第47話 非日常の一幕

 side:第3中隊隊長Achterエイター Vonフォン Hertzbergヘルツベルク



 中隊木の加工と仕留めた獲物の解体は1個中隊では多すぎると思っていたが、撤回だ。今は、猫の手も借りたい気分だ。


 団長が2羽のレッカー鳥を連れて帰ってきたあと、第1小隊が帰ってきた。なぜ小隊だけなのか?と聞いたら、効率のため、手分けしたと帰ってきた。そこまでは良い。理解出来る。しかしそこからだ。なぜ、あのレッカー鳥を7匹も仕留めた?まずは血抜きしてそれらを解体するんだぞ?どれだけ時間がかかると思っている?


 我々12人で7羽分の解体?1人あたり1.7羽分解体するんだぞ?それに他の2個小隊も獲物を持ってくるし、第2中隊も木を狩ってくる。完全に潰れるぞ。


 そんなことを思っていたら、団長が解体するのは3羽分で良いと仰ってくれた。7歳なのにとても頼もしい。


 たしかに一日で7羽分食べるわけないしな。他からも食料届くし、団長曰く、異空間収納は時間調整も効くらしいし、なんとかなるそうだ。それなら良かった。


 それからはすぐに団長達は、また、狩りに出ていった。団長に、帰るという選択肢はないのかと聞くと、「昨日も言っただろ?家族に色々言った手前、帰りにくいんだよ、気まずい」なんて言っていた。たしかに家族や友人に大見得切って遠征に来たのに、日にち間違えて帰ってきたなんて言えないもんな。


 夕方頃には第2中隊の人たちも木材を持って帰ってきて、それらを焚き火しやすいサイズにカットした。この作業はレッカー鳥の解体より数百倍楽であった。


 第2中隊が帰ってきて、そう時間を置かずに第1中隊もまた、帰ってきて、早々に第4中隊の地雷設置の手伝いに行っていた。遠目から見て、横幅を結構広くとって地雷を設置していたので、王国軍への損害をより多くしようという団長の考えが見え透いている。


 第1中隊が連れてきた2羽のレッカー鳥は大人しくしている。団長曰く、この手の、鳥系の魔物は強者に従うらしい。大人しくしているレッカー鳥は他の隊員達からちょっかいをかけられていたが、気にせずその辺に生えてる草を食っていた。


 これでレッカー鳥が肉食なら今日捕まえたレッカー鳥を食べさせる予定だったと団長が言っていたが、周りはものすごく引いていた。


 夕飯の時間にはまた、団長が作ったバーベキューができるバーベキュー台を使って食材を焼いて食べた。


 やはりと言うべきか、レッカー鳥の美味しさは尋常じゃなく、塩を振っただけでも今まで食べてきた肉の中で最高峰の味だった。実家が貴族なので今まで何度も美味しい肉は食べてきたが、まさか野営地でそれらの肉より美味しいものを食べれることになるとは思ってもみなかった。それほどこのレッカー鳥は美味しいのだ。ぜひ養殖は成功して欲しい。



 ◇

 第4中隊隊長 Junglauユングラウ Vonフォン Hertzbergヘルツベルク


 私たち、第4中隊は団長より、王国軍と交戦するであろう位置に地雷の設置を命じられていた。


 野営地から2~3kmほど離れた場所、ここが交戦予定地だ。この辺に適当に地雷を設置しろと言われていた。この地雷も魔道具で、魔力を流して土に埋めておく。そうすると上に人が乗った時、自動的に爆発する仕組みだ。ひとつ爆発すると誘爆するので時差で爆発するようになっているらしい。


 もちろん、設置した地雷に私たちが乗ってしまっても爆発するので奥側から手前側にかけて設置している。野営地から3kmほど離れた地点から2kmほど離れた地点まで地雷を設置する。一応目印も立てているので自分で踏んで自爆なんて事はないだろう。しかし団長は7歳児なのに隊を統率してくれるし、前団長とは多い違いだ。前々団長もいい人だったが、今はどこにいるのか、アングラック様も知らないらしい。


 ◇

 side:Ryukhard von Stark


 俺ら、第1小隊がレッカー鳥を捕まえた日の夜、第2魔法師団ツヴァイの連中は宴だなどと騒いでうるさかった。酒なんて持ってきてないはずなのに何故か酒を飲んでいるやつが結構いた。


 どこでそんなものを拾ったのか聞いたら、俺らが帰ってくるまで暇だった第3中隊の連中が近くの街まで行って自腹で酒を買ってきたらしい。ついでにツマミなんかも買っていた。


 それなら無理して狩りに行く必要も無いねと言ったら、さすがに金はそこまで持って来てないから勘弁してくれと頭を下げられた。しかし、士気のためにもそういうのは必要だし、酒が好きな連中も多いらしいので俺からポケットマネーを渡しておいた。これで残りの5日間はそこまでストレスを溜めずに済むだろう。もちろん、開戦前夜は飲ませるつもりは毛頭ないが。


「団長、そろそろご就寝になられてはいかがでしょう?」


「あぁ、そうだな、どうせ明日も起きれないだろうし、起こしてくれよ」


 俺は助言をくれたアングラックの意図を理解した上で発言した。それなのに彼の顔は引き攣っていた。起こすのがめんどくさいから早く寝ろと言ってるのに、早く寝るけど、起こしてねって言われたら誰でも顔は引き攣るだろう。


 そんな1幕もありつつ野営に関してはトラブルも起こることなく、気がつけば開戦前日の朝になっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る