第18話 パーティー

 偶然ムル・バスーラと会ってから数日がたった。あれから義姉さん達は聖王国へと戻った。現在、ジークハルト、リュークハルト、レオンハルト、ラインハルトは皇帝である父親の部屋へ来ていた。


「2週間後にパーティーがあるので服を新しく作る。今から採寸してくるように」


 8月の下旬も始まったばかりでまだ夏の暑さが残る中でお父様から告げられたパーティーへの参加。理由は俺たちの誕生日だろう。俺たちの誕生日は9月の上旬なのでちょうど2週間後だ。因みにこのパーティーは他の貴族を、呼ぶパーティーだ。


 なぜ7歳の誕生日にパーティーを開くかと言うと、7歳の誕生日は初等部に入って最初の誕生日。つまり、友達がいてもいい頃だ。皇子皇女が自分の誕生パーティーで退屈しないようにする配慮があるようだが、俺達には関係の無い事だ。父上の銀髪から覗く青い目は何かを期待している目だ。ベルン義兄にいさんはこのパーティーで婚約者を見つけていなかった。


 そう、このパーティーは婚約者探しでもあるのだ。俺としてはどうでもいいが、ライト、ジーク達は未来上級貴族になるだろう。それには妻は必要だ。これを機に見つけてもらいたいものだ。レントは、……知らん。ここで婚約者を見つけてもいいし、冒険者になるために邪魔なら作る必要は無い。俺は作る予定は無いが。あぁ、七瀬に会いたいものだ。


「分かりました」

 俺たちを代表し、ジークが返事をする。


 採寸時、レントの金色に輝く目は退屈の色を示していた。早く剣を振りたいんだろう。ジークの青色の目、ライトの水色の目は期待に満ちていた。俺はと言うと……


「終わりました」

「ん、お疲れ。手際がいいな」

「ありがとうございます」


 クリアーダの手際に驚いていた。とても早いのだ。さすがすぎる。暇なので少し駄べりたいが、みんな真剣だしなぁ。


「殿下、なんでムル・バスーラはあんなに強いのに宮廷魔法士団の1席ではなくて2席なんでスか?」

「んー、1席は誰だかわかるな?」

「アルト様ッスね」

「そうだ。それじゃ彼女の得意な魔法は?」

「回復魔法ッス」

「そう言う事だ」

「意味分からないッス」

「それじゃあ、彼女の年齢は?」

「60は過ぎていたような……正確な年齢は分からないッス」

「でも1番の年長者だろう?」

「はいっス」

「つまりはそういうことだ」

「??」

 この説明で理解出るのは元々理由を知っている者、もしくは……

「……ディアナ、リュークハルト様はこう仰りたいのです」

 クリアーダだ。


 曰く、帝国の宮廷魔法士団には1席から10席まであり、それは実力で決められ、その10人はそれぞれ100人程度軍を動かす権利を持っている。その10人は魔の10傑言われ、一騎当千の力をもつ。その帝国は実力主義な為、平民だろうが貴族だろうが強けりゃ上に上がれる。そう、強ければ。では何故アルト・フォン・フラウが第1席で帝国最強の魔法使いと呼ばれるムル・バスーラが第2席なのか。それはアルト・フォン・フラウの回復魔法の威力によるものだ。彼女は世界ただ1人だけ、欠損部位を回復させる魔法を扱うため聖女と呼ばれている。彼女がいれば、兵を一瞬で回復させ、戦線へ戻すことが出来る。仲間が居ればこそだが、彼女もまた一騎当千力を持つ。ではそんな世界一の回復魔法を使う者と世界でも有数の攻撃魔法を繰り出すことの出来るムル・バスーラ、どちらを第1席にするべきかを一時期貴族の間でどちらが上かドンパチしていた。結果アルト・フォン・フラウが1席になる。その理由は踏んできた場数と性格だ。幾つも修羅場をくぐり抜けてきた判断力に優れ謙虚な者とまだまだ若く、判断は未熟ながら自信家すぎる最強の一角。どちらが上に立つか、結局は最初から宮廷魔法士団にいたアルト・フォン・フラウになった。結局、ベクトルは違うがどちらも同じくらい優秀なので年長者の方に任せようと言うことになったのだ。ムル・バスーラとしては納得していないらしいが。


「理解出来ましたか?」

「何となくッス。難しいッスね」


 彼にはいい噂を聞かない。恐らくは平民から宮廷魔法士団にはいっか事により、タガが外れ、やりたい放題しているのだ。それもまあ理由の一つだろう。俺としては彼は殺すべきだと思うよ。うん。国の為にもね。



 クリアーダが説明しているとみんなの採寸も終わったらしい。ジークの後ろに控えている、紫のロングヘアーに紫の目をした6歳上のユーナ満足そうにしている。ライトの後ろに控えるのはシェリーという女の子。ピンク髪のボブカットで、葉っぱをイメージした髪留めを着けている。彼女はその緑の目だけでキャピキャピしているのが伝わる。彼女はいつも楽しそうだ。ディアナみたい。アンナはいつものようにキリッとした佇まいで、たっている。実はクリアーダのつぎに採寸を終わらせていのだ。優秀だ。


「父上採寸が済みました」

 採寸開始から15分ほど経ち、みんなの採寸が終わるとジークを先頭にし、父上の部屋に行き、報告を済ませる。


「ご苦労だ。今日はもう大丈夫だ。2週間後、パーティーの前にまた呼び出す」

「了解しました」


 ジークの返事を聞くと俺たちは父上の部屋を出てライト、ジークは共に勉強するらしく、俺とレントは訓練場に行く。


 ◇


 ※あとがき


 昨日色々あって投稿できませんでしたごめんなさい

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