第4話 この世界


『あと、最後に聞いておきたいことがあるんだが』


 そう切り出した俺は狸寝入りをしていた。理由は俺の意識が覚醒してからまだ1度もおぎゃってないからだ。さすがに周りの人間たちも心配するだろうし、寝たフリをしている。


『なんでもお聞きください』

『それじゃあこの世界についてさっきより詳しく教えて』

『詳しく、とは具体的にはどういうことでしょうか』

『さっき言ってた列強諸国の序列とか』

『なるほど。かしこまりました』


 アイから得た列強諸国の情報はこうだ。まず、我がスターク帝国を中心に、東のツワイト皇国、西のタイシェン王国、ラステン連合王国、北の砂漠を挟んだベスティエン獣王国、ツワイト皇国の東にある森、通称妖精の森の中にある大エルフ国、さらにその東にビブリア聖王国の7カ国だ。ちなみにこの7カ国は7列強、7大国などと呼ばれている




 その中でも帝国と皇国は仲が良いらしい。逆にスタークとタイシェンは仲が悪いらしく、国境でよく小競り合いをしているとの事だ。連合王国と聖王国とは友好的な関係らしい。列強で仲が悪いのは王国だけということだ。


 加えて王国は人間至上主義のため、獣人、エルフを人として見ていないため、獣王国、大エルフ国に嫌われている。


 ほかの国同士の関係は王国はやはりどの国とも仲が良いとは言えないらしく、特に悪いのはやはり我が国らしい。他はみんな仲良くやろうね、ということになっている。理由としては我々列強が戦争を始めたら他の小国を巻き込んで再び大戦が起こるかもしれないからだ。


 しかし王国は度々我が国に攻撃してくるらしいが、力量差があるため、帝国は最低限の被害で済ましている。王国は滅ぼした方がいいと思うよ、うん。


 序列的な話をすれば総合力は上からスターク帝国、ツワイト皇国、ラステン連合王国、ビブリア聖王国、ベスティエン獣王国、タイシェン王国となっており、大エルフ国は未知数となっている。なんで未知数な国が大国扱いなのかは知らないが未知数だからなのではないかと思う。


 武力的な話をすればやはり帝国と皇国は強いらしく、その下に来るのが獣王国だと言う。



 列強諸国の話以外で聞いたことだが、3000年前に神が作ったこの世界は最初から人類が存在していた、と言うよりは存在させていた。神が。そしてこの世界を作ったと同時に何人かの異世界人、もっと詳しく言うと日本人を送り込み、数十年で現代の地球レベルまで文明を発展させたらしい。それが約2000年続いた。


『それじゃあ、最初に送り込まれた日本人も適当に選ばれたの?』

『いえ、神様が直々に選ばれました。選考内容としては心の綺麗さとその心を持ったグループ。つまり地球上にある無数の友人グループの中からトップの存在を選んだということです。補足ですが主人マスターはランダムで選ばれた存在です。あと、主人マスターが会った神様は、神様の中の頂点、世界神様です』

『たまたま俺だったっていうのは本当だったんだな。てかあの神様野郎次会ったら殴る』


 と言うような会話を数日かけて行っていた。なぜならこの体だ。赤ちゃんの体、少ししたらすごく眠くなる。あと、乳を飲ませてくれるのはママではなく、乳母の人だ。


 乳を飲む時は性欲は全く感じず、食欲しか感じられなかった。アイ曰く、魂がこの体に定着しており、感性が退行しているらしい。


 あと、なんとなくだが言葉がわかってきた。アイにこの世界の言葉を教えてもらったんだが、文字が、仮名文字のようにひとつの字に読みがあるらしい。アルファベットにも一つ一つ読み方はあるが、そう言うやつではなく、仮名文字やハングルみたいな感じだ。てことは英語のように一々単語を覚えるのではなく、発音さえ覚えれば言葉には困らないということだ。素晴らしいな。


 

『なあ、アイ。前の異世界人はどーやってこの世界を発展させたんだ?専門知識があるってわけではなかったんだろう?』

『それは偏に魔法の存在と言えるでしょう。魔法の中でも付与魔法。付与魔法を行い、科学を再現していたのです』

『その、付与魔法ってのはどーやるんだ?』

『付与したい物質に魔力を通した墨と筆で文字を書くか、魔法陣を書くなりすることでできます。この時、完成した時のイメージが大切です。』

『それなら誰にでも付与魔法が使えるし、文明は発展し放題じゃないか?』

『付与魔法には才能が必要です。どれだけイメージしても字が上手くても才能がない人はできません。あと、物質の質量、魔力伝導率の高低によって付与できる文字数などが変わります。』


 余談だが、付与魔法を施した道具を魔道具と言う。


 文字と魔法陣の付与魔法の違いだが、文字を書いた魔道具は魔力を通すことで効果を発揮する。


 魔法陣を書いた魔道具は魔石に触れるか魔力を通すかで効果を発揮する。それじゃ魔法陣で作った魔道具がいいでは無いかとなるがそうではない。




 魔法陣も文字も効力を強くするには魔力をより通すことが重要だ。文字の方は自分で調整できるが魔法陣の方は魔法陣の中にどれくらいの魔力を使うかを記さなければならない。その魔力量と効果が不釣り合い、例えば欠損部位を治すのに低い魔力量ではそもそも魔道具が起動しない。逆に文字の方は予め最低量だけ自分から魔力が吸われ、そこから効力を強くするにはもっと魔力を流せばいいだけだ。


 しかし、文字の方は魔力を流してる間しか使えないと言う不便な点がある。


 昔の、魔道具を作っていた人―魔道具士―はその辺を上手く克服して解決していたらしいが1000年前の世界大戦によって、その技術は失われ、残った魔道具を使い、やりくりしているらしい。


『それにしても、魔法か。この世界はファンタジーらしいからモンスターとかもいるのか?』

『モンスターではなく魔物というモノなら存在します』


 ちなみに、魔道具に使われる魔石は魔物から採れるらしい。


『おぉ、じゃあドラゴンとかもいるのかっ?』

『急にテンションが高いですね。ドラゴンは最上級の魔物として存在しています。ランクはSランクです』

『Sランク?この世界にもアルファベットがあるのかよ』

『この世界で認識されているアルファベットはA~F、Sだけです。』

『前の異世界人が伝えたものか?どうしてそんな中途半端なことを?』

『それは、冒険者ギルドのランクです。冒険者ギルドとは報酬を貰って魔物の討伐、街の防衛、傭兵がいないので時には戦争に駆り出されます。ランクはS、A、B、C、D、E、Fの順です』

『ふーん、まあこの辺はテンプレって感じ?』

『はい。他には主人マスターが世界神様に強請ねだった神眼で、鑑定を行うとその者の才能がアルファベットで表示され情報も表示されます』

『それじゃあ早速やるか』


神眼ひんあん:鑑定はんへい!」

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