第11話 奴隷商と奴隷
俺は父上の執務室を出たあとそのままレントの部屋へと向かっていた。俺たちの部屋は父上の部屋と近くになっているのでレントの部屋に行くのにそう時間はかからない。
トントン
「レント、俺だ」
「ん?アニキ?入っていいよ」
「ああ、ありがとう」
部屋に入るとレントは木剣を振っていて、その周りは散らかっている。おそらく俺に負けたあとはずっと素振りをしていて、片付けすらまともにやっていないのだろう。そしてそれをアンナがせっせと片付けている。アンナとはレントの専属メイドだ。俺にクリアーダがいるようなものだ。年齢はクリアーダの一個下、俺たちの6個上、つまり9歳だ。
長めの黒髪を高めの位置でひとつに結わえている。身長は130cmくらいでまだまだ幼い顔をしているが、将来はキリッとした美人になりそうだ。そんな美少女が頑張って部屋を片付けているのを見ているのは少し和む。
「それでなんの用だ?」
「ああ、明日午前に走りこみをした後は出かけるぞ」
アンナを見て和んでいるとレントから急に尋ねられたので少し戸惑ってしまった。
「どこに行くんだよ」
「奴隷だ。約束しただろう?父上がポケットマネーで払ってくれるらしいから、高いのを買うぞ」
「お、まじかー。へへっどんな強いやつを買おうかなぁ」
「俺たちと同じくらいの年齢の奴隷を買って育てるのも楽しそうだな」
「ああ、たしかに。まあその時になったら決めればいいべ」
「そうだな。伝えたいことはこれだけだ。それじゃあまた明日な」
「おう」
いやぁ、レントが道を外さないで本当に良かった。なんてことをレントと別れ自分の部屋にある椅子に座りながら思う。もし俺が今回レントに負けていればあいつはもっと傲慢になりそのまま成長していただろう。それに、良くないものに手を出したりしてしまっていたかもしれない。いやぁ、ほんと良かったよ。
「クリアーダ、おやすみ。もう寝るね」
「はい。おやすみなさいませ。また明日、同じ時間に?」
「ああ、頼む」
同じ時間というのは起こしてもらう時間だ。どうも前世から一人で起きるのは無理らしくこの身体でも一人で起きるのはむずかしい。3歳児なのに……。
……多分毎晩アイからこの世界の知識を聞いているうちに夜遅くなるんだよなぁ――
『私のせいにしないでください』
――人の心を読むなぁ!
◇
「リュークハルト様起きてください」
「ん…今何時」
「6時半です」
「…今日もはやいね」
まだ6時半だと言うのにメイド服をビシッと着ているいつも通りのクリアーダがいた。とりあえず起きるか。
「今日の予定は午前から訓練をして、昼食を挟み、その後へレオンハルト様、アンナ、ディーナー様を伴い奴隷商へ向かいます」
「あい」
俺の服を着替えさせながら淡々と今日の予定を教えてくれる。ちなみにアンナには敬称をつけない理由はクリアーダがメイド長の真似事を行っているからだ。クリアーダの
「では向かいましょう」
「あい」
◇
朝に走り、お昼を食べて少しした頃、ディーナーから呼ばれ、俺、レント、クリアーダ、アンナは馬車に乗る。御者はディーナーで豪華な馬車の中には俺、クリアーダが隣に座りその向かいにレント、アンナが座る。
王城から馬車に揺られること10数分程、奴隷商に着いた。結構近いなと思ったけど帝都内にあるんだから馬車ならそんなもんかと一人で納得して馬車から降りる。アンナとクリアーダをディーナーがエスコートし、そのままレント、俺の順番で降りる。必然的に俺が1番後ろになる訳だが……
「リュークハルト様」
「ん?なんだディーナー」
「殿下はここ1年で言葉遣いがお変わりになりましたがどういう心境の変化で?」
普通こういうのを王族に直接聞くのはあまり良くないが、俺が子供だからって言うのもあるだろうしやはり気になっていたようだ。俺が1年前まではアルギメインにもクリアーダにも敬語で話していたのにそれが無くなった理由を。
「あー、上に立つものとしての威厳?みたいな?」
「威厳、ですか。お言葉ですが殿下は皇帝になるおつもりはなかったと存じあげておりますが……」
「うん。今もなるつもりは無いよ。でも冒険者としては生きた後、自分の子供は大成した俺の金を使って生きていけるだろうけど、もっとあとの子孫がなにかに失敗してしまった時、きっと辛くなると思うんだ。もちろんできるであろう子供にはきちんと仕事に就いてもらうよ?でも、なるべく余裕を持って生活して欲しいじゃん?だからさ、俺貴族になろうと思うんだ」
「確かにその考え方は少し過保護な気も致しますが貴族ですか……、そう簡単になれるようなものではないですぞ?」
「わかっている。もう既に幾つか道筋は考えているからな。心配するな」
「そう言われてしまっては引くしかありませんなぁ。ほっほっほっ」
「はっ、最初からわかってたくせに良く言うよ」
「しかし、その決意が陛下に期待させてしまったのもまた事実ですぞ」
「ああ、そうだよな。それはまぁ仕方ないだろ。皇帝はきっとベルン兄さんがやるよ」
「そうですな」
そんな会話をディーナーと話しながら奴隷商……と言うか平屋の御屋敷のような建物の玄関にたどり着いた。
「ようこそいらっしゃいました。リュークハルト様レオンハルト様、それとお付の方々」
「ああ、今回はよろしく頼む」
「はい!私エスカラーボ・ヘンデュラーと申します!今回はどのような奴隷をご注文で?」
ヘンデュラーと名乗った奴隷商人のイメージとはかけ離れたイケメンが出てきた。彼はモノクルが似合う緑の長髪にスーツっぽい格好で出てきた。
「オレはアニキに任せる。本当は自分で選びたいがアニキに任せた方が確実だからな」
おっと、レントが3歳児らしからぬ発言をした。成長したなぁ。
「んーどうしよっかなぁ」
『アイ、見繕って貰えないか?』
『もう完了しております
『了解した』
『まず年齢は自分と同じくらい』
「年齢は俺たちと同じくらいがいいな」
「はい」
『多少身体に欠損があっても構わない』
「多少身体に欠損があっても構わない」
『種族は問わない。性別は女』
「種族は問わん。性別は女だ。あと値段は問わん」
「おい!アニキ!性奴隷を買いに来たわけじゃねぇぞ!」
「何を分かりきっていることを。これから俺たちで育てるんだろう?俺たちと並ぶくらいの強さに」
「まあ、アニキに任せると言ったのは俺だしな」
ヘンデュラーはメモを取りながら奴隷の一覧らしき物を見ている。
「かしこまりました。10分程お時間を貰いますがよろしいでしょうか?」
「ああ」
そういうと別室に案内された。
10分後ヘンデュラーが11人の子供を連れて来た。ボロ布などを着てるかと思ったが、案外普通にTシャツと半ズボンを履いていた。
「お待たせ致しました。ここの11名が殿下のご希望に添えるかと。では1人ずつ自己紹介させます」
「いや、いい。もう決めている」
「「え?」」
ヘンデュラーとレントの声が被った。そりゃ驚くだろう。しかし、アイと相談して、もう決めている。
「そこのエルフと虎獣人の子にする。レントはエルフの子と契約を結べ」
契約とは奴隷契約の事だ。胸元に特別なインクと主人となる者の血を混ぜたモノで特別な模様を描くことで契約が成立する。
「そこのエルフの子は魔法の適正が高い。お前と組んだらバランスがいいし、虎獣人の子は近接戦が強い。俺は一応魔法主体の戦闘スタイルにする。これが1番バランスがいい」
「アニキもう近接戦の練習しねぇのか?」
「いや、ただ魔法を主体とするだけで俺の目指すところは超器用富豪だ」
「わかったよ」
俺たちの3歳児らしからぬ会話にヘンデュラーはぽかんと開けた口を閉じていないがすぐ直るだろう。
「という訳で頼む」
「は、はい!ではこちらに血を1滴ずつお願い致します」
謎の液体が入った皿のようなものが2個用意されている。
「じゃあ俺こっちにやるわ」
俺は自分に近い方、右側にあった方に血を垂らした。
「では始めます」
ヘンデュラーが2人の奴隷の胸元に模様を書いてるのを尻目に俺はエルフと虎獣人の子の才能値を眺めていた。
◇
名前:ディアナ・べスティア
年齢:3
種族:虎獣人
称号:奴隷
武術
剣術 A
槍術 A
弓術 C
体術 S
魔法
火 F
水 F
風 F
土 F
光 F
闇 F
時 F
空間 F
無 A+
錬金 F
生産
錬金 F
鍛治 C
資質
統率 A
武勇 A
政治 C
知略 C
◇
名前:シルフィード・フィンドレ
年齢:4
種族:エルフ
称号:奴隷
武術
剣術 A
槍術 C
弓術 S
体術 D
魔法
火 D
水 B
風 S
土 A
光 B
闇 F
時 F
空間 F
無 A+
錬金 F
生産
錬金 C
鍛治 F
資質
統率 A
武勇 A
政治 C
知略 C
◇
Sランクってこんなにたくさんいるもんだっけ?と思いながらまあ、そんな時代があってもいいよななんて思っていた。そもそもなんでエルフと獣人の奴隷がここに?なんてことも考えたが、結局答えは分からなかった。
「完了致しました」
「わかった。請求は皇帝へ。また機会があれば来る」
「ありがとうございました」
◇
屋敷の外にて
「自己紹介は後でする。まずは馬車の中に入ろう。それにその後服屋によってお前らの服を調達する」
「かしこまりました」
ディーナーが返事をして、みんなで馬車に入る。大きめの馬車なのだが流石に6人も入ると窮屈だな。
「お前も座れよディアナ」
「は、はい」
「お前も座っとけエルフっ子」
「かしこまりました」
◇
※あとがき
遅れました。まじでごめんなさい。明日から学校のテストあるんですが頑張って投稿するんで応援お願いします!!
ストックは比喩でもなんでもなく0話なんですが、土曜日には2話は確実にあげたいと思っています
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