第26話 解決策
俺はシャルとの婚約を受けることにした。
「それじゃあこれを持っておけ」
俺は最近使えるようになった異空間収納から小さい魔石の着いたペンダントを取り出し、シャルに差し出した。
「あ、はいありがとうございます。というか、今サラッと空間魔法使いましたよね!?」
「ああ。 まあ、そんなことはどうでもいいんだ。これは魔力を流せば俺に場所がわかるように魔法が付与してある。今は声を届ける魔道具を製作中だ。それが出来ればそれも渡す」
「……とんでもないものをくれましたね。ありがたくもらっておきます」
「リュークハルト。後で話がある」
「あ、はい」
そりゃそうだろう。シャルに渡した魔道具はそれはもう、一流の魔道具師でも作れるものはそう居ない代物だ。ましてや声を届ける魔道具なんてのは
先程のシャルの話から賊の数が多いことがわかった。
この帝国で1番規模がデカイ賊は
おそらくシャルを再三襲っていた賊は三頭賊だろう。ではなぜこのタイミングで渡すのか?
「でもなんでこんなもの渡すのですか?ヴァイス領内は安全ですし帝都からの帰りに襲われたことは1度もありませんよ?」
「いい質問だ」
このタイミングで渡す理由は、三頭賊は帝都とヴァイス領の道中にシマがあるからだ。
今まで襲われたことがないから大丈夫?それはレントが三頭賊と関わっていた時の話だろう。 今回のレントはおそらく三頭賊とは関わりが無いはずだ。そうなれば三頭賊はヴァイス領近くではなく帝都からヴァイス領の道中にいると考えるのが妥当だ。
加えてヴァイス家は公爵家。つまり馬車も豪華なので盗賊からしてみればいい餌だ。その分護衛もしっかりしているだろうが、相手は三頭賊だこの帝国でさえ攻めおとせていないのだ。盗賊は壊滅させても奴らが奪った金品程度しか手に入らないし、その量が多いとも限らないし、取り返したところで持ち主に返すケースもある。それに戦争と違い領地を奪うことも出来ないので旨みがないのだ。
そんなこんなで規模が拡大し続ける三頭賊の討伐は課題とされているがその三頭賊が襲ってくる可能性が1%でもあるのならこのペンダントを渡しておいて間違いはないだろう。その旨を伝えた。
「よく考えられているな。では実際スーナーのいる馬車が襲われたらどう対処するのだ?」
「はい、それはまずシャルに渡したペンダントにシャルが魔力を流します。そうすると俺が空を飛んでシャルのところに向かい、三頭賊を討伐。この流れです」
「本当にそんな簡単に行くものなのか?」
「ではレントとディアナ、シルフィードを連れて行きます」
「いいだろう。しかしその3人も一緒に空に飛べるのか?」
「はい。魔道具は開発済みです」
「後で話がある」
「……はい」
とりあえず、お父様から許可が降りた。一体何個お話しなければいけないのか……。
「あの、多分お父さんは一緒に帰れないと思うのでお父さんにもそのペンダントを渡してあげて欲しいんです」
せっかく解決したと思ったところにシャルが爆弾をぶち込む。
「それはどういうことかなシャル!?」
「お父さんうるさいです。毎回お家に帰る前にお父さんに仕事ができて別々に帰ることになるんです。なので多分無理かと……」
なるほど、そういう事ね。
「その仕事とやらを今から着手すれば一緒に帰れるのではないか?スーナーはこれでも有能だ」
「はい、そうなんですけど、私がお父さんから聞いた話ではムス・バルーラっていう人の家を捜査しに行くって言って時間がかかるから先に帰るようにって行っちゃったんです。家宅捜索する時って大義とか必要なんですよね?」
なるほど、その手の話はよく時間がかかる案件だ。捜索し、それをまとめ、上に報告。また被告の処遇など判断よく考えてるな……ていうか、ムス・バルーラって誰だ?もしかしてムル・バスーラのこと?
「もしかしてムル・バスーラの事か?確かにあいつはいい噂聞きませんよね、お父様」
「あぁ、そろそろ証拠が出揃うからスーナーをバスーラの屋敷に向かわせようと考えていたが……疑っていた訳でないのだが、本当に繰り返しているんだな、お前の娘は」
「まさか、まだシャルのことを疑っていたのかい!?ヒドイよ!シャルが嘘をつくわけないし!!こうなったら、今からやつの屋敷に行くしかない!」
「スーナーさん、うるさいです」
「スーナー、静かにしろ」
「お父さんうるさいです」
「…………」
ムル・バスーラ、あいつは嫌なやつだとは思っていたが、国として対処しなければならない程やばいことをやらかしたと言うことだよな。
奴は元平民だが、宮廷魔法士団の第2席だ。それに、宮廷魔法士団の十傑は、元平民でも1代貴族として伯爵位を持つことができる。もちろん1代貴族なので領地は持たないし、子爵位、男爵位を持つものが宮廷魔法士団の十傑入を果たせば1代限りのの伯爵位を持つことができる。もちろん次代は元の爵位に戻る。
さらに、宮廷魔法士団に入るだけでも1代貴族として男爵位を持つことができる。
元々伯爵位を持っていたものが宮廷魔法士団の十傑となった場合は普通の伯爵位を持つものよりも権力が大きい。しかしそれでも、辺境伯、侯爵、公爵よりは権力が弱いが。
それじゃあ、普通の伯爵家と1代伯爵家どちらが上かと聞かれたら普通の伯爵家だ。当然だろう。
話が逸れてしまったが、奴は元平民とはいえそれなりの力を持つ。なので問答無用で家宅捜索!なんて真似はできないのだ。めんどくさいよね。
「シャル、ちなみになんだけど、スーナーさんが家宅捜索しに行くって言ったのは何日後?」
「今から4日後です。4日後に帰る予定だったんですけど、その日の朝に伝令が来てそのままお父さんが家宅捜索しに行くって行きました」
あ~4日後ね、それじゃあ無理か。ごめんなシャル。
「どうした?リュークハルト。何かいい案でも思いついたか?」
「あー、まあ、はい。3日後に宮廷魔法士団の序列戦かあるじゃないですか?そこで俺がバスーラと戦って全て吐かせれば一日でも早く済むかなって思ったんですけど、無理っぽいですね。どっちにしろスーナーさんと帰れないんだし、シャルは早めに帰って家でゆっくりしておいた方がいいんじゃないかな?帝都に屋敷があるとはいえ、実家の方が寛げるでしょ?」
「いい案だ。一日早くなるだけでも全然違う。それに、シャーロット嬢も早く帰ることをおすすめする。君はまだ初等部の1年生なのだろう?」
「はい、ありがとうございます。では私は明日にでも帰宅致します」
お父様がわざわざ初等部の1年生と言ったのはシャルの誕生日を知らないからだろう。初等部の1年生は6歳か7歳。俺は昨日7歳になったばかりだが。
そして、俺はこの時知らなかった。今は8月の下旬。学園は
なので入学から今までの数ヶ月間帝都に住んでいたのだ。数ヶ月も住んでいればもう慣れる頃だろう。それなら実家とさほど変わらないほど寛げる。故に俺はちょっと余計なお世話をした。このことに気づくのはまぁ、6年後位かな。
◇
あとがき
こんにちは。修正した所があるので報告しておきます。鑑定時に出てくる称号に関して、王位、帝位、神位に関して、少し変えました。例えば前までは
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