で話を進めているが、大丈夫か?殺される間際になって命乞いしても助けんからな?」
俺は最大限の挑発をしてやった。
「よく吠える人間だ。良いだろう。現世と精霊界を繋ぐゲートを砂漠に作った。数日前貴様の仲間がやって来たところだ。我とやり合うと言うならばそこへ来い!」
そう言うと、アマンダの皮を被った精霊王は、シュンッ、とその場から消えた。
俺の仲間というのは恐らくシュレイヒトさん。彼女が行ったというのは、北にある砂漠。そこにて待つということだろう。
「父上、今のが精霊王です。アマンダに憑依していました。俺は今から北の砂漠に向かいます」
俺は急いで父上に駆け寄り、報告する。
「了解した。したが、なんともないか?」
「へ?は、はい。なんともございません」
父上に言われ周りを見てみると多くのものが腰を抜かしていた。腰を抜かさず立っているのはレントやアル、父上、、他には、武に精通していて実力のある者達だけ。確かにすごいプレッシャーだったが、そこまでのものだったか?
「それだけお主に実力があるということじゃ。ほれ、彼奴と戦うのならばヴォルを連れて行くと良い」
「そういうことか。てか、なんでヴォルを?」
俺はアルに問いかける。
「忘れたか?ヴォルはエレドラゴンという新種のドラゴンじゃぞ。お主も鑑定したでは無いか。なぜヴォルの身体は黒いのじゃ?」
俺はヴォルを鑑定した時に出てきた備考の欄を思い出す。
"エレは黒を表す言葉。黒とは全ての光を吸収した色。新種。全ての属性において他の原初のドラゴンを圧倒する"
「そういうことか!」
「漸く気がついたか。普通は最初に気づくもんじゃぞ?」
ヴォルの身体が黒い理由。黒は全ての色を呑み込む。
という事は魔法が効かないとでも言いたいのだろう。原理は分からないがそういうことだろう。また、他のドラゴンと違い、火、水、風、土、光、闇魔法を使えるらしい。
これは連れて行かない理由がないな。
「そういうものか。それより、ヴォルはどこにいる?」
「未だ城にいるじゃろうて。早ういけ」
「あぁ!」
俺は普通に箒無しで飛び、城へ向かう。
◇
スタッ
数秒で城へ着き、上手く着地をする。
門は門番の方が開けてくれたのでそのまま走って城の中へ入る。
途中で使用人たちとすれ違い、曲がり角では当たりそうになるが、上手く避ける。
――ガチャ
「ヴォル!いるか!?」
俺の部屋のドアを開け、ベットの方を見る。
いつもヴォルと一緒に寝ているので真っ先にベッドを見た。
時間はまだ早いし、俺に似て朝が弱いヴォルはまだ寝ているはずだ。
「キュウ?」
鳴き声と共に俺の方を振り返る。
「お願いがある。俺と一緒に戦ってくれないか?共闘だ共闘」
「キュゥン!」
ヴォルは俺と一緒にの辺りからその小さい羽をバタバタし始め、嬉しさを表現してくれる。
「一緒に来てくれるか?」
「キュゥン!」
そしてそのまま俺の胸へと飛びついてくる。それをガッシリとキャッチし、部屋の窓を開ける。それと同時に異空間収納から箒を取り出し、跨る。
「良し、行くぞ!」
「キュゥン!」
ヴォルを抱えたまま、窓を飛び出し、北へ向かう。
待ってろよ、精霊王。その首必ず落としてやる。
◇
あとがき
設定集の後ろに義理の兄弟姉妹について書き加えました。まだ読んでいない方はご確認お願い致します。
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