第43話 単純なミス


「シンシア、それにシャルも。どうしたんだ?」


 俺がレントと反省点を話そうとしていたらシンシア、シャル、シンシアの専属メイドのジュリア、シャルに付けていたクリアーダも一緒にこちらへやって来ていた。


「そろそろ帝都のヴァイス邸に戻ろうと思ってね、もう2日も泊めて貰ってるし」


「そうか。まぁ、それなら今後は来たい時に来てくれて構わない」


「ありがとうございます!それならば、学校が始まるまでは毎日来させていただきます!」


「あぁ。でも、数日後には俺は仕事でここを空けるから来るならシンシアの相手でもしてやってくれ」


「もちろんです!」


 そう言いながら微笑むシャルの頭を撫でる。シャルにはディアナに通づる、撫でたい衝動を沸き立たせる何かがある。とても可愛い。


「うっ、恥ずかしいです、、」


「いつかは慣れるだろう?」


 そう言いながら笑いかける。


「あ、そうそう。レント、俺がいない間、剣だけじゃなくて槍とか格闘の訓練もしておけよ?手札は多いに越したことはない」


「そうだな。アニキに勝つためだ。何でもする」


「お義兄にいちゃん!私には?」


「そうだなぁ、シンシアはシャルに遊んで貰うといい。今日も楽しかっただろ?」


「うん!えへへ」


 何この子!可愛すぎるんですけど!?これは愛でずにはいられない。


「俺はもう今日は疲れたし、夕飯まで部屋でゆっくりしてくるから、んじゃ」


 俺はそう言って、訓練場から出て自室へ向かった。



 ◇


「えぇーと、ここの文字はー、うーん、難しいな」


「リュークハルト様、そろそろ夕飯の時間です。そちらの作業がひと段落着いたらご飯に致しましょう」


「わかった。今行くよ」


 自室に戻った俺は王国との戦争に出向くため、少しばかり準備をしていた。具体的には野宿する時に役立つであろう魔道具の制作だ。


 もちろん道中、宿には泊まるだろうが、目的地に着いたら基本野宿だ。そのために便利な物をいくつか作って置こうという魂胆だ。


 例えば、テント。このテントの中身を見た目より大きくしたい。あるあるのあれだ。


 しかし空間拡張の文字を施しただけでは効果がなかったらしく、上手く発動しなかったのだ。なので文字ではなく魔法陣による付与で魔道具を作ろうとしたのだが、この魔法陣もまた難しいのだ。魔法陣を描く上で基礎的なところは理解しているから、それを応用しなければならない。


 また、魔法陣だけでは発動しないので魔石を使うか、魔力で動かすかの2択なのだが、魔石を使うのはどうももったいない気がするし、魔力で動かすには継続的に動かさなくてはならないからその部分も魔法陣に組み込まなくてはならない。とても難しいのだ。



 ◇


 夕飯を食べた後も俺は魔道具作りに没頭していた。1度、空間拡張のテントは後回しにして他の魔道具を次々に完成させた。



「よっしゃ、こんなもんでいいだろ。今日はもう寝よう。ヴォル、おいで」


「キュゥ」


 もういい時間なので俺はヴォルと共に布団に入って寝ることにした。


 ◇

 ――数日後


「それじゃあ、俺はもう行くから。レント、俺が言ったことちゃんとやっておけよ?」


「わーってるよ、いいからさっさと行ってこい、アニキ。アニキが帰ってくる頃にはオレの方が圧倒的に強くなっているかもしれねぇなァ?」


「ハッ、ほざけ。すぐ強くなれるわけねぇだろ。俺だってやらることくらいやる」


 そろそろ出立する頃なのでレント、クリアーダ、アンナ、それと父上が見送りに来てくれた。朝早いのでシャルやシンシアは不在だ。アルに関しては興味が無いらしい。それに、俺数日城を空けると知ると、一旦家に帰るとか言いやがった。



 なんか、家にあるものを全部こっちに持って来たいらしい。もちろん、ヴォルもあちらにつけたが。


「団長~!おまたせ致しました!こちらの準備は万端です!」


 レントと言い合っていると俺と同じ軍服に俺特製の白い魔道具であるローブを羽織った3人組が箒型の魔道具に乗ってやってきた。


「そうか。こちらも準備は既にできているから、向かうとするか」


 やってきたのは俺の副官、副団長であるアングラック・フォン・ブラウとその補佐2人。

 アングラッグはそのポニーテールができるくらい長めの青い髪に同色の瞳にスクエア型の眼鏡が特徴的だ。体格はやや細めで身長は並程度。一見頼りない見た目をしているが魔法使いとはそういう見た目の者が多い。


 ブラウは2つある辺境伯家の片割れだ。彼は辺境伯家の三男らしい。年は22歳。17歳で帝立魔法学校高等部を卒業してそのまま宮廷魔法師団に入団。次期幹部候補として2年目から副官としてついていたが3年目に入ると、ムルが入団。当時の団長を叩きのめして第2魔法師団団長ツヴァイに就任。アングラッグの活躍が気に食わなかったムルによって雑用係に成り下がり3年が経ち、今度は俺がムルの後釜に収まり、再び副官として任命される。


 うーんなんともめんどくさい人生を送っているな。


「それでは父上、行ってまいります。みんなも、行ってくる」


「あぁ、気をつけよ」

「頑張れよ」

「「頑張ってください!!」」


 父上、レント、クリアーダ、アンナが返答をくれたが、7歳の子供を戦場に送り出す言葉じゃないよなぁ。小一だぞ、小学1年生や。


「それじゃあ行くぞ」


「「「了解!」」」


 俺はアングラッグたちを連れ、帝都の外に集合している第2魔法師団ツヴァイの団員達が待っている所へ向かった。


 ◇

 ――約6時間後――帝国と王国の国境の平原


「うーわ。ミスった~、みんなごめん。今日から6日間野宿だ」




 

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