第10話 異世界生活のはじまり

……んっ


 ペロリと首筋を舐められる感触に首を竦めた。

 焦茶色の大きな犬が覆いかぶさって、戯れてくる。


 クンクンと脇腹に鼻を付けてはモソモソ服の中に顔を埋め、これまたペロペロと愉しそうに舌を這わす。


 ちょっ……、

 くすぐったいったら!


 身体を捩らせると、そこは諦めたのか臍あたりを舐めはじめた。


 もう、止めろって……。

 ジョン!


 あ、ジョンって、じいちゃんの道場の後に通っていた道場ところにいた、薄茶色のでっかいワンコなんだけど……。

 犬種は……忘れた。 

もふもふで人懐っこいヤツだったんだ。


 でも……、

夢だよな、これ?


 何でこんな夢見るんだ?


 正直、今まで忘れてたよ。あいつの事。


 ……ってか、あいつ、



 こんなにデカかったか?



 ジョンは俺の脚の上全体に伏せをしていて、身体にずっしりと荷重がかかっていた。重すぎて身じろぎ一つできない状態だ。


 そんな俺の状態にはお構いなしで、ジョンは千切れんばかりに尻尾を振り、ペロペロと愉しそうに舐め回してくる。


 止めろって……。


 夢とはいえ、久しぶりに見たジョンの嬉しそうな仕草と、舐めてくる舌のくすぐったさに自然と微笑えみがもれた。

 ジョンも嬉しさ満載で、これでもかと舐め回してくる。


 いやいや。そんなに服の中に潜るな、って……。


 いつの間にか舌は、腰や俺のキワドいところまで迫っていた。


 ちょっと、気持ちイイっていったら

マズいかな……って……。


 こぉら、どこ舐めてんだ!


 脚の付け根をペロンと舐められて、起こってはならない劣情が湧き上がる。

 これ以上は流石にマズいでしょ。


 も、止めろって!ジョン!


 身じろぎして身体をずらそうと試みるが、一向に動く気配はなかった。


 ジョンってこんなに力強かったの?!


 駄目だって!!


 手で押し退けようとも試みたが、ジョンは全くもって動じない。

 それどころか、俺のナニをむずっと握り込んでくる始末だ。


 ん?握る?……ジョンが?


 何かおかしくないですか?!


 疑問もつかの間、今度はそこをさわさわと指で擦り上げられた。


「っあ…」


 思わず声が漏れる。


 いやいや、どうなってるんだよ!俺の身体!!


 体中の熱がに集まってくるのがわかる。

 確かに、物理的に刺激されれば感じるのは仕方がない。俺も男だし。



 でもさ!



 今、夢だよね?!

物理的な刺激って無いよね?

 襲ってきてるのジョンだよね?


 これって、俗に言う獣○なシチュエーションだよね!?


俺!そんな趣味ありませんけど!!


 そんな俺の混乱なんか気にも留めず、ジョンは絡めた指先で執拗にオレを弄り続ける。

 考える事を放棄したくなる程、キモチがイイ……。


これ以上は……、ホント…駄目。


「…も、やめ……、ジョ……ンっ」


だから……、

て言ってるだろっっ!!




 って……ジョン……じゃ、な…い……?




 必死になって抵抗したら、目が醒めた。

 さっきまでの明るい場所は一瞬に月明かりだけが頼りの薄暗い部屋へと変わり、尻尾をふりふりした愛らしいジョンの姿はどこにもなかった。


 代わりに、目の前には知らないオッサンの顔がある。


 だれ?


「嬉しいねぇ、かわいい声でオレの名前呼んでくれるなんてよぉ」


 オッサンは俺の上にのしかかったまま、品のない微笑を向けてくる。


 呼んでないよ!オッサンの名前!!


 第一、知らないし……。

見掛けた事も無いし。……いや…、


……あるか?


 もしかして、レナードの屋敷いえ着いた時に、馬を引いていったヒト?


 なんて考えていたら、いつの間にか胸元までたくし上げられていた服の中に顔を埋めてくると、ベロリと突起を舐められた。


「うわっ!」

 気持ち悪い!!


 ……だけじゃ、なかった……。


 もっと刺激が欲しいと、心に反して身体が要求する。


 もっと……、


気を抜くと声が漏れそうになる。


 どうなってるんだ?俺の身体!?


 どんどんと湧き上がってくる欲情に思考が追いつけず、混乱はピークに達した。

 そんな俺の動揺した顔に、男は満足した表情を向ける。


感じに薬が効いてきたみたいだな」

「……クスリ…?」


 そんなモノ飲んだ憶えは、無い……はず。


「意外とイイ味だったろ?」

男は答えを教えてくれた。


「…み、ず…?」

 知らない間に置かれていた水差し……。


アレ…?


 はい。出処のよく解らないモノは、口にしちゃいけません!

 小さい頃に習いませんでしたか?俺!!


 だって、そんな悪意持たれるなんて思わないでしょ!!


「……っ、はな…せ」

 なけなしの理性を振り絞る。


と・に・か・く


異世界こんなトコでレ○プなんて、冗談じゃ…ない……!」


 男を押し退けようと必死に腕を突っ張るが、力がは入らない為かビクともしない。


「カワイイねぇ、俺の事煽ってるの?」


 ニヤニヤ笑う男は、今度は俺の首筋に舌を這わせだした。ぬめりとした生暖かい感触に恐怖を感じる。


「っ……痛って!何しやがるっ」

 夢中になって男の肩や頭を叩いてやった。当たりどころが良かったのか悪かったのか、不意打ちを食らった男は怯んで身体が少し浮いた。

 俺はとにかく手足を無茶苦茶に動かして…。



――ゴトッ――



 闇に包まれた屋敷に、音が響いた。

 何か硬いものが床に落下した音だ。


 お互いの動きが一瞬止まる。


 何?


 視界の端にキラリと光ったものが映った。


俺のスマホ……。


 腕を振り払った時に飛ばしてしまったようだ。

 落ちた衝撃で電源が入ってしまったのか、画面が煌々と明るい。


「……何だよ、あれ」


 男は突然に現れた初めて見るランプの様に明るい物体に、驚きを隠しきれない様子で俺の事を睨んできた。

 瞳には微かに畏怖の色が混じっている。


 そんなバケモノ見るような眼で見ないで!

 何でも無いから!!


 途端、俺の身体が軽くなった。

 男の姿が目の前から消えたんだ。


「貴様っ!何をしている!」


 代わりに現れたのはレナードだった。

 レナードは男を引っ剥がすと、そのまま床に叩きつけ抑え込んだ。

 同時に、廊下から家令のベルゲさんをはじめ何人かの使用人さんが雪崩込んできた。

 どうやらさっきの音を聞き付けて来たらしい彼らは、眼の前の光景に啞然としていた。


 手に持つランタンから照らし出された灯りに映っていたのは、レナードに抑え込まれ苦しそうに呻く男の姿と、夜衣を乱し、半ケツでナニを曝け出している俺の姿……。


あったか一目瞭然だろうよ……。


「……ジョナサン……、何という事を……」

 ベルゲさんは力なく呟いた。


「……私めの、手落にございます……。遠い親戚と、過信しておりました…。こんな……」

「もうよい、ベルゲ。話は後だ」


 レナードは体格のいい使用人に男を部屋の一室に閉じ込めておくように言いおくと、俺の側に来て乱れた夜衣を直してくれた。


 けど……、


 俺の身体はそんな些細な刺激にも反応してしまう状態で……。

 身体がモソモソとする。

 

……というか……熱い……。


「……レナード…。何か…俺、……身体……ヘン……」


 顔を上げてレナードを見ると、一瞬、彼の瞳が見開いた。


「…薬を、盛られたか…」

 小さく呟く。


「ベルゲ!」

 途端に声を張り上げた。


「朝まで、この部屋に誰も入れるな!!」




     ◆



「……っ、あ」


 大事なトコロを扱き上げられ、何がなんだか分からなくなってくる。

 胡座をかくレナードを跨ぐような格好で、肩に上半身を預ける。首に回した腕だけが身体が崩れ落ちるのを辛うじて留めていた。


「…んっ……」


 さわさわと後の縁を撫でられていたかと思うと、ぷつりと後口へ何かが挿れられた。

 違和感を感じるのに、止めて欲しくなくて、つい腰が揺れる。


「まだ、だ。解しておかないと辛いぞ?」


 言っている意味が解らなくて、でもキモチ良くて……。


「……もっと…」

無意識に口から漏れる。


「…頼むから、煽ってくれるな」

「え?」


 中にあったが抜かれ、代わりにソコに別のモノがあてがわれた。


「少し早いが、強請ったのは☆✓■#✕@&……」

「何?ちょっと待って!何て??」


 先程までとは比べ物にならないくらいのモノが押し入ってくる。



怖い!



「ちょっ……待っ……!」

「◆&★✕▶##△%⚫」


 こんな時になんなよっっ!!


 まさかのバグ(もう、そう言わせてくれ)に、間違いなく俺はパニックを起こしかけた。

 パニックを起こさなかったのは、次に起きた事がそれ以上の衝撃だったからで……。


 人間、起きていることの斜め上を行く出来事が生じたら冷静になれるものらしい。


「痛っ…」


 メリメリと埋め込まれるナニの衝撃に、身体が小刻みに震える。


「@▽★#*」

だから……、解んないっ……て…。


 お腹の圧迫感が苦しくて、レナードの首筋にしがみつく事しかできない。


 ズリっと、途中まで抜かれて、再び、グッと押し込まれる。

 痛み以上に愉悦が押し寄せてきた。


 頭の中が……、キモチ良くて……良すぎてぐちゃぐちゃになる。


「んあぁ…ァ……っ」


 身体の中に一気に熱が広がった。


 熱い……。



「すまん、……手加減してやれそうにない…」


 レナードの言葉の意味を理解したのはその後。

 3回自分を放ち、2回ほど熱い迸りを受けたところで意識を手放した後だった。






 もそりと隣が動く感触で、目が覚めた。


「まだ早い。……お前はもう少し寝ていろ、カイト」


 朦朧とする意識に穏やかな声が降ってくる。

 頬に温かなモノが触れた。


「うん……」


 余りにも気持ちがよくて、思わず微笑んでしまう。

 その心地良さを放したくなくて頬擦りをしたまま、俺は再び眠りについた。




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