第30話 戦いの前
「朝です。起きてください」
いつものようにクリアーダの声で起床する。
「ああ、ようやくこの日がやってきたか」
いつもの朝。起きてからレントとトレーニング。体を綺麗にしてから朝食。いつもう通りのルーティーン。
「アニキ、頑張れよ」
「兄上なら負けることは無いでしょうけど、応援しています」
「ねぇ、賭けしない?僕はリュートに銀貨1枚!」
朝食を摂っているとレント、ライト、ジークから応援のメッセージを貰った。ジークのは応援だか知らんけど。
「そんなん俺もアニキにかけるに決まってるだろ!」
「僕も兄上に賭けたい。これじゃあ賭けにならないよ、ジーク
「3人ともありがとう。ちゃちゃっと終わらせるよ」
「リュートくん、頑張ってね」
「ありがとうシャル。あんな雑魚一瞬だよ」
隣に座り朝食を摂っていたシャルも応援してくれている。昨日帰ったのが遅い時間だったので城に泊まることにしたのだ。
「リュークハルトよ、雑魚など言うでない。一応
「その第2
向かいに座っていた父上からすれば一応自分の臣下なのだ。形だけは擁護しなくてはならない。内心はどうだか知らないけど。
「あら?リュートちゃんは強気なのね~?お母さん、強気なリュートちゃんも好きよ~?」
父上の隣で俺のお母さんこと、スエグラン・フォン・スタークが言う。金髪に翠眼の美人さんだ。歳は……内緒である。ちなみにツワイト帝国のお姫様だ。ツワイトは我が帝国と双璧をなす帝国である。これからも仲良くしましょうという事でツワイトのお姫様である母上と父上は結婚した。ちなみに俺の叔母にあたるお父様の妹君はツヴァイトの現皇帝の奥さんだ。うちも大概だが、向こうも政略結婚とは思えないほ仲がいいらしい。
「やめてください、母上。そういえば父上、今回のムル・バスーラとの戦いは決闘方式で良かったのですか?」
「あぁ、その予定だ。向こうにもそう伝えている」
決闘方式とはどちらかが降参するか死ぬまで戦う方式のことだ。ちなみに俺はあいつを殺すつもりで戦う。だって気に食わないし。
「ありがとうございます。それでは俺はもう行ってきますね。あぁ、レントこれを全部俺にベットしといてくれ」
俺はそう言って金貨が10枚入った小袋をレントに投げた。
「手数料は1割な」
「それはとても良心的だな。頼んだ」
この世界の金貨10枚は日本で1000万円程の価値があるだろう。しかし今の俺からしたら大金……まぁ、大金だけど簡単に出せる額だ。理由は3年前にお父様と商品化について進めたいと申し出た将棋と囲碁、2年前に売り始め、帝都ではとてつもない人気を博している。もちろん貯めたお金で父上専用の将棋盤など諸々作った。そして去年、リバーシを発売した。いわゆるオセロだ。リバーシは子供達に人気の商品となっている。ライトとジークも将棋と囲碁に飽きたらリバーシ、飽きたら将棋、というように上手くローテーションを組んでいるらしい。
◇
場所は序列戦が行われる会場。夏に宮廷魔法士の序列戦、冬には騎士団の序列戦がある為、ちゃんとした御前試合ができる所を作ろうということで使われていなかった帝城近くにある皇族持ちの空き地を使いコロッセオのような壁、武舞台、観戦場を作り貴族達を招待し、御前試合を行うようになった歴史がある場所だ。
時刻は午前8時50分。序列戦の選手入場が午前の9時。リュークハルトが朝食を食べ終えたのが8時過ぎ、リュークハルトはその後自室に戻り服型魔道具の作成に励む。それで8時40前。会場まで馬車を使い10分も掛からない為8時40分に城を出ても間に合う近さである。選手、というか序列戦に参加する者たちの会場入りが30〜10分前だ。リュークハルトは概ね時間通りに動いている。
30〜10分も前に集まって何をするのか。それは選手たちに精神を集中させる時間を与えているだけに過ぎない。選手たちにはそれぞれ違う待機室が与えられている。しかしリュークハルトに精神を集中させる時間は必要ない。ムル・バスーラは取るに足らないという事だ。
リュークハルトは自分に与えられた個室で御前試合で着る服へと着替えていた。
「よしっ。完璧だろ。どーやって戦意へし折ろうかな?」
彼がそう言うとスタッフからの指示により選手入場の準備を始めた。
◇
選手入場。コロッセオのような闘技場にて、観客たちに選手の紹介をしてから序列戦を行う。しかし、俺が入場した途端、それまで盛り上がっていた会場が静まり返った。
恐らく俺のローブに原因があるだろう。周りを見ると他の選手は黒か灰色のローブ。しかし俺が着ているローブは真っ白。純白だ。仕方ないじゃないか。付与魔法を施すにはより良い品質のモノが必要なのだ。そのため質の高い素材を集めたらたまたま白だっただけ。仕方ないよね、うん。
「それではッ!いよいよやってまいりました!宮廷魔法士による序列戦です!本日は最終戦に第3皇子殿下であるリュークハルト様が宮廷魔法士第2席である第2
司会の人は拡声の魔道具を使っている。これは
そして、観客からは歓喜の声が溢れる。ちなみに会場は1階席と2階席に別れていて1階席は平民用、2階席は完全個室の貴族用である。完全個室と言ってもそこまで広くないのでたくさんの貴族がお呼ばれされる。
「本日戦うのは宮廷魔法士第3席である第3
スターム殿の部下の名前?忘れたわ。
「そして!お次に対戦するのは!第4
あんなやつの愛弟子の名前なんて覚える価値なんぞないわ。
「そして!最終戦!なんとこれは今までの模擬戦形式とは違い、決闘方式のようです!リュークハルト第3皇子対第2
決闘方式と言ったところでざわめきが増す。そりゃそうだ。どっちかが死ぬかもしれないんだし。
◇
俺の前の2試合は簡単に終わった。やはり宮廷魔法士の十傑だけあってめちゃめちゃ強い。ムル・バスーラの愛弟子がシュレイヒトさんに序列戦を仕掛けた理由が、宮廷魔法士のくせに突出した何かが無く、全体的に高水準なのがムカついたんだとか。子供だな。
「いよいよ最終戦!選手入場お願いします!」
◇
・序列戦
スターク帝国における、宮廷魔法士の序列戦とは、下の者が上の者に挑む形で成立する。もし戦いの申請がひとつもなかったら、文字どうり、十傑による序列戦が始まる。しかし第1席だけは変わることは無い。第2席から第10席までで下から上へ申し込む。
――『中等部進学試験これだけ知ってれば多分受かる!』より引用
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