第54話 神であり目標

「なんだこれ!めちゃめちゃうめぇな!アニキ!」


 夜、俺たちは城の庭にて、BBQをやっていた。遠征時に使っていた魔道具を使って。


 メンバーは俺たち皇族、スーナーさん、シャル、宮廷料理長とその部下数人、クリアーダ達専属メイド、ヴォルやアル、その子供たち。他にも宮廷魔法士団の団長クラスや騎士団の幹部たちを呼んだりしたのだが、急なことでもあったし、恐れ多いとか言われて断られてしまった。


 宮廷料理人たちはせっかく今日の夕飯の献立などを考えてくれていたのに、台無しにしてしまったため、どうしてもと呼んだのだ。


 ドラゴンの肉は小さめにカットして、BBQができるサイズにした。


 ちなみに、魔道具のBBQ台は3一応台出している。宮廷料理人たちが、俺たちのために肉を焼いたり野菜を焼いたりしてくれているのだが、俺が自分の肉を育て始めるとそれに続いて子供組みんな、自分で肉を焼くようになった。レントなんかは、いくつか焦がしてしまい、自分で育てるのを諦めたらしい。


「本当ならベルンのアニキもここにいたはずなんだよな」


 宮廷料理人がレントの肉を焼いてあげている横でレントがポツリとこぼす。周りを見ると、みんな急に暗い顔をし始めてしまった。


「過ぎたことは仕方がない。そんで、今する話でもない」


「それもそうだな」


 1度は落ちかけた空気だったが、その後はなんとかいい感じに回復し、みんなでワイワイやっていた。


 しかし


従兄アニキ~!従兄アニキの息子がドラゴンを倒したんだって?今食ってるのがそれか?結構たくさん取れたんだな!ガハハ!」


 兵士たちの制止を振りきりやってきた偉丈夫。


 彼はグロウスティア・フォン・スターク。性からわかるように皇族だ。そして父上の従兄弟。


 金髪の怒髪天。その出来上がった上体を見せるような上裸にマントを羽織ったイケメン。レントが1番影響を受けた人物だ。そして現皇帝の従兄弟でありながら未だ、皇族の性を名乗ることが許されている人物。


 この国では皇帝の直系家族、実の兄妹のみ。例外が許されるのは皇帝から直接お許しが出た場合のみ。


 グロウスティアのような性格の人間は役人には嫌われるが、他の皇族など、最上位の身分のものには好かれやすい。


「グロウス!なぜお前に城の兵士がしがみついている?」


「あー、これ?これはな、俺を不審者だと勘違いした不届き者だ!まぁ、我は心が広いから許すがな!ガハハ!」


 父上はグロウスティアの言葉に、はぁ、とため息をつく。


「グロウ師匠!」


「おう!レントも居ったか!」


 グロウスティアはレントの剣の師匠であり、Sランク冒険者でもある。


 レントはこいつに憧れて俺の事をアニキと呼ぶしジークハルトのことはジークのアニキなんで呼んでる。ラインハルトのことは普通にライトと愛称で呼んでいる。


「師匠は今までどこに行ってたんだ?」


「ああ、ちょっとした仕事でツワイト皇国にいたな」


 グロウスティアは剣之神の称号を持っている。


 ◇

 名前:グロウスティア・フォン・スターク

 年齢:30

 種族:人族

 称号:スターク帝国皇帝の従弟 剣之神 Sランク冒険者 


 武術

  剣術 A

  槍術 C

  弓術 D

  体術 B


 魔法

  火 F

  水 F

  風 F

  土 F

  光 F

  闇 F

  時 F

 空間 F

  氷 F

  雷 F

  無 C

 錬金 F


 生産

  錬金 F

  鍛治 D


 資質

  統率 A

  武勇 B+

  政治 E

  知略 D+


 ◇



 武官としては優秀だが、文官としては些か力不足だ。現剣神にして俺とレントの目標。身体強化も多少扱えるので武術大会では負け無しだ。しかし、歳も歳なので、そろそろ引退の可能性があると言われている。


 彼はツワイトにいたと言っていた。つまり、彼が聞いたドラゴンはおそらくはアルのこと。アルことを聞いてやってきたタイミングでちょうどもう一体ドラゴンを倒し、そいつを食している。いい感じに話が噛み合っているだけで若干噛み合っていないのに気づいているのは俺だけなのだろうか?


「おい、それより従兄アニキよ、お前の息子は勅任武官にするのか?」


「グロウスティアさん、そういうのは俺がいないところで、小さい声で喋ってください」


「あ?そりゃあ悪かったなぁ。ドラゴンを倒し、第二魔法師団長ツヴァイだぞ?国からの信頼は厚く、皇帝の息子。そりゃあ勅任武官じゃない方が不思議だろう」


 グロウスティアは簡単に言うが、勅任武官は国に5人もいない。そしてグロウスティアは勅任武官だ。


 勅任武官とは皇帝の許しを得る前に現行犯で犯人を武力で押さえつけ、尚且つ、そのまま刑を決めることができる。もちろん法律に則った刑罰が必要だが。


 そして、勅任武官とは別に勅任文官というものがいる。ふたつの役職はほぼ同じだ。しかし決定的に違うのが、自分で手を下すか否か。


 勅任武官は自分の武力で刑を執行できるが文官は非力な者が多い。したがって、勅任文官の護衛の者が代わりに刑を執行する形をとっている。


「えっ、リュートくん勅任武官になるの?」

「あら、さすがリュートちゃんね」


 シャルと母上が同時に驚く……というか感心している。母上にはその呼び方はやめるように言っているのに一向にやめる気配がない。


「さぁ?俺もたった今グロウスティアさんに言われただけだし。わからん。実際のところどうなんです?父上」


「確かに、勅任武官にしようと言う話は上がって来ている。しかしお主はまだ7歳なのじゃ。若すぎると言う声が多数ある。じゃから、5年後、12歳になった際、勅任武官に任命しようと考えているだけじゃ。まぁ、それまでにお主が犯罪などを起こせば無効になるがな」


 勅任武官。それは大きな肩書き。是非とも受けたいものだ。

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