第5話

 そうして2人は通路を進み、遂に正真正銘のドン詰まりに行き着いた。

しかし、道中では虎毛タイガーファー種も純白ピュアホワイト種も見つけられずじまいだった。

「あれ? おかしいな?」そう言うとロイは、「バラン・ルルコンビに訊いてみるわ」

と無線機の送話スイッチを入れた。

 すると突然、ピーッという音が聞こえた。

「ロイ、受話に切り替えて」

「おぉ……」

ロイジウスは急いで受話に切り替えた。

受話モードに切り替わるや否や、『C班チャーリーからA班アルファ及びB班ベータへ。虎毛種の男の子を保護しました。どうぞ』とルルの声が聞こえた。

続けて、『こちらA班。虎毛種の保護了解しました、どうぞ』とマリーの声がした。

『バランタイン3等尉は虎毛種を連れてそちらに戻ります。アルデバラン准等尉は引き続き純白種のシルべの捜索をします。どうぞ』

 ……バラン1人でシルべ探しは不安だな……と彼らは顔を見合わせた。

そしてロイジウスは再び送話スイッチをオンにした。

『こちらB班。こちらはシルべを発見できていません。……アイボリーフィールド3等尉をアルデバラン准等尉の援護に向かわせ、ロイジウス3等尉は、引き続き点検用通路内でのシルべの捜索を続けたいと思います。どうぞ』と言うとロイジウスはスイッチを受話に切り替えた。

『こちらA班。B班の現状を把握、及びアイボリーフィールド3等尉の移動を認めます。どうぞ』とマリーからの返事が返ってきた。

さらに続けざまに、『こちらC班。リア先輩の心遣い痛み入ります。どうぞ』とバランの声が聞こえた。

 ルル・バランチームの送話スイッチが切られたことを悟ったロイジウスは、無線機その物のスイッチを切った。

「リア、この通路を3分の1ほど戻ったところに、表に出られるドアがある。……ここ入る時にくぐったのと同じ形式だ。マーキングしてあるから分かるはずだ。そっから表側出たら、バランと合流して、白シルべ探してくれ。」

「分かったわ。……あなたはどうするの?」

「俺は来た道戻って、マーカー回収しながら、見落とした痕跡がないか探してみる。入り口まで戻って何もなかったら、チーフたちのところに一旦戻る」

「OK。それじゃあまたあとで」


 その後、相変わらず行方の分からない純白種のシルべの捜索が続けられたが、誰も発見できずじまいだった。

ロイジウスたちの報告を聞いたチーフ――ドーラス・ディースバッハ2等佐――は、「元々シルべは気ままな生き物だし、中でも白シルべは警戒心が強いからね。そのうちひょっこり出てくるだろうさ」と呑気なことを言って、女性陣から猛烈なツッコミを喰らうハメになった。

 一方、ロイジウスは、養成所アカデミー時代にそこの図書室で見かけた情報を思い出していた。

……確か地球にあった『日本』で奏でられていた「三味線」という楽器は、古くは「雌の白ネコのなめし革」が使われていたと聞いたぞ。……ということは、行方知れずの白シルべも運悪く皮革業者に拾われてしまったのでは?……

 しかし、「ブリーダーさんが困っているじゃないですか‼︎」とチーフが怒られている姿を見てしまったあとでは、到底言い出せる話ではなかった。

結局、「エマの警察署に遺失物届を出して、見つかることを待ちましょう」というルルの至極真っ当な意見が採用され、「迷いシルべの捜索任務」は一旦終了となった。

そして、第24警備隊一行も宿舎へと引き上げることになった。

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