第56話 多士済済
「それはそうとレント、俺がいない間鍛錬は怠らなかったか?まぁ、色々あったとはいえ、じゃあ今日はやらなーい、では通じない世界だぞ、お前の目指すところは」
そういえとばと、ふと、思い出す。遠征前に俺はレント剣術以外も練習するように言っていたのだ。
「あぁ、アニキの言う通り、剣術だけでは学べないものを学べた気がする」
「リュー坊。王国との戦争に行ったと聞いていたが、その間にレントに何か仕込んだのか?」
グロウスティアは、真剣な顔で俺を見る。
「えぇまぁ。レントの目標は世界一の剣士。つまり、グロウスティアさんを超えること。でも、剣だけやっていてもいつか限界は来る。レントの限界値がグロウスティアさんより上だとしても経験という部分でグロウスティアさんに軍配が上がるのは目に見えています。なので槍術や体術も身につけ、それを剣術の為に昇華させることを課題として課しています。グロウスティアさんも嗜んでいるんでしょう?槍術と体術」
「………。ガハハ!これが7歳にして
一瞬キョトンとしたグロウスティアは少し間を置いて俺を賞賛した。
「えぇ、嗜む程度ですが」
「嘘つけぇぃ!」
「嘘ッスね」
「嘘は良くありませんよ」
俺の返事に、レント、ディアナ、シルフィードがツッコミを入れる。
「おいおい、嘘なのかよ。雰囲気的には齧っていても悪くねぇと思ったんだがな」
「そう言う嘘じゃないです、師匠。アニキの腕前は嗜む程度で収まるもんじゃねぇんですよ。剣術はオレ同等、体術も獣人のディアナより強いんです。体術と言えば獣人族の十八番だぜ?そんなディアナより強いんです。嗜むなんてもんじゃありません」
逆側に勘違いしたグロウスティアにレントが丁寧な説明を入れる。
レントはグロウスティアに対してだけ少しだけ丁寧な口調を使う。原型はレントのままだが、こいつが敬語を使うのは父上とグロウスティアだけだ。
「そうかそうか!ならリュー坊の称号を見せてくれ!」
「いや、遠慮しておきますって、グロウスティアさんに見せるほどすごくないですし」
俺はそう言いながら父上とスーナーさんの方を見る。シャルも知ってはいるが、今は頼れない。2人も俺の称号を見たことがあるから、あれが世に出てはいけないとわかっているのでいい感じに回避させてくれるはずだ。
「えーと、グロウスティア様?一応個人情報ですし、やめた方がいいのでは?」
「外野は黙っておれ。今はリュー坊と話しているのだ」
外野と言われたスーナーさんはしょげてしまった。その横ではシャルが慰めているが、流石に言い過ぎだ。
「まぁ、良いではないか。いい機会だ。グロウスにもリュークハルトの称号を見てもらおう。あのグロウスティアが認めたとなればリュークハルトに勅任武官の地位を与えるのも楽になるだろう」
あーあ父上まで変なこと言い出しちゃったよ。
それと同時にクリアーダが城の中へと走り去った。おそらく鑑定の宝玉を取りに行ったのだろう。
10分も経たないうちにクリアーダが鑑定の宝玉を持って戻ってきた。
「お待たせ致しました。こちらです」
見た感じ全力疾走していたのに息が乱れる様子はない。メイドすげぇ。
俺は鑑定の宝玉に手を置き、魔力を流す。
◇
名前:リュークハルト・フォン・スターク
魔力量:94万2千
称号:スターク帝国第3皇子 異世界の記憶を持つ者
◇
あれ?前に見た時―と言っても数日前だが―には
彼が死んだことで剣帝の枠が空き、全員がひとつ繰り上げになった。槍に関しては彼がどれほどの位を持っていたか分からないが槍聖以上を持っていたのは確かだ。
俺が持っていない魔法系、武術系の称号は未だに手を出していないという理由が1番だろう。才能値的には全部満遍なく頑張れば全て帝位を得ることは可能だろう。
「アニキ、これで嗜む程度とか抜かしてやがったのか」
「あら、さすがリュートちゃんね!」
「「……」」
レントは呆れ、母上はまた俺を持ち上げる。他のシャル、父上、スーナーさん、クリアーダ以外は呆然と鑑定結果を眺めている。
「ガハハ!このような称号を持ちながら剣術を嗜む程度だと?リュー坊も冗談が上手いなぁ!」
「えぇ、まあ。しかし数日前は俺は剣帝ではなく剣王でした。それに槍に関する称号もありませんでした。つまり、これはベルン
グロウスティアの剣の才能値はA。俺の剣の才能値はA+。しかし、体術、槍術は俺の方が上回っている。そのふたつを上手く剣術に昇華出来ればそう時間も掛からず越えられるだろう。上手く行けばの話だが。
でも、ネックなのはレントの存在だ。こいつは剣の才能値がS。体術、槍術共にA。俺より先にレントの方がグロウスティアを抜かすのではないだろうか?現にレントは既に剣帝なのだ。
「ガハハ!やれるものならやってみると良い。それより前にレントに追いつき追い越すところからだろうがな!ガハハ!」
そう言ってグロウスティアは愉快な笑い声を響かせながら帰って行った。
嵐のような人間だ。神位を持つものは個性的な人間が多いと聞くが、みんなあぁなのだろうか?俺はあそこまで個性的ではないと信じたい。
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