第38話 布石


「リュークハルト様起きてくださいさ……まぁ」


 今日もいつもどうりクリアーダが起こしに来てくれる。いつもと違うことは時間が早いことと俺にシャルが抱きついていること、俺がヴォルを抱きしめていることくらいだろう。


「おはようクリアーダ。昨日、どうしてもと、迫られてしまってな。つい一緒に寝てしまった。まぁ特に問題は無いだろう」


「そういう事でしたか。今日のご予定は?」


「とりあえずヴァイス領に三頭賊ケルベロスの残党がいるからそいつらの首を持って帰る。お昼には帰る予定だ。朝飯は……パンでも持ってきてくれ。俺はもう着替えて出発の準備をする」


「かしこまりました」


 そういうとクリアーダは一礼した後、走って俺の部屋を出る。窓の外を見ると少し明るい。季節が季節なだけに相当朝早く起きたものだと実感する。


「んー、これでいっか」


 俺は昨日着ていたローブを着る。下には宮廷魔法士団の制服軍服を着ている。俺がムルと戦うと聞いた父上が勝つと見込んで予め用意していてくれたらしい。


 宮廷魔法士団の制服軍服の見た目はナポレオンジャケットというより、ランサージャケットの方が近いだろうか。普通にかっこいいのだが、宮廷魔法使い達は皆、この上にローブを羽織る。もちろん付与魔法の施されていないただのローブをだ。ローブの色でどこの師団所属か見分けるらしいが、第2魔法師団ツヴァイの色は白。俺が着ているローブも白。たまたまだ。ラッキー


「よし、これでいいだろう」


「失礼します」


 俺が着替え終えると、クリアーダが入ってきた。


「こちらをどーぞ」


 クリアーダがパンが5.6個入ったカゴを渡してくれる。


「ありがとう、仕事に戻っていいよ」


「はい、ですがいつもより早く起きたのでやることがないのです。これから30分ほどゆっくりしてから仕事に移ります」


「さいで」


 そう言ってクリアーダは部屋を出る。


 俺のせいで、早起きしたからやることがないし、寝るとまた時間を使うからゆっくりするんだろうな。てか、ちょっと根に持ってね?俺、朝弱いから起こしてもらうしかないんだけど。でもご主人の命令だからクリアーダも早起きしなきゃいけない。よって何も出来ない暇な時間が生まれる。これからはそういうのはやめて欲しいってことか?ごめんなさい。今日だけです。早起きするのは。


「それじゃ、行ってきます」


 俺が寝ているシャルの頭に手を置いて言うと、スリスリしてきた。可愛い。そういえばディアナもスリスリするの好きだよな。多分シャルは起きてる時にはぜったいにやってくれないやつだ。


 そんなことを考えつつ、俺は窓を開けて飛び立つ。窓から出た理由はドア出て、廊下を歩き出入口まで行くのがめんどくさいからだ。ちなみに今回は箒使わず魔法で飛んでいくことにする。理由?気分だ。



 ◇


 俺は今空を飛んでいる。一昨日も通ったなとか思いながら。速度は一昨日の半分くらい。別に急いでるわけじゃないしね。


 そうすると1時間と少したった頃にヴァイス領都であろう場所が見えてきた。


 流石、なかなか栄えているなという印象。大きさ自体は帝都より全然小さいものの、活気が良い。朝早くだと言うのに。


 俺は気配を消したまま領都の端っこの方へ着地する。門から入っていないので多分バレたら捕まるやつだ。だって、門の方結構混んでたんだもん。バレなきゃ平気だ。


 探索サーチを、使うと領都の外側の森に気配が9人。1箇所に3人。もう1箇所に6人。俺はそれを確認し、次の行動へと移る。予想通りすぎて笑みがこぼれる。


 そのまま俺は目的地の宿を目指す。


 そこに滞在している奴らが今回の作戦の要、ではなく、おまけ程度の奴らだ。


「この宿にショルケノという冒険者は泊まっているか?」


 俺は宿の受付にて目的の人物が宿泊しているか聞く。


「あぁ、泊まっているよ。昨日は仲間と女共を連れ込んで、よろしくやってたわねぇ」


「俺はショルケノの知り合いなんだが、どうしても今会いたくてな。どこの部屋に泊まってるか聞いても?」


「もちろんかまわないよ」


 多分女将のふっくらしたおばさんは普通に部屋を教えてくれた。


 ◇


 ――ガチャ


「うわぁ」


 そこは酒臭さと女と男が幾度も交わった匂いが充満していた。


「あぁ、見つけた」


 そして、そこには三組の男と女がいた。


「やあ、はじめまして、少し話をしたいのだがいいかな?」


 俺はショルケノの思しき男の顔に水をかけながら話しかける。


「――ぷはっ、てめぇ、何すんだ!」


「こんな朝早くに申し訳ないと思っている。でもこれはお前たちにとってもとてもいい事なんだ。話を聞いてくれるか?」


 俺は殺気を出しつつ話す。


「チッ、話せ」


 短髪の茶髪マッチョ野郎こと、ショルケノ。こいつはこの街の冒険者で結構悪いことをしているらしい。多分ここの女たちは本番ありのデリヘル的なやつだろう。こういうタイプは高い。


 ◇


「と、言うわけなんだ。どうだ?乗るだろ?」


「あぁ、そういうのは大好きだ。それに金も貰えるなんて、あんちゃんやるなぁ!」


 ショルケノはにっこり笑う


「交渉成立だ。それじゃあ、このあとすぐ行動に移すことも可能か?」


「あぁ!任せろ!もう待ちきれねぇよ!」


 あぁ、男は馬鹿で助かるなぁと初めて実感した。


 これだけ手札を用意すればなんとかなるだろう。



 ◇


 30分後


「「「やめてくれぇ!話す!話すから!やめてくれ!」」」


「お、やっと話す気になったか。じゃあ、ちゃんと吐け」



 ◇

 あとがき


 次回、タイトルにも描きますが、性的描写あります。苦手な人は苦手なタイプの描写になると思います。一応、そこは読まなくても物語は理解できるようにするのでご自身で判断お願い致します。

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