第21話 限界突破
自室にてクリアーダ、アイとの会話を終えた俺は今日のパーティーのことを思い出していた。
パーティーはお父様の合図によって終わりになる。最初は俺たち皇族から退場し、その後は爵位の高い順で退場する。
お父様曰く大人の方は単なる飲み会のようなものだった様だ。もちろん派閥などもあるらしく、表面上は仲良くしていてもなんとなくこう、わかるそうだ。ちなみに終わった時間は夕方の時間帯だったりする。始めたのがお昼前だったので4~5時間程度だ。そう考えると長い。
翌朝、いつもどうりクリアーダに起こされた俺は訓練場に来て走っていた。同時にレントも来たので一緒に走っている。一緒にと言ってもダラダラ走るのではなく2人で競走しているような感じだ。
今日もお昼を食べるまでの時間は体力作りに勤しむ。お昼を食べ終わったあとは各々好きに訓練するのだが今日は久しぶりにレントと模擬戦をする約束をしているのだ。とても楽しみで仕方がない。
お昼を食べ終わり俺らは再び訓練場に来ていた。訓練場には俺が土魔法で作ったステージがある。天下一武○会みたいな四角形のステージだ。別に落ちたら負けってルールは無いけど雰囲気を味わいたいので作ったのだ。ちなみに土魔法で作っているので戦い終わったら崩して元に戻す。
俺たちはステージの上で各々準備体操をして戦いの準備をしている。
「いや~レントと模擬戦するのもひさしぶりだな」
「久しぶりつっても1ヶ月ぶりじゃねぇーか。なんならアニキは半月ごとに俺とディアナと模擬戦してるじゃねーか」
「それとこれとは話が別だろ?ディアナとやるのは純粋な格闘技って感じでいいけどよ、レントとやるのはなんでもありって感じでしんせんだろ?」
「……確かに槍とか剣とか使ってるもんな。だがよ、魔法はどっちとでも使ってるじゃねーか」
そう言いながら俺たちは剣を持ち、10メートルほど離れる。
「お前らだって身体強化使ってるだろ?使わなきゃ俺だって勝てんし。なんなら出力抑えてるし」
「はいはいそーですか。それじゃあ早速始めようぜアニキ。……シルフィード、審判頼むぞ」
「かしこまりました。それでは……両者位置について――始めっ!」
シルフィードの合図と同時に駆け出したのは俺だ。身体強化を足に集中させ、飛ぶように距離を詰める。
「疾ッ!」
距離を詰めると横凪の攻撃を入れるが簡単に躱されてしまう。
「なんか今日はギア入れるの早くねえか?」
「ここから新技2個用意してるからな。せいぜい覚悟しとけ?」
「ハッ!言ってくれるなぁ!」
2mほど距離を取られたところでそんな会話をしながらレントからの攻撃が繰り出される。
俺はそれをいつものようにいなす。いつもいなしてばかりなのでレントも予想が着いていたのか、そのまま間髪入れずに次の攻撃を繰り出す。
右、左、右、斜め左上、斜め右下。
そうしている間にどんどんレントの攻撃が速くなる。初めて模擬戦した時からレントはスピード特化の攻撃を繰り出す癖がある。いつもはそれに追い付けずに剣を捨て素手で戦うのが俺のスタイルだ。素手の方が小回りが聞くし、身体強化すれば痛くもない。正直剣を振るより拳で殴る方が楽でいい。
それでも俺が最初から剣で戦うのは、段階的に強くなる方がかっこいいからだ。つまり自己満。
いつものようにレントの攻撃が速くなり、追いつかなくなる頃、そろそろスピードに限界を感じてきた俺はディアナにアイコンタクトを送る。
「了解っす!」
同時に俺は力任せの剣を振り、レントと距離をとる。するともうひとつの木剣が飛んでくる。これはディアナが俺に投げた剣だ。
「おいおいアニキ、剣を2本にしたところで利き手じゃない方の左手の剣はまともに振るえるのかよ?」
「……ふぅ」
レントの質問に返事などせず深呼吸をする。そう。俺がやろうとしているのは二刀流だ。レントのスピードに追いつくだけなら加減してる身体強化の出力を上げればいいだけなのだが、それだとゴリ押しのつまらない試合になるのでいつもはレントに合わせた身体強化の出力で戦っているため、それ以外の作戦が必要だったのだ。それが二刀流。
「これが1つ目の新技だ」
俺はさっきの攻撃で少し離れたレントの元へ一直線に進み右手の剣で攻撃をする。レントはいつもどうり後ろに下がるので間髪入れずに左手の剣で突き。
これには剣で対応される。これは予想済みだ。問題はレントからの攻撃。右手を振るった後に左手は突き出している。つまりは体勢が悪い。どうにかして距離を取らなければ負けてしまうが――
――あっ。
俺はそのまま左手の剣を離し、掌をレントに向ける。
「食らえ!」
俺は少し強め火の玉の魔法をレントに飛ばした。
「うぉっとと、あぶねぇな!」
もちろんレントはまた距離をとる。その間に体勢を整える。
「来いよ」
同時、俺は嗤う。早く練習の成果を試したくて仕方がない。
「ハッ!」
レントはまた剣を振るう。先程よりも鋭く速い。その剣に俺は2本の剣で対応する。さっきまでよりは楽にいなせている。正直、二刀流の練習相手はディアナだったのでレントに通じるか心配だったが杞憂のようだ。
◇
side:Leonhard von Stark
オレは初めてアニキと戦ったことを思い出していた。この感覚はあの時以来だ。
ならばオレがやるべきことはあの時と同じようにより速く!
速く!もっと速く!オレは技は考えずにスピードだけを考えて振りまくる。弱い攻撃でも当てまくればやがて大きくなる。そう信じてオレは剣を速く振り続ける。
速く!もっと速く!もっと!
……なぜ?戦況はオレの方に傾き始めたはず。先程まで片方の剣でオレの剣を封じもう片方で切る突くなどしていたアニキが防戦一方なのがその証拠だ。しかしアニキはその上がった口角を一向に下げる気配がない。むしろ先程より釣り上がり恐怖すら感じる。
それともこれは罠?反応できない振りをして一撃にかけているのか?分からない。
外野のディアナがうるさい。シルフィードも珍しくテンションが上がっているのか少し声をあげているな。しかもなんだ?他に3人ほど気配を感じる。クソッ!今はアニキを倒すことに集中しないと。この試合に勝てば勝ち越しだ。
オレ達は何度も模擬戦をしていて、勝ったら勝ち点1、負けたら−1する方式を取っている。今の勝ち点はオレが0。アニキも0。この試合に勝てば久しぶりの勝ち越しだ。もっと速く振らなければ!
◇
side: Ryukhardt von Stark
レントの表情が険しくなってきた。それでもスピードは速くなり続けている。これは初めて模擬戦をした時のようだ。
ならばむしろ俺は負けられない。相手が同じ手を使い、こちらは異なる手を使っている。ならばこちら側が優勢だ。しかしレントが速くなりすぎている。これはもう、もうひとつの新技を使うしかないっぽいな。
俺は無理やり距離をとり、最後の切り札を切る。
瞬間。俺の世界から音と色が消えた。
◇
side: Leonhard von Stark
とりあえず、形の上ではオレが優勢だ。しかしアニキはもうひとつ隠し球があると言っていたな。
くそっ、二刀流ってだけでもこっちはめちゃめちゃ苦労してるのに、まだ何かあるのか?
えっ、は?急に距離を開けられた。今までこんな強引な距離のとり方はアニキ相手にされたことは無い。つまりもうひとつの方の隠し球を使うって訳か。そんなことは絶対にさせない。なら、距離を詰め――
「カハッ」
◇
side: Diana Bestia
距離を取った、リュークハルト様はなにかに気づき距離を詰めようとしたレオンハルト様の後ろに一瞬で移動し背中を強く殴りレオンハルト様がそのまま倒れちゃったッス。
あの技は限界突破ッス。リュークハルト様は最後の切り札として一時的に五感を代償にし、絶大な力を得る代償魔法を行ったッス。
あれは無属性魔法の1種ッスけど使える人はあまりいないみたいッス。お手本がない中で自分で考えて完成させちゃうのはさすがに恐ろしいッス。
そんなことするなら身体強化の出力あげた方がいいんじゃないっスか?と聞いたことがあるっスけど、リュークハルト様は技を重視した模擬戦がしたいらしいっス。つまり命の危険がある戦いの中では身体強化を最大出力で使い、尚且つ限界突破することになるッス。これはもう世界最強名乗っちゃってもいいんじゃないッスかね?
でもデメリットももちろんあるっス。この魔法を使うと魔力と気力を一気に持ってかれるッスから、多用はできないッス。それに一時的に失った五感は魔法を解いても少し後遺症みたいな感じで消えるらしいっす。
五感と言っても視力は全て失うのでなく、色彩のみ代償するらしいっス。何も見えなかったら勝負にもならないっスからね。
自分は本気のリュークハルト様とは模擬戦であっても絶対に戦いたくないっスね。
◇
side: Ryukhardt von Stark
レントを倒した。シルフィードは恐らく俺の勝ちを宣言しているだろう。まだ耳が聞こえないので何を言っているのか分からない。
レントの元へシルフィードが駆け寄り、起こしてあげている。
俺はボロボロになったステージを完全に崩し、真後ろに土魔法で椅子を用意しそこに力なく座る。
「
背もたれによりかかりそこから頭もはみ出てしまうくらい寄りかかり腕も力が入らないので!たれている。
目の前の光景を見るにディアナが2人に技の内訳を教えてあげているのだろう。もう疲れたから少し寝る……。
◇
※あとがき
お久しぶりです。最後の投稿の翌日、インフルエンザにかかってしまい、とても書ける程じゃなかったですごめんなさい。治ったあとも色々忙しくて全然なかなか投稿できなくてごめんなさい。一日一話投稿はこれこらもできる限りやります。応援よろしくお願いします。
それとなるべく読みやすくするためになるべく改行するようにしました。
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