第3.5章 前任の尻拭い編
第33話 すれ違い
「伝令!帝都から約7000離れたところにドラゴンを発見!色は赤!
武舞台まで上がってきた兵士の格好をしたやつが言う。恐らく門番とかそのへんだろう。
約7000か。約7kmということはどのくらいでここまで来るのか?ドラゴンの移動速度にもよると思うが……
それにしてもやっっばい。ドラゴン?勝てるか?いや、やるしかないだろう。いよいよ俺の初仕事だ。
「父上!ムル派の貴族の粛清をお任せしてもよろしいでしょうか!?俺はドラゴン討伐に向かいます!」
俺は皇族席にいるお父様にでかい声で問う。
伝令を聞いた会場にいた民たちが騒いだ後俺の言葉を聞いてさらに騒ぐ。
「………これより新たなる第2
「はっ!」
討伐または撃退……追い払うより討伐の方が簡単だよな……?いや、今は民の安全も考えなきゃいかん。
「シルフィードッ!!」
「は、はい!」
俺がその場で叫ぶとシルフィードが皇族席から飛び降りてきた。結構高さがあるのに。多分風魔法で上手くやってるっぽい。彼女は父上と同じ皇族席にいるレントの護衛と称し皇族席にいた。
「帝都をドーム型に囲う結界を張った。俺の制御下から離すから、結界を乗っ取り維持してくれ。その間の護衛はディアナで平気だろう」
「了解しました!」
ここでレントを護衛に選ばなかったのは皇族としてこの後なにかあるかもしれないからだ。それにくらべディアナは俺の護衛以外仕事がないと言っても過言ではない。そして今の俺には護衛は必要ない。よってディアナが適当だと感じたのだ。
「それじゃあ行ってくる」
俺はそう言うと箒を出し、跨り、飛ぶ。
「おぉ」なんて、民たちが驚く声が聞こえるが構っている暇もない。
「リュートくん!!」しかしシャルがとても心配そうな声で俺の名を叫ぶから振り向いて少し微笑む。こちらも構っている時間はないのだ。
上空へ上がると少し遠くに紅くでかいモノが飛んでいる。あれがドラゴンか……。
◇
帝都をドーム型に囲った結界の外へは10数秒で来ることができた。
そのままスピードを落とさずドラゴンの元へと向かう。なるべく帝都と離れたところで戦いたい。
そこからもまた10数秒程進むとようやくドラゴンの前までやってきた。四足歩行ではなく二足歩行できるタイプのドラゴンだ。前足がとても短い。
「ここから先は通すことはできない。言葉は話せるか?話せるなら引け」
「うぬも奴の仲間か?下等生物は量だけは多いときくからのう。それならここで殺してやろう」
俺はあえて高圧的に話す。しかし向こうも1本引かず殺すとか言ってくる。
「聞いてたか?引かないなら殺すぞ?」
「我には1秒すら惜しいのだ!退け!」
そういうとドラゴンが口から炎を出す。これが
俺はその攻撃をムルと同じように受ける。もちろんローブには魔力を大量に流す。
「ふんっ、呆気なかったのぉ。早くいかねば」
「おいおい、まだ死んでねぇよ。勝手にどっか行くなって。なぁ?」
俺の箒は燃やされてしまったが魔法で俺は今浮いている。しかしあの攻撃、多分本気じゃないだろう。
「人の身で浮遊するなど彼奴ぶりじゃの。悪いことは言わん。そこを退け」
「だから無理だって。一応俺皇子だから民を守る義務があるんだよ。引いてくれ」
「無理じゃ」
俺は体長25メートル程あるドラゴンの顔の前で浮遊して話している。こちらはちゃんと誠意を見せているんだ。向こうも誠意を見せて欲しいくらいだ。
「じゃあ闘おうじゃないか。いいぜ?俺は戦っても、でも負けるのが怖いドラゴン様は戦いたくなかったりするのかなぁ??ん?」
「
ドラゴンはまた
「おいおい、芸がないなぁ。ドラゴン様よォ」
俺は直径50mはあるであろう
「童、言うに事欠いてファイアボールとな?大きさと魔力量は認めるがそれしかできないのでは我の相手は務まらんのぉ。はよう退け」
直後、俺のファイアボールは手のひらサイズにまで小さくなる。
「ナッ!!」
50m超あったファイアボールは手のひらサイズにまで凝縮された。これが直撃すれば大爆発してしまうだろう。
そんなことお構い無しにドラゴンの方へ放つ。
「はっ、ちょっ、」
ドォォォーーンッッ
しかしこれだけでは死ぬはずがないだろう。
俺は間髪入れず殴り掛かる。限界突破はしない。ただ身体強化はできるだけ掛けている。
「ゔっっ」
ドラゴンの無防備の腹部目掛け殴ると苦しそうな声を上げるが構わずに2撃3撃と、殴りまくる。その後アッパーを食らわす。
「カハッ!」
ドラゴンはそのまま落ちていき、地面に蜘蛛の巣模様のヒビを入れる。
「話を聞く気になったか?」
俺は倒れてるドラゴンの顔に水を掛けながら話す。
「わ、わかったのじゃ!だから水をかけるのはやめて欲しいのじゃ!」
「わかった。じゃあ話せ」
「わかったのじゃ」
そういうとドラゴンはつらつらと話し始めた。
まず、最近旦那が若い女ドラゴン達と遊んでいたらしくそろそろ頭に来た
なぜすぐ行動に移さなかったかと言うと、自分の子らなら大丈夫と思っていたが、今日の明け方くらいから怒りがふつふつと湧いてカチコミに来たんだとか。
「その~なんかごめんな?俺も自分の正義にしたがって戦ってたとは言え、ボコボコにしちゃって。悪いのはこっちなのにさ」
「それはもう構わないのじゃ。我も先に話すべきだったな」
「あともうひとつ謝ることがあるんだ。ムルはさっき俺が殺したばっかなんだよ」
「そうか……それなら仕方ないな。我はもう帰るとするよ」
「いや、ムルが連れ去ってきた子供たちが帝都にいるんだろ?俺が中に入ることを許可する。来いよ」
「それはありがたいのじゃ。そうしてもらおう。ちょっとまっておれ、」
そういうとドラゴンは人の姿に化けた。身長は160センチ程、7歳の俺よりはでかい。しかもドラゴンの尻尾みたいなのが生えてる。服はオフショルの着物みたいなのを着てる。あとナニがとは言わんがでかい。しかし俺が好きなのは慎ましいタイプだ。まぁ、異論は認める。
「てか、下等生物とか言ってた人間に化けるんだなドラゴンって。バカのか?」
「
「まぁいいだろう。とりあえず帝都に行こう。ムルの屋敷に子供たちがいるかもしれない」
「いいのか?皇子として、襲撃して来た相手を招き入れるのは」
「構わんだろう。誤解だったと俺から話しておく」
「感謝するぞ」
そう言って俺たちは帝都へと向かった。まあ、普通に飛べば1分かからんけど。
◇
side: Leonhard von Stark
アニキあの飛ぶ前笑ってた……いや、嗤ってたな。ドラゴンと戦うってのによく嗤得るな。
アニキが飛んでいってからは凄かった。親父は周りに指示を出してムル派の貴族を捕縛してるし、シルフィードは結界の維持をしている。ディアナはその護衛をしているし、シャーロット嬢はただただ祈ってる。
「おい、ここにいるより城に戻った方が良くないか?馬車を呼ぶから準備してくれ」
オレはここより安全な城に向かうことを提案する。シルフィードだって安全なところで魔法を行使した方がいいだろう。
「そう、ですね。行きましょうか」
シャーロット嬢が賛同してくれる。
「んじゃ、アタシはシルフィードを担いで行くっス」
結界の維持に集中しなきゃ行けないらしいのでディアナに担いでもらっているシルフィード。
アニキが飛んで行った方向を見るとちょうどドラゴンが吐いた炎に飲み込まれたところだ。
「リュートくん!」
シャーロット嬢が悲鳴をあげるが大丈夫だろう。あのアニキだ。しかし結界はすごいな。あのブレスが結界に当たっているが、壊れていない。
予想どうりアニキはなんともなかった。むしろ反撃している。アニキがドラゴンを殴ったのを尻目に馬車のかなに乗り込む。
「リュートくん大丈夫かなぁ?」
「リュークハルト様なら大丈夫ッス!心配するだけ無駄ッスよ!」
ディアナの言うとうりだ。どうせ何とかしてくれる。
オレたちの馬車は数分で城まで着く。アニキたちは見えない。遠くへ行ったか下に落としたかどちらかだろう。
親父からは謁見の間に居ろとの事だったので馬車から降りると謁見の間へ行く。
すると
「グッ、あっ、、結界が破られました」
「「「え?」」」
シルフィードが苦しむ声を上げると結界が壊れたと言った。
オレとディアナとシャーロット嬢は困惑の声をあげる。
アニキが負けた!?
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