第57話 思惑
暑い季節から割かし涼しい季節になりつつある今日、俺は父上に衝撃的な真実を告げられた。
今から2,3ヶ月前、俺は
ちなみに
新しい団員をどうするか考えていた時に父上から呼び出された。
―――コンコン
「リュークハルトです」
「良い」
――ガチャ
ノックをし、名乗り、父上の返事が聞こえてから、ドアを開ける。
「伝えたいこととは、なんでしょう?何かやらかした記憶はないのですが」
「お主がやらかした訳では無い。こちらのミスだ。先に謝っておこう」
何故か父上が急に謝り始めた。
本当になぜだかわからん。
「え、あの、どうしたんですか?出来れば早く本題に入りたいのですが」
「そうだな、実はお主たちが受けた飛び級試験の話なのだが」
曰く、6年間の飛び級は史上初すぎて学園側が混乱し、飛び級ではなく、特待生として初等部に入学する事になったとか。
衝撃的な真実だ。
「どういうことですか?」
「こちらも全て聞かされている訳では無い。ただ、飛び級で卒業したという事実がなくなってしまっただけだ」
だけって。でも、言われてみれば初等部を卒業すれば、次は中等部に入学しなければならない。それなのに俺たちは何の連絡もなく、中等部に入学することも無く、過ごしてきた。
元々、初等部の6年間が長すぎるという理由で飛び級したわけだから、こちらとしては好都合であったため、何も疑問に思わなかったが、初等部を卒業したら普通、中等部に行くよな。
「という事はこれからは初等部に通う必要があるということですか?」
「いや、その心配はない。お主ら4人が合格したのは特待生の中でも最上位のモノだ。これは授業免除になる」
「それなら今までと変わらぬ生活で構わないということでよろしいですか?」
「それが、年に一度、試験を受けることになったのだ。6年間何もしなければ頭から抜ける。そのような事態は避けたいらしく、学園側からは年に1度その学年の進級テストで9割以上を取るようにと言われている」
おいおい、それじゃあ、レントに必死に教えた6年間分の勉強はなんだったんだよ。こっちは初等部6年間分のテストを受けて合格したから飛び級したのに、今度は年に一度テストを受けろだと?それも9割以上の得点を取って?レントには厳しいだろ。
「そうですか。確か、高等部からはきちんと通う約束でしたね。それを学園側が利用したのでは?」
元々、父上とは高等部は飛び級試験を受けずにちゃんと通うという約束をしていた。友達と学ぶことで得られることもあるからだとか。
しかし、その情報を得た学園側は俺たち4人と俺たちと同じ年齢の代を同じタイミングで高等部に進学させようとした可能性がある。
なぜなら、もし、俺らが今から高等部に入学してしまえば俺らの9個上の代と共に学ぶことになる。それはおそらく彼らのモチベーションの低下に繋がると判断したのだろう。
必死こいて入学した高等部に自分より8歳9歳若い7歳の子供がいたらどう思うだろうか。
皇族だから、ズルして入学したのだろうと考えるだろう。しかし、数ヶ月も共に過ごせば俺らの実力が本物だと思い知らされる。これはもっとメンタルに来る問題だ。
そういうところも考慮して、学園側が規則を変えた可能性が高い。これは一概には学園側悪いとは言えないので何も言い返せないのが現状だ。
「可能性としては十分有り得るな。しかし、一概には学園側が悪いは言えん。何も言い返せないのが現状だ」
あら、父上と全く同じことを考えてた。
「この事はほかの3人には?」
「言っておらん。後で言うつもりだが、3人のまとめ役のお主に先に伝えるべきだと考えたのだ」
「そうですか。それでは俺の方から伝えておきます」
「それはありがたい。頼んだぞ」
「はい。それでは失礼します」
俺はそのまま父上の執務室を後にした。
◇
「まじかよ!?それじゃあ、オレは普段から勉強しなきゃならねぇってことか!?キツイぞそれは!」
「……なるほど、やはりボクとライトの予想通りでしたか。おかしいと思ったのですよ」
「そうですね。もしかしたら学園側のミスかもなどと考えてもいましたが、やはりそうでしたか」
俺は父上から聞いた話をそのままレント、ジーク、ライトに伝えた。
レントはおそらく普段から勉強をしていないので慌てているだけだろう。他のふたりは今は中等部の勉強しているらしいし、平気か。
「大丈夫だ、レント。3年前からみっちり勉強していただろ?それの復習をするだけだ。簡単なことだろ?」
事実、俺らは初等部の6年間を飛び級する予定だったので、6年間分の試験を受けたのだ。それなのにまた、1年次のテストから受けろと言われている。6年間分の勉強をしていれば1年次のテストなどどうって事ないのだ。
「あ、それならなんとかなるかも?」
上手くレントの不安を和らげたところでレントの勉強はスタートした。
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