第59話 円卓会議
「余は暇では無いので会議はどんどん進めようと思う」
皇帝と言う立場の父上が常に公務に励んでいることは誰もが知っている。そんな父上がわざわざ宮廷魔法士団の会議に参加してくれるとあれば、皆協力するだろう。現に先程俺にちょっかいを出てきた第10
「……、その協力的な姿勢に感謝する。まず皆気付いているであろうが、第4
初っ端から皆が疑問に思っていたシュレイヒトさんがいない理由をぶち込んでくれるらしい。
「まず、北側の砂漠に異変が起きた」
北側の砂漠。これは獣王国との間にある砂漠だ。あっちの連中は砂漠なんぞあっても意味が無いとか言って全てこちらに押し付けているようだが。
「砂漠のオアシスが全て消滅し、その周辺の集落は壊滅。さらに、魔素まで薄くなっているときた」
あの砂漠には文字通りオアシスが存在する。地下に水脈があるらしく、そこから水が飛び出し、池を作っているらしい。今はそれすら消滅してしまったようだが。さらに魔素まで薄くなっているらしい。
魔素は空気中含まれるものだ。酸素や窒素と同じように。人間が呼吸し、魔素を体内に入れることで自然と魔力が回復する。疲れた時は呼吸を荒くし、酸素を取り入れ、体力を回復するのと同じような仕組みだ。
そして、魔素という魔法士には必要不可欠なモノが低下している場所にシュレイヒトさんを、魔法士を送り込んだのだろう。
「その原因を探るため、数週間前に彼女とその部下達を向かわせた」
やはり。
そういえば数週間前に父上から大量の箒型魔道具の発注があった。まさか今回のためだったのだろうか。
「あら、空気中の魔素濃度が低下しているところに魔法師団を送り込むなんて何をしているのかしら?」
無礼な発言とも取れる発言をしたのは
そして、そのローブのちょうど耳あたりに出っ張りが見える。そう、彼女はエルフだ。彼女は数代までの皇帝と共に冒険者をやっていたことがあるらしく、今もこの国に留まり、この国に尽くしてくれている。そのためこちらも強く言えないのが現状だ。そして彼女は風之王、つまり風王だ。
彼女の考えと俺の考えは同じだったようだ。なぜ魔素の薄いところに魔法士を向かわせたのか。まあ、理由は単純だ。
「時短のためでしょう。第3皇子殿下が発明した箒型の魔道具、騎士が発動し、飛ぶには難しい代物。つまり魔法士しか使えない。そして砂漠の問題を一刻も早く解決したかった。これらの理由からやむを得ずシュレイヒトを送り込んだのでは?」
そう発言するのは水色のローブを着た、
そして彼の発言は的を射ているだろう。それ以外に考えられないという完璧な思考だ。
「その通りだ。しかしもう、帰ってきても良い頃なのだが、なかなか帰ってこんのだ」
「調査とやらの途中で死んじまったんじゃねーのかよ?」
そう発言するのはやはり
「その程度で死ぬような人間が宮廷魔法士の第4席なわけないでしょう」
彼をバカにするような口調で話す人間が発言する。茶色いローブを着た
「チッ」
ほぼ正論に近い事を言われたラウトは舌打ちをしてバツが悪そうにそっぽを向く。
「くだらぬ言い争いはよせ。早く話を進め―――」
ダダダダダダ
父上が一旦話を戻そうとすると遠くからこちらに走ってくる音が聞こえる。
ダダダダ
――ガチャ!
「遅れました!申し訳ございません!!」
噂をすればなんとやら。なんと扉からはシュレイヒトさんが現れたのだ。それもボロボロになった。
「おぉ、遅かったではないか」
「申し訳ございません!実は調査が難航しまして」
彼女の話を聞けば誰だって今回の調査に自分の師団が指名されなくて良かったと思うだろう。現にラウトなんかはめちゃめちゃ気まずそうな顔をしている。
曰く、情報通り砂漠にあったオアシスは消滅していて魔素も薄かったと言う。
曰く、それは精霊の仕業なんだとか。
精霊の仕業だと聞いた他の者たちの多くは疑ったが、彼女の話を聞いたら信憑性が増してきた。
曰く、新しく精霊王に就任した精霊がこちらの世界―現世―の精霊を全て精霊界に戻すなどとほざき、手始めに人間にバレにくい砂漠の辺りから始めたそう。
精霊王の政策に反対した上位精霊達は皆、半殺しにされてしまったそう。
そしてシュレイヒトさん率いる
「そんなら噂の第3皇子サマが行けばいいんじゃね?」
またラウトだ。
「俺は別に構いませんけど。今回こそ陞爵を約束してくれるなら」
実は王国退治にドラゴン討伐。これまでしても陞爵は認められなかったのだ。次こそ伯爵位を頂く。
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