第51話 思ってもみない事態
俺が城――と言っても飛んで帰っているので着陸のために中にだが――に戻るとみんなが出迎えてくれたが、その顔はどこか暗い。
「陛下、ただいま戻りました。……それよりこの雰囲気はなんでしょう?」
「ようやく帰ってきたか。話は中でする」
「わかりました。……それじゃあ、ここで解散だ!各自気をつけて帰るように!」
「「「ハッ」」」
そうするうと皆、箒に跨り帰って行った。
俺を出迎えてくれたのは、父上、ラインハルトにレオンハルト、ジークハルトの兄弟達、それとシャルにシンシア。母上はやることがあるので来れないのだとか。スーナーさんも来れないのでシャルだけで来たらしい。
「それじゃあ、行くとしよう」
「はい」
父上が先頭を歩き俺がその後ろを歩き、他のみんながその後ろを歩く形で城内に入る。
それにしても、一体何があったんだろう?みんなが一様に暗い顔をするくらいの出来事があったということなんだろうけど、何だかわからん。
父上の執務室に到着すると
「話をするのは余とリュークハルトだけで構わないだろう。
父上の言葉にみんなは「わかりました」と口を揃えて部屋から遠ざかって行く。まぁ、話す人は1人で十分だが、わざわざみんなを遠ざけてまでする話なのか?
「それでは早速本題に入らせてもらってもいいですか?」
「あぁ、そうだな。………ベルンハルトが死んだ。いや、殺された。もう葬儀も済ませている」
………は?
「え、いや、どういうことですか?ベルン
ベルン
それに潜在能力が高いから、成長スピードが速い。中等部のトップと張り合えるくらいと聞いたのが数ヶ月前だから、わんちゃんその人たちよりも全然強くなってる可能性がある。それなのに殺された?
そんな人を殺せるのは訓練を積んでいる兵士、魔法使い……暗部の人間?
「……暗殺ですか」
「あぁ。それもアマンダだ」
アマンダ。スターク帝国の第三王妃にしてスターク帝国に属する伯爵家の令嬢。伯爵家は相当家格が高いが、その上の辺境伯、侯爵、公爵と、少数精鋭と言わんばかりの少なさに対し、少なくない憧れを持っており、権力に目がなく、伯爵令嬢でありながら皇族に、皇帝の元に嫁いできた秀才。
普通、伯爵家の者は権力大好き!みたいな人が1番少ない爵位と言っても過言ではない。男爵や子爵のように下級貴族でもないし、たくさん数がいる訳でもない。辺境伯家や侯爵家に公爵家は権力がありすぎるが故に横暴な人間が完成することもしばしばある。まぁ、そんなやつは大体勘当されるが。
しかし、伯爵家から権力に目が無さすぎる女が生まれた。伯爵家はなまじ権力があるため、皇族との結婚に反対する家は少ない。それに自分から婚約を持ち込むなんてこれまでの歴史上片手で数えられるだろう、と言うほど、珍しいのだ。
さらに、皇族としては他国とのパイプや上級貴族との関係も深くするために幾ら自由恋愛を掲げてる帝国でも、皇族自らが伯爵家以下の者に政略結婚にて、婚約を申し込むことは無い。
帝国は自由恋愛を掲げている癖に皇族は政略結婚がほとんどだ。それはまぁ、仕方ないが。
そのためにアマンダは実家の伯爵領を発展させた。それも帝国有数の商業都市に。そうすることで、アマンダ側から婚約を申し込んでも、身内に帝国有数の商業都市持ちを迎えることが出来るので断ることはしない。
そこまで見越し、領地を発展させることが出来るくらい優秀な人間なのに、第1皇子の暗殺をした。
俺とレントは皇帝にならないよと公言しているし、半ば帝位継承権を放棄している形だ。ライトとジークも皇帝になるなんて言ってない。ベルン
それをいいことに自分の息子を皇帝にする為、次期皇帝候補と名高いベルン
優秀なのか無能なのか。普段は優秀だが、権力が絡むと無能になるのだろう。彼女の死罪は間逃れない。
「ベルンハルトが学生寮に泊まっていることは知っているな?」
「はい」
ベルン
「実はお前が帰ってきた時にびっくりさせようと帰ってきたのだが、それをチャンスと見たのか、アマンダが刺客を城内に招き入れてしまってな。これは完全に余のせいだ」
俺をビックリさせようとして?それなら、もし俺が宮廷魔法士団に入らなければ、戦争に行くことも無く、ベルン
「言っておくが、お主のせいではない。これはいずれ発生していた事件だ。仕方の無いことだ。アマンダの本質を見抜けなかった余のせいだ」
「そう、ですか。彼女の処遇とジオルグの今後は?」
ジオルグは俺たちの義弟でアマンダの実子。アマンダが死刑となればジオルグはその判断を下した父上に恨みを持ち暗殺を企むだろう。それを阻止するための方法として帝国では1親等までは道ずれで死罪にすることが可能だが……。
「余も迷っているのだ。何がいい案はないかの?」
「そうですね……」
『アイ、助けてぇぇぇ!』
『うるさいです、
『んん?……あぁ。なるほどな。それなら殺さないで済むかもしれないが』
『提案するだけしてみては?』
『そうだな。ありがとう』
『それが私の仕事ですので』
俺は、アイのヒントを元に父上に提案する。
「……帝国法第11条第3項、死刑囚の死刑のタイミングは裁判が行われた日、もしくは皇帝陛下のお望みのタイミング。父上の好きなタイミングで処刑できるのです。牢獄には入れることになりますが、殺さなくて済む方法はこれしかないです。ジオルグはまだ2歳と幼いですし、母親は元々存在していないお教え込む、若しくはどこかの家の養子に出せば救うことはできます」
もし母親の存在を隠す方針にしてもいつかはバレるだろうが。
「そうだな、感謝するぞリュークハルトよ。しかし、その心遣いだけて余は嬉しいぞ。明日、裁判を行い、アマンダを処刑、ジオルグとアマンダの実家のヴィラート伯爵夫妻も道ずれだ。伯爵家は取り潰し。彼の領地は皇族直轄地とする。もう行って良いぞ」
「はっ。失礼します」
随分と思い切ったな。1親等全員殺すんか。まぁ、アマンダはそれだけのとことをした。仕方あるまい。
俺が父上の執務室を出るとそこにはひとつの人影が――
「なんじゃ、お主も辛気臭い顔をしよって。何があったんじゃ?」
――心配そうな顔をしたアルがいた。
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