第27話 今、やるべき事
「リュークハルト様、朝です」
「……あぁ、おはようクリアーダ」
昨日はあの後、すぐ解散し、俺はお父様とのお話を回避すべく直ぐに部屋から逃げ、レントから限界突破のことについても答えるのがめんどくさいから逃げて夜ご飯も食べずに寝てしまった。そして、結局スーナーさんにも同様のペンダントを渡しておいた。もちろんお金は貰ったよ。金貨を5枚ほどね。日本円に直すと500万円!商売でも始めようかな俺。
というか、ディアナはレントに詳細教えてなかったのか?俺がレントに説明するのがめんどくさいからディアナに教えたと言うのに。
そんなわけで俺は昨日直ぐに寝てしまったわけだ。それに今頃シャルは実家に帰る支度をしているだろうし、こっちはこっちでやることをやらなきゃな。
◇
「たのもー」
ということでやってきました。宮廷魔法師団の事務所。ちなみに王宮内。
「はいハイハーイ、今行きまーす」
扉の向こうからは女性の声がした。
ガチャ
「お待たせ致しまし―――たぁぁぁ!?殿下!?殿下がお越しとは露知らず、無礼を働き、大変申し訳ございません!!」
中からは堂顔の黒髪ロングの女性が出てきた。身長は160cm弱だろうか。黒縁メガネをしていて宮廷魔法師団の制服の上にそれっぽい白衣を着ている。そして開口一番、叫びやがった。そして90度いやもっと頭を下げた。
「よい。アポなしで来たのはこちらだ。頭をあげてくれ。それより貴女はどこの所属か?」
「は、はい私は
「そうか。貴女はあの『マルチ少女』殿だったのか。それにしてもクリヒカイト……あの伯爵家か。マルチな人間が産まれてくるのも道理だな」
「は、恥ずかしいのでその2つ名はお止めください」
彼女はよっぽど2つ名を気に入っていないらしい。顔を真っ赤にして恥ずかしがっているし、声が上ずっている。ほんとに気に入っていないらしい。
マルチ少女、実はダブルネーミングで、彼女がこの2つ名で呼ばれる理由は単純になんでも高水準で熟してしまうと言うのと、2つ3つのことを一緒に熟してしまうらしい。
クリヒカイト家から彼女のような逸材が産まれてくるのが道理と言ったのは彼女の両親は2人とも魔法使いだが、得意魔法が全く違うので上手く引き継げば彼女のような逸材が産まれてくるわけだ。
本当はクリヒカイト家現当主は辺境伯への陞爵を打診されたが、断ったらしい。理由は辺境伯爵になると国境を領地とするため帝都から離れてしまう。まだ幼いシュレイヒトが帝都の学園に通う際、とても長い道のりを彼女に行かせる訳には行かないと比較的帝都に近い伯爵で止まっているらしい。
それなら帝都にもっと近い侯爵にしてもらえば良かったじゃないかと思うかもしれないが侯爵は文官、辺境伯爵は武官として扱われるため、武力に秀でているクリヒカイト現当主は侯爵にはなられなかったらしい。
話が脱線したが、第4
「すまない。その2つ名では呼ばないようにする。第4
この国の宮廷魔法師団の師団長クラスは自分の師団の名前で呼ばれることが多いので彼女にはシュレイヒトでもクリヒカイトでもなくフィーアと呼ぶのが無難かなと感じた。
「あ、ありがとうございます。殿下。それよりなにか用事があったのではないでしょうか?」
「ああ、そうだ。ここで話すのもなんだし、中に入れてはくれないだろうか」
「あ、そうですね。そちらの方もご一緒で?」
「ああ、頼む。行くぞクリアーダ」
「はい」
親切なことにフィーアが扉を開けて待っていてくれるので俺とクリアーダは遠慮なく入る。
中は高校の教室のような広さ。合計1000人を擁する宮廷魔法師団には小さいかと思うがここは事務室。大抵の者は書類を届けに来る程度で済む部屋だ。そして……紙が机の上に山積みになっている。
事務作業は各10師団から1師団、更にそこから20人を出す。各師団100いるので5日間で1個師団分回すということだ。今は第4
「本題なのだが、2日後の序列戦、この俺、リュークハルト・フォン・スタークがムル・バスーラと戦う。もちろんただのお遊びではなく決闘でだ。そのことをやつにも伝えておけ」
事務室内のおそらく話し合い用の机と椅子が置かれたところに座らされた俺はド直球でそう言った。
「え?ムル・バスーラ……まさかツヴァイ殿と戦うのですか!?」
彼女が叫ぶと事務作業をしていた者たちがこちらを見る。ツヴァイとはムル・バスーラの事だ。彼は第2
「あぁ、全て吐かせるためにな」
「ま、まぁ、私がどうこう言える立場では無いので一応彼には話を通しておきます」
「礼を言う。それでは話は以上だ。貴重な時間をどうもありがとう」
「ありがとうございました」
そう言って俺とクリアーダは部屋を後にした。朝起きてすぐ行ったのでまだ朝食すら食べていない。
その後は午前中、いつもどうり走り込みをした後昼食を食べレント達と訓練をしたいたその後は夜ご飯を食べて寝た。
次の日は朝食前に少し運動をし、その後走り込み、昼食、訓練をした。
そして夜ご飯を食べ終え、部屋に戻り、何をしようか迷っていた時、俺の方へ強い魔力反応が来た。これはシャルに渡した物の反応だ。彼女になにかあったのだろう。
シャルが帝都を、出てから2日目の夜、伯爵領までは3日ほど。ということはほぼ伯爵領の近くで彼女に何かがあった。
そのことを頭の中で一瞬で考え後、自室から駆け出しながら俺の部屋にいた、クリアーダに伝言をお願いした。内容は「シャルに危険がある」とだけ。
そして、隣の部屋のレントの部屋へ突入。彼はシルフィードから勉強をさせられていたが、そんな場合じゃない。
「レント!シルフィード!急用だ!早く外に出てくれ!俺はディアナを見つけ次第外に出る!」
俺の余裕のない表情を見て2人とも何かを理解したのか頷き外に出る準備をはしめる。
ディアナ、ディアナはどこにいる?俺は無属性魔法の
俺は急いで階段を下がり、ディアナ部屋をノックもせずに開ける。
「ディアナ!風呂はもう入ったか!?入ったなら着替えて外に出ろ!まだなら今すぐついてこい!」
「は、はいっス!」
まだメイド服を着ていたから多分入っていないはずだ。いや、でもいつもお風呂上がりもメイド服着てるよなあいつ。まあいい。
◇
――2分後王宮中庭
「シャルになにかあった。助けるからついてこい」
「シャル?兄貴の女かァ?アニキが言うんならなんかあったんだろうけどよ、後で説明しろよ」
「あぁ、わかってる。とりあえずシルフィード、これを持ってくれ」
そう言って異空間収納から魔女が乗るような箒を出した。もちろん魔道具だ。
「これは……なんですか?」
「それは魔道具だ。俺が作った。魔力を流せば浮き上がる。あとは自分で風魔法を使って移動する魔道具なんだが、お前がレントも乗せてそれを持て。それが1番速い。ディアナは俺と乗れ。高速で飛ぶから口は開けるなよ舌噛むから。以上」
みんな戸惑っているが仕方ない。
俺は箒に跨り前にディアナを乗せる。ディアナは両手とも箒に手を付いていて、俺は左手はバランスを取るために箒に手を着くが右手はディアナが落ちないよう腰に手を回し支えている。それを見てレントたちも「失礼致します」「おう」なんて会話しながら同じ体制を取る。
「目標は西方、ヴァイス領近くだ。俺たちが先に行くからついてこい。飛ぶぞ、ディアナ」
俺はそう言って飛び出した。シャルを助けるために
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