第55話 ポンコツ駄龍
「なぜ、12歳になるまで待つのじゃ?」
アルが当然とばかりに質問をする。しかし、まぁ、アルの言いたいことは分かる。おそらくアルは俺を子供として見ていない。つまり、俺との会話から、俺の判断力、思考力を鑑みて別に今、勅任武官の地位を与えてもいいじゃんってことだろう。
しかし、ほかの面々はアルになぜって、なぜ?みたいな、なぜ、と質問をしたアルに対し、なぜ?となっている。
「それは、リュークハルトがまだ、7歳の子供だからだな」
「それなら7歳でも12歳でも変わらんじゃろ。たった今5つ歳を重ねるだけじゃぞ?確かに人間の子供の5年間はデカいものだとわかっているが、このリュークハルトは特別じゃろ?数日しか関わりがない我が見ても分かるのじゃ」
確かにアルの言う通りだ。そういえばアルって一人称が妾だったり我だったりするような……。何かを主張したい時は我って言ってんのかな?そこまでして俺に勅任武官の地位を与えたいということか?何故?
「確かに、アル殿の言う通りだ。しかし、7歳で勅任武官など、依怙贔屓していると役人たちから反感を買うのだ。そうなれば国の経営所では無い」
「じゃから、7歳も12歳も変わらないと言っておろうが!この国では7歳も12歳も学園では初等部という括りなのじゃろ?同じではないか!」
え?え?なんでアルがキレるの?意味わからんて。俺は別に12歳でもいいと思ってるし、え?
「なぁ、
「今更何を言っている。お主に伝えたドラゴンはアル殿の事だ」
今度はグロウスティアが父上にとっかかる。
「え?」
「ん?」
グロウスティアは1度俺の方を見て、アルの方を見る。そして今食べている肉を見て俺を見る。そして頷く。そしてまた食べ始める。理解したらしい。
「グロウスティアさんの方は勝手に解決したっぽいけど、アルはなんでそこまでして俺に勅任武官になって欲しいんだ?」
「そんなこと、今後楽するために決まっておろう?」
「楽?」
驚きすぎて声が裏返ってしまった。楽?俺が勅任武官になることでなぜアルが楽になる?
「我は今後もこの国に留まるつもりじゃ。そうすると我とお主は共に城下町へ繰り出すことが増えるだろう。その時は我はこの格好じゃ」
「あぁ、なるほどね」
ようやく理解した。アルの今の姿は大変男共から注目を浴びる。俺と一緒にいても。そしてこいつは人間のことを無意識下で下等生物と認識している節がある。しつこい下等生物が言いよって来たら間違って手を上げてしまうかもしれない。
しかし一緒に俺がいれば、そいつが何か罪を犯したと偽り、俺が執行したことにできる、と思っている。
「ようやくわかってくれたか?それなら早く勅任武官に任命゛ッ!」
変なこと抜かしてるから、思わずぶっ叩いてしまった。
「何言ってんだ。お前が考えてること自体犯罪だ。執行するぞ?」
「なるほどな」
「へぇ」
「ガハハ!」
俺の言葉から父上とスーナーさん、グロウスティアはアルの考えが読めたらしい。
「ふっ、お主はまだ勅任武官ではないであろう?では、執行するのは不可能じゃ!ワハハ!」
バシ!
「い、痛いのじゃ~」
「てめぇが変なこと抜かしてるやがるからだろ?もう喋ってねぇで飯食ってろ駄龍め!」
「駄、駄龍!?お主、原初のドラゴンに向かってその口の聞き方はなっておらんじゃろ!」
「ポンコツな駄龍に駄龍って言って何が悪い?」
「2人とも馬鹿ね」
「「「そうだな」」」
「お
シャルの言葉にレント、ライト、ジークが賛同し、シンシアはちょっとズレたこと言ってる。
「いいか?駄龍。お前はドラゴンで俺たち人間よりはるかに長生きしているかもしれないが、龍は龍なんだよ。人間の黒い部分、それへの対策ってのを知らないドラゴンが口出しする内容ではないんだ。こういうのは父上に任せておけば平気だ」
郷に入っては郷に従えという言葉がある。いくらアルの言っていることが正しくても人間の世界ではそれが通じないことがある。だから、そこは人間に合わせる必要があるのだ。
「わかった、わかったからもう叩くのはやめてくれたもぅ。痛いのは嫌なのじゃ」
わかってくれたようで何よりだ。
アルと父上の軽い口論、それに参戦する俺を見て、あたふたしていた宮廷料理長とその部下数人、クリアーダ達専属メイドは落ち着きを取り戻した。
俺はヴォルを抱え、一緒に肉を食べているのだが、お父さんを食してるんだよな、倫理的に平気なのか?これ。
「人間はどうだか知らんが、外の世界は弱肉強食じゃ。親を食う子供も珍しくない。今回は例外じゃがな」
どうやら顔に出てしまっていたらしい。
「弱肉強食、か。大量に採れたドラゴン肉がなくなったらアルでも食うか」
カチン
その場の空気が固まった気がした。
「………」
アルは何も言わずに俺から離れる。みんなは何言ってんだって目とドン引きしている目を向けている。
「……冗談だからな?さすがに仲間を食うような事はしない。俺が殺るのは敵だけだ。俺の味方についてるうちは生を保証しよう」
「一生ついて行くのじゃ!だから食べるのだはやめてまもぅ!」
すると、どっと笑いが起き、俺の冗談も受け入れて貰えたらしい。
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