第29話 救出とその後
「あ、わりぃアニキ。こいつ切って良かったやつだよな?」
パレルトンと名乗った男の体がレントの手によって切られてしまった。
「ダメという訳ではないが尋問をしようとしていたんだ。本当は情報を吐かせたかった」
「本当にすまねぇアニキ。アニキが女を抱えてるから戦えないのかと思ってつい」
なるほど。シャルが俺に抱きついてきていたのでそちらに手一杯で戦うことが出来なかったと思っているのか。それならまあ、仕方がないだろう。
「いや、大丈夫だ。ありがとうレント。そしたら、あと2人頭がいるはずだからそっちを探すか」
「あぁ、そうしよ――」
「その必要はございません」
レントが俺の提案に賛成の意を示そうとした瞬間シルフィードが男2人の首根っこをつかみ、引きづりながら出てきて、そして、飛んだ、と言うかジャンプして下に降りてきた。
「そいつらは?」
「はい、トーリノス、ロメントと名乗っておりました。また、このトーリノスと名乗った者の方がロメントと言う者よりも強者でした」
俺の問いに答えるとさっさと彼らを掴む手を離し、男二人がうつ伏せに地面に倒れる。まだ生きているようだ。急所を突かれて気絶しているらしい。
彼らの体をひっくり返し、仰向けにさせると服の鳩尾辺りが皺になっていた。恐らくシルフィードが強力な風魔法を打ち込んだのだろう。
「そういえばあと3人ほど幹部がいるらしいのですが、それらしい気配は感じませんね」
シルフィードに気絶させられた男どもを哀れに思っているとシルフィードがそんなことを口にした。こいつ、残りの3人もボコボコにするつもりなのだろうか。
「それならヴァイス領の領都の方にいるかもしれません」
俺の腕の中にいたシャルが思いついたように言う。
「領都?あぁ、なるほど」
確定だ。シャルの今までの繰り返しの中でシャルを殺してきた賊は
「どういう意味だよ?アニキ」
「いや、知らなくて良い。この件は俺に任せておけ。あと、シルフィードか狩ってきた2人はシルフィードの功績、パレルトンとかいう奴はレントの功績。幹部の3人は俺に任せておけ。2日後に狩りに行く」
「は?今から行けよ。その方が早いだろ」
「俺は明日用事があるんだ。明日宮廷魔法士の序列戦があるだろ?あれに参加するんだよ。だから忙しいの。わかったか?わかったなら帰るぞ」
ヴァイス領都にいる
◇
「よし、そんじゃあ、シャルが前でディアナが後ろな」
「うぅ、やっぱり抱きつくのは畏れ多いッス……」
「じゃあ走って帰るか?」
「それはいやッス!喜んで抱きつかせて頂くッス!」
箒の魔道具の配置だが、行きのディアナの位置にシャル、俺の後ろに抱きつくような感じでディアナという配置だ。それに抱きつくのは畏れ多いとかほざいてるけど、めんどくさいから走らせて帰ろうとしたら落ち着いた。
ちなみに、パレルトン、トーリノス、ロメントの3人は首を落として異空間収納にぶち込んでいる。あの屋敷にあったお宝なども異空間収納行きだ。
「それじゃあ行くか」
俺がそう言うとレントを箒に乗せたシルフィードか箒を浮かすのと同時に俺も箒を浮かす。行きより人数が多い分バランスをとるのが難しい。
「おぉ、混乱してんなァ」
上空50mくらい上がった頃だろうか。レントがこぼした。確かに俺が作った壁の中で生き残った賊の下っ端共は慌てふためいていた。みんなが家から出てきて走り回っている。中には壁を越えようとする者もいるが10mは来れられまい。
例の屋敷を中心に半径100m弱の円上に壁を作ったので至る所で壁を登る賊どもが見受けられる。
「ハハッ!あいつら馬鹿だろ!なんで何回も壁を登ろうとするんだ?何回やっても同じなのによォ」
「そりゃ、馬鹿だからだろ、笑ってやるな」
レントのバカにするような発言につい、便乗してしまう。だって滑稽だから。
「どーやって殺す?火を放ちまくるか?水没させるか?いっその事凍らせちまうか?」
「火炙りだろ!」
「水没させるとそこから壁をよじ登る輩も出てきそうですね。水没させた後にすぐ凍らせましょう」
「自分は分からないので任せるッス!」
俺の問にサイコパスなレントと冷静に考えるシルフィードが提案する。ディアナは、うん。分からないのなんでイケイケどんどんな雰囲気持ってるの?楽しんでるじゃん。シャルは慌てふためく賊たちを眺めているだけだ。
「そんじゃあ水入れて凍らせるか」
俺はそういうと俺たちの上空にめちゃめちゃでかい
「うぉーでっけーなァ!」
レントがめちゃめちゃ喜んでる。でも、俺たちの真上に出現させてんだ。このまま落としたら俺たちまで巻き込まれる。
「シルフィード、避けるぞ」
シルフィードに指示を出し水球の真下から回避し、真上に来る。
この水をどーやって壁の中に入れよう?今はこの
「早くやろーぜ!アニキ!」
あぁ、ウキウキしてらっしゃる。これはもう落とすか。
バッシャーーッン
「
ピキピキピキ!
地面に衝突した瞬間凍らせたので当然その反動で上に上がった水も凍る。つららのように鋭い先端が上を向いている。
「まぁ、こんなもんでいいだろ。帰るぞ」
◇
「守られるだけは嫌、と言いましたよね。頑張りました」
なんてシャルが言っていた。それにしてもちゃんと有言実行するんだね。でも途中でパレ某が現れて護衛は殺られ、シャルも連れ去られた。多分その場に居合わせたパレ某さん以外の賊はぶっ殺したんだろうなぁ。シャル偉い。
俺はそのままシャルの頭を撫でるが耳まで赤くなっている。可愛い。
死んでいた賊は燃やした。跡形もなく躊躇いなく。
◇
「シャル!」
「お父さん!」
無事帝都まで戻ってきた俺たちはシャルとスーナーさんの感動の再会の場に居合わせた。
ここは城の部屋、お父様の執務室である。帝都にあるヴァイス邸に行ったがスーナーさんは城にいるとの事で城に来たあと居場所を場内の者に聞くとお父様の執務室にいると教えてくれたのでここまでやってきたと言うわけだ。
「ありがとうリュークハルトくん!」
「構わない。やりたくてやった事だ。それより亡くなった護衛達の遺体を持ってきているんだかどうする?」
一昨日行われた縁談の場とは違いスーナーさんに敬語ではなく上に立つものとして振る舞う。明日大事な1戦があるのだ。転生してきてからの素であるこの喋り方の方がリラックスできるまである。
「それなら明日――は、第2
「わかった。それじゃあ、俺は明日に備えてもう寝ますね」
「あぁ、ご苦労だった」
お父様からのお言葉を受け俺は部屋に戻り寝た。
◇
レビュー、コメントありがとうございます。約1ヶ月何も無しでごめんなさい。星とかくれたら嬉しいです。
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