第60話 過信

 ◇

 今回短めです。

 ◇


 あの、シュレイヒトさんとその部下達で挑んでも勝てなかった精霊王。果たして俺に勝機はあるのだろうか?


『問題無いでしょう。クリヒカイトは器用貧乏として評価されている人間です。主人マスターは器用貧乏の完全上位互換。負けるはずがありません』


『根拠とかあんの?』


『私は自立型のスキルです。人間には予想もできないほど高速で演算をします。その中で主人マスターが精霊王に勝利する道筋が複数存在することが確認できています』


『なるほどね』


 実は1個師団ずつ出すより全員で、と言っても、帝都の守りを薄くする訳には行かないので1個または2個師団ほど残して全員で突撃した方がいいと思ったのだが、第2魔法師団うちだけで大丈夫そうだな。


『それは危険です。他のものを連れていくと足でまといになり、上手く作戦を遂行出来ない可能性があります。恐らくクリヒカイトもその口でしょう。彼女だけであれば勝てないにしてもなかなか悪くない戦いは演出できたでしょうが、味方の練度が原因かと』


 なるほどね。戦ったことは無いがシュレイヒトさんは普通に強いらしいし、そんなに死傷者出すなんてありえないと思っていたが、そういう背景があったのか。


「では、リュークハルトの第2魔法師団だけで行くということでいか?余としては複数師団で行くことも考えていたのだが」


「いえ、第2魔法師団ツヴァイは連れていきません。俺1人で行きます」


「ギャハハハ!第3皇子サマ、自分の力を過信し過ぎだろ!無理無理!精霊王相手に1人で立ち向かうとか!」


 ラウトは本当にうるさい。第10席のくせに。そうじゃなくても無礼が過ぎる。


 俺はラウトを睨み、少し強めに殺気を放つ。


「ひッ―」


「てめぇ、さっきからうるせぇんだよ。10番目のお前が何逆らってんの?立場も実力もこっちの方が上なんだけど。少しは弁えろよ?」


 そういうとラウトは走って会議室を後にした。その時彼の股間が濡れていたのを見るに、チビったのだろう。


「やりすぎだ。リュークハルト」


「失礼しました。あまりにも無礼が過ぎたので」


 父上から叱責を受けた俺は席から立ち、頭を下げる。


「それではリュークハルト1人でもう一度調査に出向き、可能なら解決、ということで良いか?期限は10日間とする。それをすぎても帰って来なければ、第3、第5、第7魔法師団を出動させる」


「はい、構いません。……シュレイヒトさん、辛いかも知らないですけど、精霊王の事について聞いてもよろしいか?」


 俺は、既に席につき、出された水を勢いよく飲んでいるシュレイヒトさんに聞いた。


「は、はい。彼、彼女?精霊王には恐らく性別はありません。とても中性的な顔立ちで男性とも女性ともとれる顔つきです。戦闘スタイルは魔法攻撃に少しだけ近接戦闘を加えた形です。第2魔法師団長ツヴァイ殿の戦闘スタイルと似ていますが、近接戦は恐らく第2魔法師団長ツヴァイ殿の方がおそらく上でしょう。魔法は恐らく使えない属性はありません。見た限り全ての属性と見たことの無い魔法を使っていました。雷の様な。ピカっとひかり、一瞬にして数十人の団員を死傷者させました」


「雷?」


「はい、雨の日などにお空で光るあれです」


 精霊王は雷魔法使えるのかよ!?聞いねぇよそんなん。


『まぁ、言ってないですしね。精霊王になると錬金魔法以外の全ての魔法が使えるようになります』


『そうなのか。てか、最初からそういうのは言ってくれよ』


『……わかりました』


 アイは渋々と言った感じで了承してくれた。いや、そこで渋々するのはおかしいだろ。



 しかし、問題ない。俺はこの数ヶ月で雷魔法を会得しているのだ。


 ◇

 名前:リュークハルト・フォン・スターク


 魔力量:95万三千


 称号:スターク帝国第3皇子 異世界の記憶を持つ者 剣之帝 闘之帝 槍之王 炎之帝 水之神 風之帝 土之王 光之帝 闇之王 時空之神 氷之帝  雷之神


 ◇


 数ヶ月前より魔力量が1万ほど上がり、槍、水はひとつラングが上がり、槍王、水神となった。炎もひとつ上がって炎帝。そして、雷属性。


 使い手が俺しかいないのだから、少しでも使えた瞬間、雷神位を得たのだ。


 そして、土属性、光属性、闇属性も得ることができた。そちらは既に王位帝位を得ている。


 これだけあれば精霊王にも勝てるだろう。あとは魔力量で勝負と行こうではないか。


 これで俺は精霊王にだって勝てる。そう思っていた。

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