第45話 行動開始


 その日の夜は各々が持ってきていた食料を食べ、そのまま就寝した。



 ◇

 翌朝、別のテントで寝ていたはずのアングラッグが起こしに来た。一応持って来たアナログ時計に目をやると9:00と書いてあった。一応この世界で広まっている数字の書きは前世のアラビア数字が採用されている。恐らく、前に召喚された地球人の人たちの仕業だろう。


 しかし、季節は夏だと言うのに、9時まで寝てしまうとは。前世では夏になれば朝も暑いので7時頃には起きていた。


 9時まで寝てしまった要因は主に2つあるだろう。1つ目はここの座標。ここは帝都少し所じゃないほど北寄りで少し肌寒いというのと、テントに搭載されている自動温度調節機能だろう。いい感じの温度で俺たちに睡眠を促していたらしい。それなのによく、アングラッグは起きれたなぁ。すごい。


「本日の予定を聞かせてください。ちなみに全然団員起床済みです」


 みんな起きてるのか。そう考えると俺率いる第1小隊はなかなかだらしないのでは?


「ワオ。みんな起きてるのか。今日はとりあえず、食料の確保と焚き火ができるように山に生えてる木を伐採しよう」


 アングラッグは団員と言っているが今の段階では師団規模ではなく大隊規模なので隊員と呼ぶのが相応しいだろう。


「了解しました。振り分けはどう致しますか」


 うーん、そうだなぁ。


「今から決める。みんなを外で整列させといて。すぐ行くから」


「了解しました」


 いやぁだめだな。クリアーダがいないと早朝に起床出来ん。クリアーダだけでも連れてくるべきだったか?いや、だめだな。男しかいない大隊に1人女をぶち込んでも居心地が悪いだけだろう。他の師団には女性団員も多く在籍しているようだが、俺のところはこの前解雇した中に女性団員もけっこう居たしわ全員解雇しちゃったからなぁ。帝都に帰ったらスカウト始めるか。能力があれば男でも女でも引き入れたい。


 そんなことを考えながら軍服に着替え、ローブを着て、外に出ると既にみんなが整列していた。ちなみに俺と同室だった、小隊の3人は俺と同時に外に出るや否や走って整列しに向かった。


「おはよう諸君。集まってるな。本日からここでの活動を本格的に行ないたいと思う。アングラッグ頼む」


 俺は横に控えていたアングラッグに全てを投げつける。


「はっ。本日より各中隊に分かれて作業を開始する。振り分けは聞いていないので、これより団長から発表を行なって貰う。よろしくお願い致します」


 と、思ったら投げ返された。


「それじゃあ発表します。えーっと、俺率いる第1中隊は森に入り食料の確保。主に魔物や動物を狩る。次にアングラッグ率いる第2中隊は森の中で木を伐採してもらう多く切りすぎも良くないのでその辺は考えるように。次にエイター率いる第3中隊は第2中隊が伐採した木の加工、第1中隊が狩ってきた魔物もしくは動物の解体の手伝いを頼む。ユングラウ率いる第4中隊は平原の方に地雷を設置して欲しい。後で魔道具で作った地雷を配布するのでそれを設置するように。何か分からないことはあるか?」


 エイターとユングラウはアングラッグの補佐役の2人だ。エイターが兄でユングラウが弟らしいのだが、2人とも同じ顔すぎてわからん。


「はい」


「どうぞ」


 手を挙げたのはエイターだか、ユングラウだか、どちらか分からないが。


「地雷を設置する範囲はどこからどこに致しますか」


 どうやらユングラウの方だったらしい。


「あー、それは後で伝える。他にはあるか?………無いようだな。まぁ、何かあれば聞いてくれ。それじゃあ行動開始!」


「「「うぉぉぉぉ!」」」


 いちいちうるさいなここの大隊。



 ◇


「第1中隊あつまれ~」


 各中隊が移動開始したのを見て、俺は第1中隊に集合をかける。


「俺たちの役割は食料集めだ。中隊規模で討伐するような魔物も居ないだろうし、とりあえずはさらに、小隊に分かれて行動する。あと、このマジックポーチも渡しておく。かなりの容量入るはずだが、乱獲は認めん。この辺はクマ系、ウルフ系鳥系の魔物が多いらしい。ゴブリンはいないはずだが、もしいたのなら奴らの集落を見つけ次第全滅させる。何か質問があるものはいるか」


 マジックポーチとは俺が使う、異空間収納を魔道具にしたやつだ。バッグ型よりポーチ型の方が持ち運びやすいのでポーチ型にした。



 ちなみにこの辺は鶏肉の中でも最も美味しいと言われる、レッカー鳥の生息地でもあるのだ。やつを仕留めて今夜は焼き鳥パーティーをしたいと思っている。調味料?塩しかねぇよ。噂では塩すらいらないらしいがな。


「質問は無いようだな。それでは第1小隊は我に続け。パーティーのための食料集めと行こうじゃないか」


 俺の合図で第1小隊は箒型の魔道具に乗り飛翔した。


 俺たちは10メートル届かない程度の位置まで飛び、俺が探索サーチの魔法を使用する。


 近くに色々な魔力反応がある。人のもの、魔物のもの。人のものは大隊のみんなのもので魔物の魔力反応はウルフ系の魔物がメインであろう。しかしそんな中、一際小さい魔力を持つ魔物たちが集まる地点を捉えた。恐らくレッカー鳥だろう。想像しただけでヨダレが止まらねぇ。


「目標を確認。レッカー鳥を、ロックオン!!続けぇぇぇ!!!!」

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