何気ない日常

入学式から1週間。クラスでは徐々にグループができていた。『スクールカースト』、見た目や性格などによって自然とできていくピラミット構造に基づいて。

 詠美は、美穂とは行き帰りを一緒に行動している。ではクラスではというと。

 朝、クラスの扉を開けると、すぐに7、8人で群れている集団から、

「詠美だ。おはよー!今日の調子はどう?」

 前髪を編み込み、左右の髪を結って女子力が高い、門村梢かどむらこずえに話しかけられた。

「梢、おはよう。」

 その子以外にも、

「おはよう」

「おはよう!」

「おはよー」

 その他数人と挨拶を交わし、席に着く。

 最初に話しかけられた子はこのクラスの女子のスクールカーストの頂点とも噂される梢だ。

 彼女たちの周りにはいつも人が集まっている印象がある。詠美は、梢に初日に気に入られてこのグループに仲間入りした。積極的に喋りに行かなくても話題があり、話が中断しない。そんなグループに居場所を見つけ、ひとまず新学期の心配事は一段落した。新しい環境に慣れるのに時間がかかる詠美にしてはスムーズなスタートとなった。

 チャイムが鳴り休み時間になると、決まって梢たちは私の机に来る。そして私はみんなが話しているのを眺め相槌を打つ。

 梢たちは私に話を振ってくることなく、会話が進行していく。

 詠美はそれだけで満足だと思っていた。この時は――――。


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