第4章 宮廷魔法士編
第36話 叙爵と初仕事
「へぇ~ヴォルくんって言うの?かっかわいぃ~、あれ、くんであってるよね?ちゃん?」
謁見の間に来た俺たちはシャルとシルフィードにことの詳細を話した。話したのだが……話すまで少し時間がかかってしまった。
シャルが泣いて抱きついてきたのだ。それはもう大号泣であった。
「うぇ~~ん、ごわ゛がっだよ゛ぉぉ」
「もうドラゴンなんかと戦わないでぇぇ」
あの状況、ドラゴンが来るかもしれない状況が怖かったのではなく、俺がドラゴンと戦って死ぬかもしれないことが怖かったらしい。まぁ、まだ6歳だもんな。……6歳だよな?ループしてるけど、6歳だよね?うん。因みにこの謁見の間には、俺、レント、ライト、ジーク、シンシア、シャル、ディアナ、シルフィード、数人の兵士がいる。父上と母上は別室に居るらしい。
そんなこんなあって冒頭に戻る。シャルはヴォルにデレッデレだ。
「アル?どーなんだ?」
「オスじゃ」
「オスて、男の子って言えよ。オスはなんかヤダ」
「理不尽じゃ」
アルはそう言いながらそっぽを向く。因みに2匹の子ドラはアルの頭の上に1匹居座り、アルが1匹抱っこしている。
「只今から帝都にいる貴族を集め、謁見を行うそうです。内容としては新たなる
俺たちがくだらない話をしていると伝令係が俺に耳打ちする。
「報告ご苦労。了解した」
「はっ」
伝令係は膝をつき頭を垂れ、この場から去る。
「みんな、正装に着替えろと父上からお達しだ。この後の謁見に出席する」
「どーせ、アニキの謁見だろ?なんか貰えんのか?金とか」
「叙爵だ」
俺はレントの問に対し、ニヤリと返す。
「「「「「「「えっ」」」」」」」
はい、みんなから驚きのお言葉、頂戴致しました。
「あ、レント、俺の賭け金どーなったよ?」
「あぁ、ムルのオッズが1.2倍、アニキのオッズが2.3倍だ。実はアニキがあの野郎をぶっ殺す瞬間に窓口に駆け込んで換金してもらってる最中にドラゴン騒ぎが起こったんだよ。でも、何とかもぎどってきたぜ、ほれ」
そう言ってレントが小袋を投げる。中には20枚金貨。俺が渡したのは10枚。オッズは2.3だから23枚。1割手数料とかほざいてたから2.3枚。小数点繰り上げで3枚引いて合計20枚。繰り上げしやがったかぁ。切り捨てろよ。
「サンキュ。ほんじゃ着替えるぞ」
◇
俺たちは誕生日回と言うかパーティーで、着た衣装を着ることにした。
俺とライトは赤を基調としたもの。レントとジークは青を基調としたもの。型はビ・ア・ラ・フランセーズのように昔の貴族が着てそうなやつだ。
俺たちは着替えを済ませ別室に案内される。その数分後にはシンシア、シャル、ディアナにシルフィードまでもが正装に着替えていた。ディアナに関しては軍服のようなものを着ている。みんなドレスを着ているのに1人だけ軍服だ。理由を聞くと、「ドレスだと動きにくいッスから!」だと。まぁ、別になんでも良いんだけど。
「お
「あぁ、可愛いぞ!」
俺はこっちによってきたシンシアの頭を撫でる。
「シャルも似合っているぞ。てか、アルはそのまんまなんだな」
「あ、ありがとうございましゅ……」
「別に我が何を着ても良いでは無いか!」
シャルは恥ずかしくて噛んでしまったようだ。顔も真っ赤だ。アルは、、平常運転だな。
でもシャルって精神的には何歳なんだ?繰り返してる分を考えると30は超えてるはずだが、反応がどうにも子供らしく可愛い。
そもそもなんでこんなに好意がダダ漏れなんだ?こんなに好意がダダ漏れな人は七瀬以来だ。しかも一応守って欲しいからみたいな理由で婚約したはずだが、なんかもう好きだよな、これは。こんなに好意ダダ漏れにされると意識しちゃうんだが。
「皆様、謁見の準備が整いましたので入場の準備をお願い致します。リュークハルト様は正面から。殿下方は陛下と共に皇族席の方へ入場して頂きます。シャーロット様はスーナー様がそろそろ到着されますのでご一緒に入場をお願い致します。アル様はリュークハルト様と共に入場をお願い致します」
俺たちが雑談していると使者が伝えに来てくれた。
「ありがとう」
「ありがとな」
「ありがとうございます」
「あいわかった」
みんなそれぞれが伝えに来てくれた者に感謝し、自分の持ち場へ行く。俺は最後の入場だから貴族たちが全員入場し終えたら正面の扉を閉め、そこに待機することになる。
◇
なんで実の父親に謁見なんでしなきゃいけねぇんだよ。確かにゆくゆくは帝国貴族になって上級貴族(伯爵以上)になって武官として功績を立てて、楽に暮らそうと思ってたのに貴族になるのはやすぎるだろ。てか、宮廷魔法士の十傑になった時点で伯爵位だけど、法衣貴族って扱いだしなぁ、普通の伯爵位以上に着けるよう、頑張らなきゃいけないな。
中からは今回の一件について宰相が詳しく話している声が聞こえる。
「それでは今回の功績者リュークハルト並びにドラゴンのアル殿のご入場でございます」
宰相の声が聞こえると扉が開く。内側に待機している者が開けてくれる仕組みだ。
「おぉ、なんと凛々しいお姿」
「あの歳で
「あの女は誰だ?ドラゴンと言っていたが」
「しかしいい体をしているではないか」
「ドラゴンが人の姿を取るというのは本当だったのか」
などなど、俺や一緒に入ってきたアルに向ける感想でこの部屋を満たす。
俺たちは陛下の前に来ると片膝をつき頭を下げる。謁見の時にしか使わないような格式張った例だ。アルは俺の横ではなく斜め後ろで同じ体勢を取っている。
「良い、正せ」
「はっ」
父上……じゃなく陛下の一声で姿勢を正す。
「今回は誠にご苦労であった」
「ありがたきお言葉。しかし陛下のご命令は討伐もしくは撃退。私はどちらも成さず彼女が帝都に来た本来の目的の手伝いをしてしまいました」
「良い良い、ドラゴンと友誼を結べるのだろう?この国にとっても良い事だ。それにその者の目的というのはそちらの子供たちのことであろう?」
「ありがたきお言葉」
「そうじゃ、あとヴォルはこやつと従魔契約を結んだのじゃ。変異種の新種ぞ?恐らく史上最強のドラゴンであるな」
「ほう?ドラゴンと友誼を結ぶだけではなく、従魔契約までするとは、なかなかやるな」
「はっ、ありがたきお言葉にございます」
「それにしてもなんという言葉使いじゃ。陛下への言葉がなっておらんな」
「これだから魔物は」
「しかし史上最強のドラゴンなど、親が子を買いかぶりすぎてるだけではないか?」
「いや、しかし風格があるではないか。この国は安泰だな」
「あぁ、いい体をしているなぁ」
「お主そればっかじゃないか」
なんか貴族たちが好きに話し出した。謁見の場だぞ?私語は慎めよ。
「ひっ、なんだこれは」
「あ、ちびった」
うるさい貴族たちに殺気を放つと単に怯える者とちびる者も居るらしい。
「それでは本題た。今回の1件によりムル派の貴族家をいくつか取り潰した。そしてリュークハルトを新たな
いくつかの貴族家とは言うけど恐らく数十の貴族家がお取り潰しになったことだろう。しかし、子爵か、悪くない。また功績を立てれば伯爵になれそうだな。因みに宮廷魔法士団の十傑は大抵普通の爵位を所持している。低いものは男爵、高いものは伯爵、辺境伯や侯爵、公爵はいないらしい。
「ありがたき幸せ。今後もこの国に尽くしていきます」
「報奨として白金貨5枚も進呈する」
「はっ、ありがたき幸せ」
白金貨5枚!?5000万円!貴族っていいなぁ。
「あぁ、それとヴァイス公爵令嬢のシャーロット・フォン・ヴァイスと我が息子リュークハルト・フォン・スタークの婚約をここに宣言する」
「ッ、、」
俺は父上を見るとニヤリと笑っていた。解せぬ。
シャルを見るとあたふたしている。しかしスーナーさんが耳元で何かを言うと意を決し、こちらに歩いてきた。
俺は立ち上がり数歩前へ歩く。そして振り返り、貴族たちの方を見ると俺の右腕にシャルが腕を絡ませる。
「このふたりの式は8年後、2人が15になった際に行う」
父上の宣言と共に俺たちは一礼する。
そしてその場は大きな拍手に包まれいい感じに終わった。かと思われたが
「では1週間後、
「りょ、了解しました」
まじかー!!王国との戦争!
後で父上に詳しくお話を聞かねば。
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