第48話 開戦前
その日は自然に目が覚めた。
「団ちょ……今日は早いですね」
アングラックはあれから毎日献身的に起こしに来てくれている。
「あぁ、目が覚めた」
「本日はどの様なご予定で?」
「一旦、テントを全部仕舞って、山上の方を少し弄って陣を張る」
「なるほど。定石どうりの悪くない考えですね」
「うるせぇ」
こんな感じでアングラックとは多少の冗談は言える程度の仲になったと言えるだろう。
また、第1小隊のメンバーのアルロイス、ベルムンド、オイゲンとも仲良くなれたはずだ。何日も一緒に寝泊まりしてれば仲良くもなる。
「とりあえずみんなを外に集めて欲しい。そこで全体的に指示を出す」
「かしこまりました」
そう言ってアングラックは俺たちのテントから出ていく。ちなみに第1小隊のメンバーの3人は既に起床済みで外に出ているらしい。
俺が外に出るといつものように全員整列して待っていた。ここの野営地に来てから毎日朝礼のようなものをしているおかげでみんな生活習慣が乱れずに済んでいる。俺は腕がなまらない程度に毎日鍛錬はしているが、仕事があるため、帝都にいた頃より強度が低い。レントに色々課題を出した手前、俺が何やらないのは違うからと思いながらも忙しくて鍛錬に集中出来ないのが現実だ。
しかし、こんなつまらない仕事も明日で終わり。関ヶ原の戦いだって、開戦して6時間程で終わったと聞くし、今回の戦争は1時間もかからずに終わるだろう。圧倒的な実力差があれば人数差など関係ない。驕りだと思われるかもしれないが、これは驕りではなく自信だ。
それにしても、王国軍が見えたら即攻撃、なんて事は国際法的にNGなので、きちんと宣戦布告を受けたことを相手に知らせなけりゃならん。
そういえばなぜ今まで小競り合い程度で済んでいたのに、急に大々的に宣戦布告してきたのか、つい先日皇帝の命令で情報収集に向かっていた諜報隊が俺らの野営地にやってきて、真実を教えてくれた。
曰く、王国は悪魔の召喚に成功したそうだ。それも
さらに、王国側は今回の召喚で味を占めたのか、今は異世界人の召喚に挑戦しているらしい。本当に厄介だ。
そんなクソどものせいで俺はこんなところに派遣されたのだ。許せるわけが無い。何があっても全員絶望とともに殺す。
「傾注!!」
アングラックの一声により、その場が引き締まる。
「えー、これからテントを畳んで、あの山の中腹辺りに本陣を構える。じゃあ各員準備開始して。始め」
俺のだらしない号令で全員元いたテントの方に駆け寄り、テントを畳んでいく。テントを畳むと空間拡張の効力が失われるので私物は、みんな外に出している。
「俺らも行くぞ」
「「了解!!」」
「……了解しました」
俺は第1小隊を連れてテントに戻ってきた。
「忘れ物はないか?」
「中に私物らしきものは確認出来ませんでした!!」
確認のため、アルロイスにテントの中を見てもらったが、みんなきちんと私物は出していたらしい。
「ならいい。そのまましまう」
そう言って、俺は組み立てられたテントごと、異空間収納にぶち込んだ。
ぶち込んだと同時に箒型魔道具を取り出し、跨る。
「準備が出来た隊から続け!」
そこまで離れる訳でもないので固まって移動するのではなく、各々移動する感じで山の中腹まで飛んできた。
「この辺でいいだろう」
本当に真ん中ら辺に、俺ら第1小隊が着陸した。
「こんなに木が生えてる場所に本陣を構えるんですか?」
ベルムンドがいい質問をしてくれる。
「あー、いや、この木達は取るよ。そんで土魔法で土台作って陣建てる」
「そうでしたか。それでどのように木をとるんですか?」
「え、身体強化して木を抜き取ってしまえば終わりじゃん」
魔法って便利だよね。木が多い場所でも簡単に綺麗にできるしね。
5分もしないうちに20×20程のスペースに空きが出来た。そこの1番高いところに合わせて土を持って平にする。
山の形をそのままにしておくと斜面があるから、陣が傾いてしまうので、こういうめんどくさい工程をふむのだ。
そうこうしているうちに他の隊も続々と合流し、全員集まった。
「じゃあ、ここに陣を建てるから、みんなちょっとどいてて」
俺が言うと、みんな上空に避難する。
俺が作った平らなところには立派な陣が完成した。イメージとしては戦国時代に使われていたであろう形だ。全体を布で囲ってその中にも色々いと布でスペースを区切る。もう立派だよこれは。
◇
そうしてこの日は今まで取った食材で昼食夕食を食べ、寝ずの番を立てながらみんな寝ることにした。
翌朝、開戦の日、魔力探知には10km程先に1万弱の人間の魔力反応。情報通り騎士団一個師団と魔法師団だけらしい。これならなんとかなりそうだな。
これなら到着は1時間もかからないな。
「みんな、聞いてくれ!もう、1時間もしないうちに王国軍が見える。それまでに各々で準備しろ!」
これから世界に衝撃を与える戦争が始まる。
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