第24話 サプライズ
2023/04/05 / AM9:15 / 天気:晴れのち曇り
/佐久間家 別館使用人寮 食堂
「皆んな集まってくれてありがとう。いつも感謝している。今日この時間集まってもらったのは他でも無い。今日4月5日は麻琴さんの誕生日だ。幸いにも今日から麻琴さんは学校が始まるので、居ないうちにささやかながらも誕生日パーティーの準備を皆んなにはしてもらおうと思っている、それをもって改めて歓迎会をしようと思う。」
「旦那様、ご説明ありがとうございます。と言うわけでですので、本日はいつもの予定を大幅に変更して業務に取り組んで頂きます。ハウスの皆さんは母屋の食堂を中心に装飾を。パーラーはハウスのサポートを。ランドリーは通常通りの業務を並行しつつ、後ほど用意するドレスのクリーニングを。キッチンの皆さんと斉藤シェフは今夜のディナーに相応の材料を旦那様が調達して下さっているのでそれを存分に活用して下さい。」
淡々と進行する集会。
旦那様自ら説明されて、全体の雰囲気がピリつく。
「それと、
旦那様が私の方を真っ直ぐに見て私に言う。
え…マジ…?
「えっ…わ、私ですか!?」
「あぁ、麻琴さんと良好な関係を築きつつある君にしかできない。」
パーラーの私は直接旦那様からご指示を仰せつかることは珍しい事で驚きを隠せない。
しかし、断る事は出来ない。
旦那様自らのご指名なのでがっかりさせたく無い。
何より麻琴ちゃんに喜んで貰いたい。
「分かりました。謹んでお受け致します。」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
そこからの午前中は目まぐるしかった。
ディナー用の食材の納品の立ち合い。
ディナー時のテーブルに飾る花を生けたり。
部屋を隅々まで掃除したり。
お昼休憩を取ると気がつけばあっという間に麻琴ちゃんが帰ってくるであろう時間になっていた。
玄関ホールの掃除を進めているとメイド長の洲崎さんから声がかかる。
「保科、もうすぐ主役が帰宅するからよろしく頼むぞ、成功したら…いや、なんでもないこの話はまた今度で。」
何か言いかけた洲崎さんは途端にお茶を濁し食堂の方に向かってしまった。
あんな風にされたら気になるけど…
今はそんな事を考えている場合ではなかった。
予定ではあえて遠回りで帰ってくる麻琴ちゃんを玄関で待つ。
だんだんプレッシャーを感じてくる。
そんなに意識する必要は無いと理解しているのに体は裏腹にだんだん心臓が早鐘を打つ。
唇や口の中が渇く。
落ち着け…大丈夫…いつも通り、優しく友達のように接してあげるだけ。ディナーの時間まで時間を稼ぐだけ。
何回目かの深呼吸。
いよいよ、麻琴ちゃんが帰宅する
「おかえなさいませ、麻琴ちゃん」
「ただいま戻りました。」
少し元気の無さげな笑みを浮かべて麻琴ちゃんは帰ってきた。
転校初日だし、早々無いとは思いたいが嫌な事でもあったのだろうか?
と思いつつも私の頭の中は重要任務で頭がいっぱいだった。
とりあえず、部屋に連れて行かねば…。
「すぐ着替えて持ち場行きますね」
「いや、きょ、今日は麻琴ちゃん疲れてるだろうし、お休みでいいよって洲崎さんが…」
「……そうなんですか?でも、やる事は沢山ありますよね…?」
「だっ、大丈夫、大丈夫ッ!今日から麻琴ちゃんの本業は学生なんだからっ!」
「でも、私この後何も予定無いですし、何かあればやりますけど…」
「本当に、本当に大丈夫!さ、さぁ!お姉さんと一緒にお部屋に行きましょうねぇ!」
強引に麻琴ちゃんの手を引き私たちの部屋に引っ張っていく。
本館一階の廊下を抜けて裏口の玄関へ、そこから寮へ。
二階奥の自分達の部屋に到着し、麻琴ちゃんと一緒に入る。
「美紀さん…?どうしたんですか?」
おそらく不審に思われたであろう、こちらを心配している様な、怪しんでいる様なそんな顔で私を見てくる。
「いや……特に、これと言った事は無いんだけど…。」
ひとまず、任務完了だ。
こうゆう肝心な時に限って会話ができなくなる。
私の悪い所。
言葉に困った私は麻琴ちゃんを抱きしめた。
「ごめん…上手く言えないからとりあえず、今はこうさせて。」
麻琴ちゃんはどんな顔をしているかわからなかったが、抱きしめている間私の背中をさすってくれていた。
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