4.5章 精霊編
第58話 勢揃い
それからレントの勉強は順調過ぎるほど進んでいた。なんせ初等部1年次のテストだ。
数学、いや、算数の問題は足し算引き算。それも2桁の。それに3問に2問は計算結果が綺麗な数になるような問題。国語に関しては字の読み書き。これだけだ。
少なくないか?と思うだろうが、1年生の間は魔法系の授業も歴史の授業も一切やらない。体育のような、実技の授業が多いのだ。
例えば近接戦闘の練習。近接戦は魔法士も必須と言っても過言ではないが、近接戦をまともに出来る魔法士は少ない。
そのため、最近では初等部1年から、近接戦闘の訓練を授業として組み込んでいる。魔法士でも、近接の間合いに入り込まれては対処ができない。そういう時の為に少しでも時間稼ぎが出来るよう、近接戦を教えている。らしい。
理由はもちろんそれだけではない。貴族として、武術は嗜むべきと言う風潮があるため、というのを大義に将来文官になるような貴族の子息令嬢にも武術を教えこんでいる。
もちろんどの貴族も武術は嗜んでいる。それは、本当に嗜む程度なのだ。実用には使えない、ただのままごと。そんな貴族の子息令嬢は嫌々ながらも鍛錬に励んでいるらしい。俺とレントを餌に。
と、言うのも、俺が
まぁ、そうやって俺たちの知らない者が実力を伸ばし、俺らと対等の力を持つ人間が現れればこちらとしても頼もしい限りなのでこれからも持続して欲しいものだ。
話は大きく脱線したが、俺たちは3年前、今となっては4年前となるが、3歳の頃の俺たちは6年間の飛び級を目指して勉強していた。そして、合格した。つまり1年次のテストなど屁でもないのだ。問題なのは高学年のテスト。ライトとジークは既に中等部の勉強に取り掛かっているらしいが、レントは別だ。
まだ7歳の子供が、小学1年生の子供が、小学生5年生、6年生が習うような問題を真に理解できているかと言えば答えはノーだ。
そのため今は、低学年の頃の勉強は程々に高学年の勉強を中心に教えている。長期的にやることによってそれは長期記憶となり、忘れにくくなる。
具体的な内容としては2桁の掛け算割り算に分数整数の掛け算割り算。本当は方程式や連立方程式も教えた方がいいのかもしれないが、これは中等部から高等部にかけての範囲らしい。
……え、簡単すぎね?
もちろん高学年になると歴史の授業も始まるのでそちらの勉強も欠かさない。ライトとジークは初等部の歴史の範囲は余裕らしく、そちらも中等部の内容に入っている。
初等部のうちに習う歴史の授業のテストを見せてもらったことがあるのだが、貴族、皇族としては常識的な問題が多かった。初代皇帝の名前や、異世界人に関してのこと、国の成り立ちなど。
――コンコン、ガチャ
「リュークハルト様!陛下がお呼びです!至急会議室に集まるようにとの事です!」
俺がレントの部屋にて、勉強を教えていたところ、クリアーダがノックの後、返事を待たずにドアを開けた。
「わかった!それじゃあ、レントの方は任せる。クリアーダとアンナの2人体制なら余裕なはずだ!」
父上のお呼び出しとあっては急いで向かうしかない。会議室は宮廷魔法士団の事務所の隣の部屋。事務所にはよく行くし、場所は分かるので小走りで向かう。
3分もしないうちに広い城内から会議室に到着した。
――コンコン
「第2魔法師団団長、リュークハルト・フォン・スタークです」
会議室と言うことは皇子としての俺ではなく、
「入れ」
父上の声が聞こえたのと同時に両開きのドアが開く。内側からドアを開ける係が開けくれたらしい。
中に入ると父上の他には8人の人物が円卓会議のように座っていた。
全員見知った顔だ。時計回り順に、1番奥が父上、その隣に
錚々たるメンバーと、言うか
「おうおう、随分と遅い登場だなァ」
誰だ?と思い、目を向けるとオレンジ色のローブを着た短髪の男がよろしくない態度で座っていた。オレンジ色のローブという事は第10
俺はそいつを一瞥し、無視しながら自分の席に着いた。
「来たか。それでは会議を始める」
父上の開始の合図で一気に緊張感で部屋中がいっぱいになる。
そういえばこの会議とシュレイヒトさんがいないことに何か関係があるのだろうか。
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