第23話 俺の秘密

「何周目とはどういうことでしょうか?リュートさん?」


 昨日のパーティーからシャルには愛称で呼ぶように言ってたけど、愛称+さん付けって違和感あるよなぁ。さっきのは咄嗟に呼んじゃったとか?


「ちょっと待ってくれないかな?さっきから気ななってたんだけど2人とも愛称で呼びあってるの!?シャルはさっきリュークハルト様って呼んでたのに!?」


「スーナーさんうるさいです。俺は今シャルと喋っているので静かにしてください」


「さっきのは咄嗟に呼んじゃったから……っ!」


 ホントに咄嗟だったのかよ……。てか素直に答えなくてもいいものを。


「ていうか、シャル。お前もう、戻れないぞ?」


 俺は苦笑いから脱しようと真剣な顔でシャルに言う。


「へっ?もうやり直しが効かないということですか!?」


 やり直しが効かない。つまりは今までの繰り返しで何かを成そうとしていた可能性が高い。そしてそれを成す前に死んでしまった可能性も高いだろう。


「やり直しが効かない、ね。シャルは今までの繰り返しで何を成そうとし、何度死んだ?」


「……そこまで分かっているのですね。私は何かを成そうとしているわけではありません。ただ天寿をまっとうしたいだけなんです。死んだ回数、いえ、殺された回数は10回です。今回で11周目になります」


「ちょ、ちょっと待ってくれシャル!繰り返してるとはなんの事だい!?殺されたって、いつどこで殺されたと言うのだい!?シャルは今ここにいるじゃないか!!」


 スーナーさんは取り乱している。対してお父様は一瞬驚いた顔になりながらも無言を貫いている。


「私からも1つ聞かせてください」


「構わないが、シャルの10回分の人生とこのに縁談をしに来た理由が聞きたい。シャルの質問に答えたら答えてくれるか?」


「わかりました。では早速聞きますが、リュートさんは何者ですか?私が今まで経験してきた10回分の人生ではリュークハルト・フォン・スタークと言う名の第3皇子は死産したとお父様に聞いていました。しかし今回はリュートさんが死産したと言う話はお父様から聞いていないんです。説明して貰えませんでしょうか?」


 いや、まじか。つまり正史では俺は既に存在していないという事だ。そして俺がまだ生きていられると言うことは歴史の強制力みたいなものは働かないと言うこと。今回含めシャルが生きて11個の世界は全てまったくの別物と考えていいだろう。


 枝分かれみたいなものだ。シャルが死ぬとその枝の根元からまた別の枝が生える。


 それにしても俺が転生者だと言うべきか?言ったところで信じてくれるかも怪しいところだ。


『転生者だと信じて貰うためには鑑定の宝玉の使用を推奨します』


『……なんだそれ?』


『簡単に言えば、鑑定ができる魔道具です。もちろん主人マスターの出来る鑑定より精度は低いです。才能なんて見れませんし。見れるのは名前と称号、魔力量です』


 俺が悩んでいるとアイがいい案をくれた。てか魔力量なんて見れるのかよ!?俺の鑑定じゃ見れなくないか!?


『見ようと思えば見ることが出来ます。今まで見ようとしなかっただけで』


『まじか。それじゃあその案を採用するか』


「答えられないのか?リュークハルトよ」


 急にお父様が問う。その目はとても真剣だ。お父様自身も気になっていたのだろう。俺が持ってくる地球の知識がどこから来るのかを。


「いえ、答えられます。その前に、クリアーダ、鑑定の宝玉を持ってきてくれ」


「かしこまりました」


「リュートさん?どういうことでしょうか?」


 シャルが首を傾げながら聞いてくる。相当怪しまれてるなぁ。


「あれがあった方が信じて貰いやすいかと思いまして。おっと、来ましたよ」


 クリアーダが鑑定の宝玉を持って、すぐに戻ってきた。鑑定の宝玉はバスケットボールくらいの大きさだ。色は透明。クリアーダが宝玉をテーブルの上に置く。下にはそれ用の座布団みたいなのが敷かれている。


「シャルの質問は俺が何者か、だったよね。それは今からこいつが証明してくれる」


 俺はそう言いながら鑑定の宝玉に、手を置き、魔力を流す。


「俺はこの世界に生まれた時から異世界の記憶を持っている」


 ◇

 名前:リュークハルト・フォン・スターク


 魔力量:92万5千


 称号:スターク帝国第3皇子 異世界の記憶を持つ者 剣之王 闘之帝 炎之王 水之帝 風之帝 時空之神 氷之帝


 ◇


「ほぉ」


「なッ……ッ!」


「「――ッ!」」


 お父様は関心の声、スーナーさんは驚きの声、クリアーダとシャルは声にならない声をあげている。


「ね?これがあった方が信じてくれるでしょ?」


 てか、魔力92.5万もあるのかよ。


『アイ、宮廷魔法士の魔力量の平均は?』


『帝国では宮廷魔法士の上位になるには1万は必須と言われています。ちなみに、ムル・バスーラは10万程あります』


『へぇ、めちゃめちゃ高いじゃん。毎日魔力枯渇させてる影響?』


 魔力の枯渇により魔力が増える。よく聞く内容だ。しかし俺はどっかの主人公共と違い、根拠があってやっている。そう、アイの指示だ。体力は使えば増える。長距離選手がいい例だ。魔力は伸び方に個人差が大きい。俺は伸びる方いや、伸びすぎるほうだ。魔力を枯渇させると体力が切れたみたいに気持ち悪くなるし、本当はやりたくないけど、強くなるためにはやるしかない。


 ちなみに、体力は使わなければ上限が減ってしまうが、魔力は上限が減ることは無い。


「リュークハルト、後で話がある。この後残れ」


「……はい」


 お父様の指示によりこの話し合いが終わればお父様とO・HA・NA・SHIコースだ。


「ま、まあ、このように俺は異世界の記憶がある。この世界に来る前に神様ともあった。つまり転生者ということだ。あ、転生者って知ってる?」


「あ、はい。前世の記憶を持ったまま別人として赤子からスタートする人のこと……ですよね」


「はい、シャル正解」


 ……とうとうバラしてしまったァァァ!!墓場まで持って持っていくつもりが、この世に生まれ落ちてから6年でバレようとは……。


「他には質問ないよね。うん。それじゃあシャル、君の人生を聞かせてもらおうか」


「いやいや、ちょっと待って!リュークハルト君!なんだい!?この称号は!?」


 うるさいなぁ。クリアーダも頷くな!


「スーナーさんうるさいです」

「スーナー、静かにしろ」


 俺とお父様の声が被った。


「クリアーダ、後でちゃんと説明するからその顔やめて」


「はい」


 良かった。


「それじゃあシャル。教えてもらおうか?

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