第34話 すれ違いその2



「のぅ、帝都あの街に行くのはいいんじゃが、結界が貼ってあるじゃろ?どうするんじゃ?」


「壊せばいいじゃん」


「あぁ、我はこんな奴に負けたのだったか」


 結界とは本来不可視のものだが、術者や力あるものはその結界を可視化できる。


「しっかし、誠によく出来た結界じゃのう。お主以外にもこんなこと出来る者がるのか?」


「いや、俺が作った結界を維持させてるだけだ」


「それでも十分すごいんじゃがのう。っておい、ほんとに壊すのか?」


「当たりえだろ?それ以外お前をこの中に入れる方法ないし。仕方ない」


 そう言って俺は結界を殴り壊す。


 この結界を作ったのは俺だから入ろうとすれば入れるし殴ろうとすれば殴れるけど今はシルフィードの制御下にあるからそう簡単には奪えない。よって、壊すしかないのだ。


「しかし、結界を壊してしまえばお主の仲間は混乱するのではないか?」


「別に平気だろ。実害ないし」


「そういうもんかのぉ」


「それより早く行くぞ。その姿でも飛べるよな?」


「勿論じゃ」


 そういうと人に化けたドラゴンは背中から羽を出した。


 俺は普通に魔法で飛べるので羽は必要ないが、羽、かっこいい。


「かっこいいな」


「お主もやってれば良いではないか。ハリボテでも魔法で出来じゃろ?」


「あぁ、なるほど」


 俺は水魔法で羽を背中に作った。


「形は良いが、水魔法なのが気に食わん」


「理不尽だ」


 そうは言いつつそのまま凍らせてみたが重くて維持するのが面倒臭い。


「やっぱり羽はいいや。今度考える。今はお前の子どたちを助けに行かなきゃいかん」


「そうじゃな。では行くとしよう」


 そう言ってドラゴンは飛んで行った。ムルの屋敷の方向に。その後を俺は慌てて追う。


「帝都は初めてだろ?やつの屋敷がどこだか分かるのか?」


 追いつき話しかけると、


「何を言っておる。屋敷など知らぬわ。我が子の気配くらいわかっておるわ!」


 らしい。


「さいですか。んじゃ飛ばすぞ」


「望むところじゃ」


 ◇


 俺たちがムルの屋敷に着いたのは飛び始めてから1分ほどの頃。


「怪しいな」


「そうじゃな」


 俺たちはムルの屋敷を上空から眺めている。屋敷は普通の伯爵家程の大きさで城からは少し離れているが貴族街全体から見たら割かし近い方だ。


 しかし、庭の大きさと屋敷の大きさに違和感を覚える。上から眺めてるとそれが顕著に現れる。まず屋敷全体が正面から見て左側に寄りすぎて右側にスペースがあり過ぎる。まあ、この構造自体使っている貴族もいるが、その庭に小さな小屋のようなものがある。それも不可視の結界と共に。


 俺が展開した結界は外部からの魔法、物理攻撃を防ぐもの。この小屋に展開されているのは外からは中のものが見えなくなると言うもの。


 それにこれは魔道具を使っている。恐らく自分で作ったやつではなく古代の遺産アーティファクトだろう。古代の遺産アーティファクトとは神から聞いた1000年ほど前に起こった世界大戦以前に栄えた文明の遺産のことだ。


「これも壊すのか?」


「当たり前だろ。それが1番早いんだって」


「そうじゃったな」


 こいつ、少し呆れてる感じを漂わせやがってりほんとにこれが1番早いのに。



 結界を壊し扉から中に入ると3匹の子ドラがいた。赤いのが2匹と黒いのが1匹。


「そういえばお主はこの国の王の子なのだろう?城に案内せよ。詫びを入れる」


「ん?あぁ、元々そのつもりだったぜ。ドラゴンてのは光り物が好きなんだろ?高価そうなやつをこの国にお詫びとして出すのが1番いいかもなァ」


「そうじゃな。それじゃ、1度城に向かい、宝石類を持ち戻ってくる旨を伝えれば良いじゃろう」


「あぁ、そうだな。てか、お前の抱えてる2匹は赤いのになんでこいつだけ黒いんだ?」


 子ドラ達は俺たちがこの小屋に入るとこっちによってきた。赤い2匹は親ドラの元へ、黒いやつは俺の元へ。何故だ?


「この子が突然変異体だからじゃろうな。内包魔力が多いじゃろ?」


 存在感が凄いなとは思っていたが確かに魔力量が多い。


「なるほど。でもそれはこいつが黒い理由だろ?何故俺の方によってくるんだ?」


「お主の魔力に惹かれて居るんじゃろうな。お主の魔力は何故か惹かれるものを持っている」


「つまり?」


「魔物からすればお主の魔力は近くにいて安心するんじゃ。テイマーなども同じように惹かれる魔力を持っている」


「なるほど、でもその二匹はお前の方に行っているじゃないか」


「それは親の方が安心するからじゃろ?その子は突然変異じゃ。感性が違うのかもしれんな」


「なるほどね」


 ◇

 名前:アル・ドラゴ

 年齢:2925

 種族:レッドドラゴン

 備考:原初のドラゴン。火魔法を自在に操る。各属性事に原初のドラゴンが、存在する。原初の中でも1番の戦闘力を持つ。

 ◇


 2925歳……この世界が作られたのが3000年ほど前。ばばあじゃん。てか、こいつが1番強かったんか。じゃ、他のドラゴンと戦うことななっても負けることは無さそうだな。


「てか、お前アルって言うんだな。これからそう呼ぶことにする。ドラゴン呼びだと他と被るしな」


「なんと、鑑定持ちか!?珍しいのぉ。それも彼奴ぶりじゃ!」


 ◇

 名前:なし

 年齢:0

 種族:エレドラゴン

 備考:エレは黒を表す言葉。黒とは全ての光を吸収した色。新種。全ての属性において他の原初のドラゴンを圧倒する。

 ◇


 強ぇ何こいつ。


「おい、こいつやべぇな」


「やべぇのは知っておる!いいから詳細を教えよ!」


 俺はアルに詳細を話した。


「なんと光栄な!我が子が新種のドラゴンだと!これに勝る嬉しさはない!」


「しっかし、どうするよ、俺から離れない。親だろ?剥がせ、こいつを」


「いや、その子の自由に生きさせると我は今決めた。だから引き剥がさない。この子をお主の従魔にしてやって欲しいのじゃ」


 えぇ、従魔。どーやって従魔にするん?


 ◇

 side: Leonhard von Stark


 アニキが負けた。そんな強い相手オレが戦って勝てるのか?


「シルフィード、自分で結界は作れるか?」


「は、はい。結界の作りたかはリュークハルト様より教えて貰っております」


「それじゃあ、とりあえずこの城に結界を張ろう。シャル嬢に何かあればアニキに顔向け出来ん」


「ど、どこへ行くのですか?」


「交戦するなら城のそとのほうが安全だろうな」


 オレは暗に戦いに行く意志を示す。


「そ、それなら私も行きます!邪魔はしません!」


 そういえば守られるだけは嫌だとか言っていたな。しかしそんな事言っている場合では無さそうだな……。


「いや、ここはオレとディアナで行く。きてくれるか?」


「もちろんっス!やってやるッスよぉ~!」


「それじゃシルフィード、頼んだ」


「はい、お任せください」


「ああ、任せる」


 ドォーーッッン


 そう言って外に出ようとした矢先、少し離れたところから爆発音がした。


「ム、ムル・バスーラの屋敷が燃えました!また、未だにドラゴンの姿は確認できません!」


 数十秒後伝令係の言葉と同時にまたシルフィードが苦しむと、


「城に張ってた結界が破壊されました」


「いかん、ディアナ!行くぞ!」


「はいっス!」

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